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殺伐とした昼休み

ご覧いただき、ありがとうございます!

 ——キーンコーン。


「うっし、メシだメシ!」


 昼休みのチャイムが鳴り、俺はカバンの中から弁当を取り出すと、早速隣の席の四条を見やる。


「……何ですの」


 おおっと、四条がコチラをジト目で睨んでいやがる。

 昨日、俺が強引に昼メシ一緒にしたの、まだ根に持ってやがるのか?


 だが……その程度で俺の心は折れんよ!


「さーて、メシメシ……」

「ちょ、ちょっと! なんでまた勝手に机をくっつけてくるんですの!」

「なんでって……一緒にメシ食うんだから、そうなるだろ?」


 俺はわざと(・・・)キョトンとしながら、四条にそう言い放つ。

 こういう時はとぼけるに限るのだ。


「はあ……もう、倉本さんは……」


 で、やっぱり四条は諦めて俺と一緒にメシ食ってくれるのな。


「同志! 一緒に昼ご飯を食べよう!」


 ……アイツは呼んだ覚えないんだけど。


「君島……お前、新しいクラスで友達いないのか?」

「まさか! 僕の胸に宿る『ソウルジュエリー』を理解できない連中は、友とは呼べないよ!」

「……なんで男性のあなたの胸に、『ソウルジュエリー』が宿るんですの……」


 おおう、四条が絶対零度の視線で君島にツッコミを入れた。

 つか、四条も『甘エン』好き過ぎだろ。


「……ねえねえ、アタシ達も一緒にお昼ご飯食べていいかな……?」


 微笑みを浮かべながら、優奈が弁当を持って来てそう言い放った。

 もちろん、『絶対に断るなよ?』と、無言の圧力で。


「はあ……まあいいけど。つか、滝川……さんもそれでいいの?」

「……別に、ウチは構わないケド?」


 そう言うと、滝川は不機嫌そうにプイ、と顔を背けた。


「さあさあ、では、机をくっつけて楽しい昼食にしよう!」


 や、なんで君島が仕切ってんだよ。


「アハハ、そうだね君島クン!」


 で、何故か滝川が笑顔で同意した。


 つか、俺の時と態度違くない?


 という訳で、俺の右隣に四条、左隣が優奈、俺の向かいに君島、優奈の向かいに滝川が座った。


「さてさて、今日のおかずは……ムム!」


 弁当の蓋を開けると、一杯に敷きつめられた白ごはんの上に、焼き鮭が一切れ乗っているだけだった。


「……佳代の奴、手を抜きやがって……」

「あはは……」


 俺の弁当を覗き込んだ優奈が苦笑する。


「フン、朝の忙しい時間に妹さんが作ったんです。文句を言うのは筋違いですわよ」


 そう言うと、四条が不機嫌そう鼻を鳴らした。

 や、確かにそうだよな……。


「わ、(わり)い四条……」

「……謝るなら、私ではなくて妹さんに、でしょう?」

「ごもっとも……」


 うん、グウの音も出ない。


「……ちょっと四条さん、少し言い過ぎなんじゃないかな」

「……どういう意味ですの?」


 四条の物言いにカチン、ときたのか、優奈が彼女に食って掛かる。

 一方の四条はと言えば、澄ました表情で視線だけ優奈へと向けた。


「だって、お弁当はお昼の最大の楽しみなんだよ? なのに鮭一切れしか入ってないんじゃ、かっちゃんがガッカリするのも無理ないじゃん。それ以上言う必要がどこにあるのさ」

「……それは、あなたがお弁当を作ったことがないから、そう言えるんではなくて?」


 ……頼むから俺を挟んでケンカしないで欲しいんだけど。

 とはいえ、俺の不用意な発言のせいでこうなっちまった訳だからな……。


「とにかく! 今のは全面的に俺が悪かった! だから、二人共もう……」

「はあ……つか、弁当にケチつけるくらい普通でしょ? 何キレてんの?」


 あああああ! もう! 

 余計ややこしくなるだけなんだから、滝川は黙ってろよ!


「ふむ……ここは同志が反省しているのだから、これ以上外野が言ってもしょうがないんじゃないかな?」

「あ、そ、そうカモ……」


 君島、よく言った! お前が初めてマトモなこと言ったよ!

 で、滝川よ……お前のその掌クルリは一体何なんだよ……。


「ま、まあ、昼休みももったいないし、早く昼メシ食っちまおうぜ?」

「……かっちゃんがそう言うなら……」

「……………………フン」


 険悪な雰囲気の中、俺達のランチタイムが始まった……。


 ◇


「クク……おかしなことを言うね四条同志。ジルコンエンジェルたんの“ジルコニアポップ”がまがい物だなんて……」

「だってそうですわよね? 所詮はルビーエンジェルの“ルビーメタル”とトパーズエンジェルの“トパーズ=アール=ビー”の真似じゃないですの」

「何を言う! 二人のエンジェルの良いところを組み合わせ、最高の必殺技へと昇華したあの技こそ至高! 至高なんですよ!」


 ……一体何を言い争ってんだよ、四条と君島は。


 つか、究極はガーネットエンジェルの“ガーネットサンバ”に決まってるだろ。


「「…………………………」」


 ホラ見ろ。

 優奈と滝川が話について行けなくて、ポカンとしちまってるじゃねーか。


「ウ、ウチはえーと、その……ジ、ジルなんとかがいいと思うから!」


 や、無理して会話に加わらんでもいいと思うぞ?


「ふうん……特に興味もないのに、無理して話を合わせる必要ないんじゃないかな?」


 そう呟きながら、優奈は四条をジト目で睨む。

 だけど優奈よ、その認識は間違ってると言わざるを得ないぞ。


「……優奈、四条はガチの『甘エン』マエストロだ」

「ええー……」


 俺の指摘に、優奈は四条を残念なものでも見るかのような視線を送る。

 それより優奈。お前のさっきの言葉、モロに滝川に刺さってんだけど。


 ま、だけど。


「そうか……滝川さんも『甘エン』に興味があるんだね。なら、僕が特別に編集した『甘エン』ダイジェスト動画をあげるよ」

「あ、う、うん……」


 ププ、滝川の奴、微妙な顔してやがる。

 ただでさえ君島は信者を増やしたがってるんだ。その発言は失敗だったな。


 とはいえ、これで一つハッキリしたことがある。


 これをエサに、ちょっと交渉してみようかな。


 俺は滝川の顔を眺めながら、口の端を吊り上げた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、なるほど?なるほどなるほど?? 滝川さんってそういう……(笑) 楽しそうな学校生活、羨ましいですなぁwww
[一言] 滝川からのいじめは君島とくっつけておけば回避できそうな気配。
[一言] 同志に気が向いて今回はそっちに…な考えになっちゃって登場する度にヒヤヒヤする…。 幼馴染とくっつかない作品は苦手だけど、この作品の娘だとあんまし良い印象が抱いてないから残当と思っちゃう。
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