1章4 鷹狩り
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葵たち8人は、城壁の北東の隅近くで薄い青色の鷹と対峙している。
青狼を仕留めて北に進み、遠くに北東の隅が見えたところで、鷹が葵を狙って襲ってきたが、爪による攻撃は間一髪避けた。
「わたくしたちのかわいい葵に危害を加えようとする生命体は…」
「私たちの魔力を…全てかけても…」
「わたしたちの…命に代えても…滅します…」
明と茗露と命は重い言葉を発する。
その思いが、明の矢による攻撃や青属性魔法、茗露の緑属性魔法に乗ったのか、鷹は攻撃を受けても"全く効かぬな"とでも言いそうなくらい泰然としているが、空を飛ぶ鷹の高度が少しずつ下がり、動きも少しずつ鈍っているようだ。
「煌華菱嵐」の4人も葵の護衛に回っているにもかかわらず、執拗に葵を狙う鷹が、葵に向かって何十回目かの攻撃を仕掛けようと突進してきたその時、全身が赤くなり、前髪の一部が角のように逆立った命が立ちはだかる。
命は鷹よりも素早い動きで、次々と鷹に薙刀で傷をつけていく。
その速さは普段の2倍や3倍どころではない。
前回の課題日に紫が智の「ラピート・アルファ」でスピードアップしてシティラビットを圧倒した時と同じように、命が一方的に鷹を攻め、鷹は薄い青色の羽を散らすのみで攻撃の暇がない。
命が止めとばかりに、鷹の首を落としたところで、ボロボロになった鷹の体は核を残して消滅した。
魔物を滅して緊張の糸が切れたのか、明と茗露と命はその場にぺたんと座り込んでしまった。
「ミコちゃん、大丈夫?」
葵が一番近くにいた命を気遣う。
「魔力は…ほどんどないですけど…体は…少し休めば動けます…それより…葵さんを守れてよかった…」
明と茗露も同じような状態だった。
「智ちゃん…コーメイちゃんとミコちゃんとメロちゃんが魔力切れみたいなの…。
申し訳ないけど、今日はこれで切り上げて、少し休んだら戻りたいのだけど、いいかな?」
「いいですとも!」
こうして、3人が動けるようになったところで一行は来た道を引き返…そうとしたが、さらなる魔物の襲撃を受けた。
今度の魔物は黒鷹。
葵を狙った初撃は命が身を挺して防いだが、代わりに命が傷ついた。
葵が覆いかぶさった命を退けて起き上がってきたところで、黒鷹は今度こそとばかりに、初撃と同じ動作で葵を目掛けて飛んでくる。
だが、余力のある煌華菱嵐の4人が葵を守る。
葵はその間に迎撃態勢を整えた。
智に青属性の「ラピート・アルファ」をかけてもらい、さらに自分で緑属性魔法「ウィング」と赤属性魔法「レッドウィング」をかける。
「識彩」の"白い"力を発動させた葵の姿は白ずくめで、背中には白い翼。
葵以外の7人は揃ってこう呟いた。
「天使様が…再臨された…」
天使の葵を見ても意に介さず、自分が最強と信じる攻撃を繰り返そうとした愚かな黒鷹は、葵の「識彩」による一刀で核ごと両断された。
天使の葵が命を癒した後、鷹2体の核を回収した一行は、その後は魔物に遭遇せずに町の中へ戻った。
学校に戻り、報告とともに青狼と鷹の核を預けると、一行は食堂へ。
葵の両隣は明と茗露、葵の真向かいは悠が座った。
「うへへ…ぼくも葵に食べられたい…」
「悠ちゃんはそっちの趣味やったんか」
「紫と雅が葵様の前に座ったらどうなるか、見てみたいですね」
「智ちゃんがそう言うなら、今度はみやびが挑戦してみるよ」
一方、核を預かった学校の教員たち。
「ブラックホークやブルースカイホーク、ブルーウルフはこんなところに生息しているはずがないのに…」
「あの子たちが前回狩ったシティラビットも、本来の生息地はもっと南のはずよ…」
「"動物園"の"管理事務所"に問い合わせてみる…」
昼食後も、3人が魔力切れで葵や智もかなり魔力を消費している状況で外に行くのは危険と判断した十色盟・煌華菱嵐連合は学校に残り、地図を広げて"外の町"のうちどこを目指していくかを話し合った。
いろいろあって、1話の投稿に1週間以上かかるスローペースですが、次回投稿を気長にお待ちください。