交渉
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結局、昼休みは混乱の渦に巻き込まれながら、なんとか大事にならずに終了した。
つか、四条に申し訳ないことになっちまったな……。
授業中もそれが気になって何度か四条をチラ見したけど、それ程普段と様子は変わりないから余計に不安になる。
とはいえ、俺が四条に謝っても変な感じになるだけだと思うし……ウーン、困った。
などと考えていると。
——キーンコーン。
おっと、今日の授業もこれで終わりか。
さてさて……んじゃ、授業中に考えた計画を実行に移すとするか。
俺はサッサと帰る支度をして、カバンを持って席を立つと。
「く、倉本さん」
アレ? まさか四条に呼び止められるとは思わなかったぞ?
「どうしたの?」
「あ、い、いえ……今日も倉本さんはバイトなんですの?」
「いや、今日は休みだけど……」
どうしたんだろう? モジモジしながら尋ねたかと思ったら、今度はシュン、てしちまったぞ……?
「ひょっとして俺に何か用事でもあった?」
「っ! べ、別に何でもありません!」
「?」
急にキレた四条は、ムスッとしながら席に座ってしまった。
な、何なんだ一体……。
ま、ああいいや、それより。
俺は急ぎ足で、窓際まで行くと。
「よう、滝川さん」
「? 倉本クン?」
帰り支度をしていた滝川アリサに声を掛けた。
「あのさ、ちょっと相談っつーか話がしたいんだけど……」
俺は頭を掻きながら、彼女にそう告げる。
すると。
「……かっちゃん、相談ならアタシが乗ってあげるけど?」
いつの間にか俺の背後にピタリ、と立っていた優奈が、ドスの利いた声でそっとささやいた。
つか怖い! 怖すぎるんだけど!?
「イ、イヤ! 優奈は適任じゃないっつーか、その……」
うう……優奈にまで来られると話がややこしくなるから全力で断らねーと。
「! ……ふふーん、そういうことならその相談、乗ってあげるケド?」
急にニヤニヤしだした滝川が快諾した。
俺が声を掛けといてなんだけど、どういう風の吹き回しだよ……。
「という訳で、星崎さんはパスね」
何故か優奈にウインクしながら、滝川が優奈を押しやる。
や、訳が分からん……。
「ホラホラ、それじゃ行くわよ!」
「わ!?」
俺は滝川に腕を引っ張られ、教室を後にする。
ジト目で睨む優奈と、席からチラチラと見ていた四条を置き去りにして。
◇
「それで? ウチにどんな相談があるワケ? ていうか、星崎さんのことだったりして?」
バイト先のワックで席に座りながら、滝川がニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んで尋ねる。
つか、そういう仕草やめてくんない?
さっきだって、注文した時に久遠さんから『二股サイテー野郎』だの『女の敵』だの『フケツ』だの、あらぬ中傷を受けてんだから……。
ま、まあいい、話を進めるか。
「……俺が言いたいのは」
「フンフン」
「滝川さん……君島のこと、好きだろ」
「っ!? ゴホゴホッ!?」
滝川がジュースを飲んでたところにそう言ってやったら、彼女が思わずむせた。
まあ、狙ってやったけど。
「な、なななななななな!?」
「やー、昨日の放課後だったり今日の昼休みだったり、見てたら丸分かりだったけど?」
フフフ……今度はコッチがニヤニヤする番だ。
「アレ? 違うの?」
「~~~~~~~~~~っ!」
滝川は顔を真っ赤にしながら、唇を噛んで俯いてしまった。
よしよし、やっぱり俺の読みは正しかったな。
んじゃ、次は飴でも与えてみようか。
「……俺、滝川さんが君島と上手くいくように協力してもいいけど?」
「っ!」
そうささやくと、滝川はガバッと顔を上げた。
どうだ、俺の甘言は。乗るしかないだろう?
なにせ、うちの学校でアイツと仲が良いのは俺くらいだろうし、滝川からしたら接点すらなさそうだしな。
「……そ、その……なんでウチに協力しようと思ったワケ?」
滝川が上目遣いにおずおずと尋ねる。
まあ、そんなの理由は一つしかないんだけど。
「や、実は滝川さんに教えて欲しいことがあるんだよ」
「ウチに?」
「ああ」
そう言うと、滝川は怪訝な表情を浮かべた。
「滝川さんさあ……なんで四条をそんなに毛嫌いしてるの?」
「っ!」
俺の問い掛けに、滝川が息を飲む。
前の世界で、彼女はあそこまで四条を追い込んだんだ。
……絶対に、何かある筈なんだ。
その原因を突き止めてなんとかしないと、また、あんな瞳をした四条を見る羽目になっちまう……それだけは、絶対に嫌なんだよ……。
「……言いたく、ない」
「あっそ。じゃあ協力する話はナシだ。君島攻略は一人で頑張れよ」
ま、あの君島だし、俺の協力なしには無理ゲーくさいけど。
「…………………………」
滝川は唇を噛みながら悔しそうに俺を睨みつける。
つか、そこまでして言えないことなのかよ。
そのせいで……アイツが死んじまうことなんて何とも思ってないみたいに……って、ダメだダメだ、冷静になれよ俺。
今は、四条があんな目に遭わないように、全力でフラグへし折らないと。
しばらく沈黙が続く。
すると。
「……誰にも、言わない?」
滝川が観念するような、それでいて縋るような瞳で俺を見ながら、そう呟いた。
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次回は明日の夜更新!
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