同志認定!?
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「入りまーす!」
制服に着替えた俺は、掛け声とともにカウンターの中へと入る。
すると。
「……今日はこき使ってやるから、覚悟しなさい」
ご機嫌ナナメな久遠さんが、俺を睨みながらそう宣言した。
お、俺、何かしたっけ……!?
「はあ……それじゃ、早速だけどコレを三番のテーブルに持って行って」
「うっす」
溜息交じりに、久遠さんからチーズバーガーとドリンク、ポテトを乗せたトレイを手渡される。
さてさて……三番、三番は……。
俺は店内をキョロキョロしながら三番の札を掲げているテーブルを探すと……お、あそこか……って。
「お待たせしましたー!」
「あ……倉本さん」
結局、三番のテーブルは四条だった。
つか……四条はやっぱりその席に座るんだな……。
「ご注文の品はこちらでよろしかったでしょうか?」
俺は自分の感情を四条に気づかれないように、営業スマイルでマニュアル通りに接した。
「ふふ……ええ、これで間違いないわ」
「ごゆっくりどうぞー!」
俺は四条の席から慌てて離れようとすると。
「倉本さん」
「は、はい!?」
突然四条に声を掛けられ、俺の声が上ずった。
「……そ、その制服……似合って、ますわよ……(ボソッ)」
「っ!」
四条はそんなことを消え入りそうな声でそう言うと、プイ、と真っ赤な顔を背けた。
ああ、チクショウ。そんなの反則だろ……。
火照った顔をブンブン、と振りながら、俺はカウンターへと戻ると、ムスッとする久遠さんの隣で妙にニヤニヤしている店長が待ち構えていた。
「いやー、倉本くんも隅に置けないねえ」
「店長……」
多分、俺の今の表情は、とても残念なことになってると思う。
つか……ウチの店長がこういうゴシップネタ大好きだっつーこと、忘れてたわ。
「店長! 私はこういう公私混同はいけないと思います!」
腕をブンブン振り回しながら、久遠さんが厳重抗議する。
俺はそんな久遠さんに、声を大にして言いたい。
「や、久遠さん、彼氏作ればいいじゃないっすか……(ポツリ)」
「「っ!?」」
ん? 二人共、急にどうしたんだ?
久遠さんは全身を震わせているし、店長は口を開けて恐怖に引きつった顔をしてるし。
「ウフフフフ……数馬くん、いい度胸してるねえ?」
「ヒイイ」
この後、俺はタイムリープ前でも経験したことのない恐怖を味わうことになった。
……久遠佐那さんの手によって。
◇
「ウーン……!」
お客さんの数も落ち着き、俺は軽く伸びをした。
「何サボってるの! そんな暇があったら、とっととフロア掃除しろ!」
「うお!?」
久遠さんに思い切りケツを蹴られ、俺は思わずよろめく。
つか、まだ怒ってるのか……。
なので、俺はこれ以上久遠さんを刺激しないよう、無言で消毒スプレーとウエスを持ってフロアへと出……る前に、コッソリとアイスティーを紙コップに注ぎ、蓋をする。
で、今度こそフロアへと出ると。
「よ、お疲れ」
俺はテーブルで参考書とノートを広げて勉強している四条の目の前に、コトン、とアイスティーの入った紙コップを置いた。
「これ……」
「ん? 頑張ってる四条に差し入れ」
そう言って、俺は手をヒラヒラさせながらその場を離れようとすると。
「ふふ……倉本さん、ありがとうございます」
「どういたしまして」
四条の感謝の言葉を聞いて気分が良くなった俺は、鼻歌交じりに空いているテーブルを拭く。
その時。
「いらっしゃいませー! ……って、君島?」
「やあ、同志!」
店に入ってきたのは、あの君島だった。
つか、昼休みにあんなことがあったのに、よく顔を出せるな。
「……今、俺はバイト中なんだ。邪魔するな」
「ああ、分かっているよ。だから」
すると、君島はクルリ、と四条へと向き直った。
「……何ですの?」
「ククク! 四条さん、君もこの僕の同志たる資格ありだよ! さあ、昼休みの続きをしようじゃないか!」
「「はあ!?」」
君島の言葉に、俺と四条は揃って声を上げた。
「テメッ! 何考えてやがる!」
「何って心外だなあ……僕は彼女と『甘エン』について語りたいだけだよ。あ、四条さんは何か欲しいものはあるかい? 昼休みのお詫びも兼ねて、僕が何でも奢ってあげるよ」
「帰れ!」
全く聞く耳を持たない君島は、やたらと四条に絡む。
その姿は、構って欲しくて尻尾を振り回すマルチーズみたいだった。
「……君島さん、と仰いましたでしょうか?」
「そう、“君島海斗”だよ。四条同志」
「では君島さん、あいにく私はあなたに施しを受ける筋合いはありませんの。そんなに『甘エン』の話がしたいのであれば、こちらの倉本さんとすればよろしいじゃないですの」
キッ、と睨みつけながらそう言い放つ四条。
でも、俺だってバイト中だし君島と『甘エン』の話をする暇ねーんだけど。
「ふむ……確かにそれは魅力的な提案ではあるね……」
「魅力のカケラもねーよ!」
駄目だ、頭が痛くなってきた……。
すると。
「いらっしゃ……って、優奈!」
「ヤッホー、かっちゃん!」
今度は優奈の奴が店へとやって来た。
しかも。
「…………………………」
無言でこちらを睨みつける、滝川アリサと一緒に。
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次回は明日の夜更新!
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