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 1、「初めての転職」

 ――気が付くと、訓練場の前にいた。

 

 もう真夜中といっていい時間帯なのに、まだ中からは訓練を続ける汗臭そうな声が聞こえる。

 ここが、始まりだったんだよな。

 オレもリュウも、田舎から出て来てここで訓練を受けて戦士になった。リュウのやつは、必要なステータスが上がるととっとと聖騎士に転職しやがったが。くそう。

 ドワーフの戦士だったゴザールは、今は侍という魔法も使える戦士になってるし。みんな戦士をなんだと思ってるんだか。ただの腰掛かよっ。高レベルの戦士はそこらの上級職なんかよりずっとつえぇんだぞ! 実際オレがパーティの最大戦力だったじゃねーかっ!

 いや、オレが戦士を天職と思ってるだけで他人に押し付けるのはよくねぇな。

 ……実際、あの時はついかっとなって怒鳴っちまったが、リュウの言うことは正しいと思う。夜風で少し冷えた頭で考えると、確かにいずれ、オレがみんなについていけなくなる日は必ず来るだろう。上級職なら一般的に成長限界は高めだからな。50のオレじゃ、レベル差が2倍、3倍になったら流石について行けるわけがねぇ。オレ以外はみんなとっくに上級職に転職済みだしな……。全員上級職、だよな?

 ええっと。うちのパーティだと、他のメンバーはどうだったっけか。

 ハーフリングのホムホムフムネルは、格闘家から忍者に転職した。

 フェアリーのあーちぇは僧侶から賢者に転職した。

 エルフのミュルルラッテはホムホムが忍者になったタイミングで、盗賊から狩人になったんだったか。狩人は一般に中級職だが、飛び道具の扱いに長ける上級職ってのはねぇから実質上級職みたいなもんだろう。オレと違って限界を感じたら素直に転職するだろうしな。

 ……一回も転職してねぇの、オレだけじゃねーかよ。

 極めた戦士は鬼つよなんだが。実際オレ超強いんだが。

 冷静になって考えてみると、リュウの言う通りなんだよな。

 戦士のオレには、もうこれ以上先がない。

 ……はあ、事実はつれぇわ。

 転職、考えてみる、か?

 といってもなぁ。


 オレはステータスを表示させた。


 戦士 Lv50 種族:人間 年齢:19


 HP:1685

 MP:   0


 筋力 :28

 知力 :18

 信仰心:10

 体力 :24

 敏捷性:12

 運  : 8


 短剣: 30

 剣 : 30

 斧 : 30

 槍 :100

 弓 : 20

 棍 :255

 武器: 30

 格闘:255

 盾 : 10

 命中:255

 回避:255


 種族人間の基本値は全部8で、種族限界値は18だ。種族限界値っていうのは、生物的な意味で、その種族では構造的にそれ以上は無理って数値のことだ。

 ……なぜかオレの筋力と体力は人間の範疇超えてるけどな。ふつーは18までだ。もしかしたら先祖に巨人族とかの血でも混ざってんのかもしれねぇ。我ながら惚れ惚れするくらいの筋肉だしな!

 まあ筋力と体力はおいとくとして、だ。

 転職をするにはステータスが必要な値に達していないといけない。

 そして。

 いわゆる上級職、というやつは、軒並み運の数値にそこそこ高い値を要求されるのだ。

 そして、御覧の通り、オレは運の値が種族基本値のまま。つまり、上級職に転職しようと思ったところでオレには圧倒的に運のステータスが足りねーんだわ。

 つーか、筋力とか体力ならともかく運とかどーやって鍛えんのよ……?

 リュウと同じ聖騎士になるには運だけでなく信仰心が足りねぇ。ゴザールと同じ侍になるにゃあ運と敏捷が足りねぇ。ホムホムと同じ忍者だと信仰も敏捷も運も足りねぇ。つかホムホムのやつ全スタータス17必要な忍者とかよく転職できたもんだよな……。あいつ運がアホ程高いからステータスの成長にも補正かかってたんかな。

 まあ、他のメンバ―のことは置いとくとして。

 オレ、どう考えてもステータスが戦士にしか向いてねぇんだよな……。

 そして、ステータスが上下するのはレベルアップの時なので、認めたくはないが成長限界のオレはどうあがいても上級職にはなれねぇ、ってことだ。この先年老いて、年齢でステータスが下がることはあっても、上がることだけはない。

 ステータスを変化させるアイテムなんてものもあるにはあるが、ふざけた値段しやがるから、はじめっから手段にかぞえられねぇし。

 かといって、上級職をあきらめて中級職で妥協しようとしても、格闘家はやっぱり運の数値が足りねぇし、狩人も敏捷が足りねぇ。そもそも殴るのならともかく、弓みたいなちまちましたものは向いてねぇしな。弓も筋力がそのまま威力に比例すっとこあるから向いてなくはないんだが。やっぱ近くでぶんなぐってこそだろ。

 ……意外に知力が高い気がするが。ってか何気に種族限界値ある気がするが。

 オレ馬鹿だからなんかの間違いだろ。

 そうなると。

「むむむ……。やっぱオレ、戦士としてしか生きられねぇよなぁ」

 どう考えても、それが結論だった。

 前衛は戦士以外、軒並み全滅。

「……前衛は、だけどな」

 同じ前衛、特に系統が同じであれば、転職してもレベルもステータスもそれほど下がらない。

 一度到達したレベルまでは上がりやすくなるので、元のレベルに追いつくのはそれほど大変じゃないし、転職前のスキルも残るので同系統の武器が使える職業なら戦力もそれほど下がらない。

 しかし、前衛から後衛、後衛から前衛だと基本職からやり直しになるので、レベルは1から上げ直しになるし、ステータスも大幅に下がってしまう。スキルは残るが後衛だと前衛の武器がほとんど使えないのでまったく役立たずだ。

 つまり「これまでのオレの人生が全て無かった」ことになる。ほとんど死んで生まれ変わったも同然だ。それはあまりにつれぇわな。

 HPだけは転職しても下がらないから、打たれ強い後衛になるというメリットはあるが。まあそれだけだ。そもそも後衛がボコスカ殴られてるようじゃパーティはおしまいだから、後衛の打たれ強さにそこまで大した意味はねぇよな。

「オレ、3年鍛えて戦士50レベルになったんだぜ。後衛でこれからまた3年鍛えるのか……? そのころには、あいつらはもっと強くなっているだろうし。追いつけるわけがねぇよな」

 ミュルルラッテのような長命種のエルフであれば、全職業を成長限界まで上げるなんて力技も出来るんだろうけどな。それでも鍛える時間が短縮されるわけじゃあねぇ。

 まあぐだぐだ転職しなくてもいい理由をいろいろ考えては見たわけだが。

 ふむ。

「……なぜか知力はたけぇから、魔法使いならいけなくもねぇか?」

 僧侶や賢者になるには信仰心が足りねぇし、そもそもオレが神に祈りを!なんてやるとこ想像しただけで寒気がするしな。ケツがかゆくならぁ。

 それに、ウチのパーティにはヒーラーは聖騎士のリュウと賢者のあーちぇが居る。回復魔法は足りてんだよ。

 そうなると。

「……専業で魔法ぶっ放せるヤツがいれば、役に立てる、か?」

 あーちぇも攻撃魔法は使えるが、一度に使える魔法はひとつなのでヒーラーと魔法アタッカーは両立が難しい。侍のゴザールも攻撃魔法は撃てるが専門職に比べると威力は低いし、なにより刀振り回しながら魔法唱えるのはきついだろう。開幕の牽制にド派手にぶちかますくらいしかないんだよな。なんつってもレベルを上げて物理で殴る方がやっぱ最強だしな!

「……なんだよ、なんでオレ追い出されたのに元のパーティのこととか考えてんだ」

 馬鹿だよなぁ、オレ。

 万が一、億が一、オレに魔法使いの適性があれば。

 また元のパーティに戻れるかも、だなんて。

「……いやまてよ? 確か魔法使いって棍スキル使えたっけ」

 短杖は杖スキルだが、長杖の取り回しなどは根スキルの範疇だ。

 棍スキルが使えるなら、オレの愛棒であるブラジオン使えるんじゃね? あれ棍棒だし。

「そっか、ってことはだ、オレ魔法使いで戦士やればいいんだな(混乱)! なんだこれで全部解決じゃん!」

 酒飲んで夜中に街中走りまわって、その時のオレはたぶん、酔いが回ってどっかおかしくなってたんだろう。

 そのまま勢いで訓練場のドアを叩いて。


「りゅううううう!! オレは、戦士を、やめるぞおおおお! けど、転職してもオレは戦士だからなあああああ!」


 ――オレは、魔法使いに転職した。

★一言メモ★


アル「あー、ええっと、なんか線とか消えかけててすごくぼろっちぃけど、まほーつかいって、この魔法陣だよな。あ、やべ、戻しそう」

 おろおろおろ…。


★設定殴り書き★


【クラスについて】

 基本クラスは戦士、盗賊、魔法使い、僧侶があり、この組み合わせ、あるいは特化により中級クラス、上級クラスに派生する。

 

 ○中級クラスの例

  中級クラスの多くは、基本クラスの特化型となる。

  格闘に特化した戦士 → 格闘家

  弓に特化した盗賊 → 狩人

  道具の扱いに特化した魔法使い → 錬金術師 など。


 ○上級クラスの例

   上級クラスの多くは基本クラスの複合型となる。

   戦士 + 魔法使い = 侍(魔法戦士)

   戦士 + 僧侶 = 聖騎士

   戦士 + 盗賊 = 忍者

   僧侶 + 魔法使い = 賢者など。

 

基本クラスと中級クラス、あるいは中級クラス同士の複合は、現在のところ確認されていない。



【転職について】:

 探索者は転職の儀式を行うことで、クラスにつくことが出来る。ただし転職を行うには該当のクラスに必要なステータスが必要で、基準値に満たない場合は転職は出来ない。転職を行うと、転職に必要なステータス以外は種族基本値まで下がり、肉体年齢が上がってしまう。HPは変化しないが、MPは転職後のクラスにより増減する場合がある。また一度修得した魔法は転職しても忘れることは無い。転職後のクラスで使用できないスキルは失われてしまう。

 同じ基本クラスから派生したクラスに転職する場合、多くの場合は過去の経験の大部分が活かせるため、レベルはそれほど下がらない。システム的には上級クラスは必要経験値が多いため、転職後のクラスで再計算が行われて結果的にレベルが下がってしまうという仕組み。ちなみに上級クラスから同系統の基本クラスに転職した場合はこの逆が行われレベルが上がる(成長限界を除く)。

 系統が異なるクラスに転職する場合は、多くの場合経験が活かせないためレベル1からやり直しとなってしまう。例外として、上級職(複合クラス)→基本職の場合は同系統を含んでいれば経験の半分ほどは活かせるため、レベル1にはならない。

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