幼馴染達を命を懸けて救った結果
俺の名は葉山明人
突然だが、俺には三人の幼馴染がいる
一人は才色兼備、文武両道と謳われる学校のアイドル藍坂春乃
もう一人は名家の生まれで現生徒会のトップ穂希由紀
そして俺の両親が死んだときからずっと俺を世話してくれた瑞野舞花
改めて俺にはもったいないほどの幼馴染達だ
「明人、早く来い」
「何たらたらしてるのよ、貴方は私達の奴隷なのよ」
「そうですよ~、薄汚れたブタさんから唯一の『足』っていう取柄を取ったらなにも残りませんよ〜」
最近みんながこういう風に俺を頼ってくれるようになってきた、何の価値もない俺だけどみんなの役に立てるようになってようやく自分に価値があると思えるようになってきた
「おい、なにボーっとしている」
「奴隷は奴隷らしく主人である私達のことだけ考えていればいいの」
「私達以外の何かを考えた罰で今日はご飯抜きですよ〜」
今日のご飯が抜きになってしまった、まぁこんな俺に飯をくれるだけ本当にありがたいのだが
♢♦♢♦♢♦♢♦
それは俺達四人がいつも通り通学路を歩いてる時だった
「はぁー、今日も疲れたわ」
「そうですね~、主にブタさんのお世話が大変でしたね~」
「まったくだ」
また俺は彼女達に迷惑をかけてしまっていたようだ、反省しなければ
「ふむ、そうだ今日は新しくできたクレープ屋に行かないか」
「ふーん、おもしろそうじゃない」
「由紀も少し興味あります~」
「よし、決まりだな、ここからすぐ傍だし腹ごなしがてら少し走るか」
どうやら今日はクレープ屋に行くようだ、しかしどうしてこうも年頃の女達はこうも甘い物を欲しがるんだか、あと舞花は昨日少し体重が増えていたと言っていなかったか?まぁどうでもいいが
「じゃあみんなでそこまで競争しましょ、一番遅く着いた奴が奢りね」
「は~い」
「了解」
やれやれまたアルバイト代が消えていくぞ、俺が本気だしたら一番早いのだがこの前一番についてしまったときは「男ってのはレディファーストするもんでしょ!」と怒られてしまった、自分で競争しようといったのに相手に手加減しろというのはどうかと思うが…、まぁ俺が考えることじゃないだろうが
「どうした、早く来い豚」
「そうですよ~、トロトロしないでさっさと来なさい~」
「このままだとあなたが奢りだからね」
どうやら彼女たちがお呼びのようだ、急いでいかないと、と思った瞬間、彼女たちに向かって一台の車が暴走しながら向かっているのが見えた、車のガラスから運転手は眠っているのが分かった
車体が彼女達のすぐそばまで来ている、彼女達はまだそのことに気づいていないようで楽しく談笑している、もはや車が彼女達を撥ねるのは時間の問題かと思われた瞬間、俺は咄嗟に彼女達の背中を突き飛ばしていた
それからのことは覚えていない、体が突き飛ばされ、自分の血が道に飛び散っていたのは辛うじて覚えているが、跳ね飛ばされた俺に向かってきた彼女達の
涙でぼろぼろにして心配そうにしている顔はきっと幻だったのだろう
♢♦♢♦♢♦♢♦
「…知らない天井だ」
目が覚めると見知らぬ天井が見えた
「ッ!明人目が覚めたのね!」
声がした方向を向くと舞花がいた
「…どうした、なぜそんなに泣きそうな顔をしている?」
そう聞くと舞花は今にも泣き崩れそうな声で答えた
「貴方が無事だったからに決まってるじゃないの!待ってて、すぐに由紀と春乃もつれてくるから!」
舞花は何度も躓きそうになりながらも二人を呼びに行った、しかし今はそんなことに興味はない、今舞花は何と言った?「貴方が無事だったから」だと?思考の海の中に潜っていると、あの二人が俺に話しかけてきた
「明人!大丈夫か!痛いところはないか!?」
「明人!あぁ良かった、本当に良かった…」
二人も俺のことを気遣いながら話しかけてくる、どうやら演技ではなさそうだ
「おい、二人ともなぜそんなに心配そうにしている」
「貴方が車に轢かれたからに決まってるじゃない!」
「お前がもしかしたら死んでしまうのではないかと気が気でなかったのだぞ!」
「そうですよ!なぜそんなことを聞くんです!?」
いや、待ておかしいぞ
「だからなぜ俺が轢かれた程度のことで心配そうにする?お前たちは俺が価値のない存在だと、生きているのが耐えられないほど汚らわしい存在だと言っていたじゃないか?」
『ッ!』
俺が純粋にそんな質問をすると、三人は唇をかみながら今にも泣きそうな顔で黙り込んでしまった
「なぜそんな泣きそうな顔をする?情緒不安定なのか?」
「その、本当にごめんなさい、謝って済む問題じゃないと思うけど、本当にごめんなさい」
「だからなぜ謝る?存在がゴミ以下の俺が死んでもお前達は何も思わんだろう?」
「ッ!そ、そういえば貴方は車に轢かれたとき私達を庇ってくれたじゃない、それはどうして?」
なぜそんな簡単な質問をするのかと思いつつもこう返した
「簡単だ、俺の様な無価値の人間よりもお前達の様な価値ある人間の方が社会にとって重要だろう?いつもお前達が言ってるじゃないか、俺は『無価値』だと、なぜそんな簡単な質問をするんだ」
そう答えると彼女達ははっきりと顔を真っ青にしはじめた
「話はこれで終わりか?差し支えなければ今日が何日か教えてほしいのだが」
「28日だけど…」
「そうかもう4日も過ぎてるのか、バイトに行って店長に謝罪しなければ」
「お、おまえその体でバイトに行くつもりなのか!?無茶だ!」
「確かにそうだが俺も早く独立しなければならないからな、金を稼がないと」
「ど、独立って何ですか!?教えなさい!」
「ん?そうかまだ教えていなかったな。これ以上舞花に迷惑をかけないために一年後には舞花の家を出てどこかに引っ越すつもりなんだ」
「な!私は迷惑なんて思ったことは・・・」
「ふむ、まだ12時か何とかバイトには間に合いそうだな」
「まっ、まって、お願いだから行かないで!」
その声を振り切りながら、病室の扉を閉じバイトへ向かう
病室から聞こえる嗚咽を幻聴だと信じて
息抜きで描きました、好評だったら続編書きます、星を投げてくれるとやる気がでますぞ!
ちなみに事故補填金とかはないっす