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地底の国

 真っ暗な坂道をシューッとすべり台のように滑って行き、トンネルをどこまでも通り抜けていくと、リュウくんとアリスちゃんはなんだか広くて明るいところに出てきました。


「……ここが、地底の国?」


 そこは不思議なことに、地面の下にあるはずなのに頭の上には青空が広がっており、目の前にはどこまでも緑色の草原が広がっていました。


「どっちに行けば、ドラゴンの棲み家に行けるの?」

「わたしも、トカゲたちから逃げるのに必死で、道は全然覚えてないの」

「うーん……」


 二人で首をかしげましたが、ここにいても始まりません。

 リュウくんとアリスちゃんはとりあえず、てきとうに前へ進んでみることにしました。

 しばらく歩いていると、目の前に十字路が現れました。

 でも、どっちに行けばドラゴンの棲み家に行けるのかは分かりません。

 十字路のわきの石に麦わら帽子をかぶった、なぜかリュウくんより体が大きい、オケラのおじさんが座っています。

 休憩をしているみたいなので、道を聞いてみることにしました。


「こんにちはー、道を聞きたいんですけど」

「おや、これは珍しい。人間の子供じゃないか」

「うわ、オケラがしゃべった」


 しゃべるオケラを見て、びっくりするリュウくん。

 どうやら、この世界では動物がしゃべるのがあたりまえで、人間の方が珍しいみたいです。


「いいよ。どちらに行きたいんだい?」

「ドラゴンの棲み家ってどこにあるか分かりますか?」

「ドラゴンの棲み家だって? そんなとこに何の用事があるんだい?」


 オケラのおじさんはびっくりして、聞き返します。


「不老不死の薬になるという、ドラゴンの血を手に入れたいんです」


 リュウくんの言葉を聞いて、オケラのおじさんはなおびっくり。


「ダメダメダメ! そんなことを言ってることを知られたら、君たち食べられちゃうよ。やめた方がいい」

「病気のお母さんを助けたいんです。教えて下さい、お願いします!」


 アリスちゃんが必死にそう言うと、オケラのおじさんはしばらく悩んでいましたが、二人があまりに一生懸命なので、道を教えてあげることにしました。


「あそこを見てごらん、山が見えるだろ」


 オケラのおじさんが指をさす方向に、かなり遠いところですが、うっすらと煙を上げる山が見えます。


「あれがドラゴンの棲み家がある山だ。そしてこの道」


 オケラのおじさんが十字路の内の一本の道を指さして。


「この道をずっとまっすぐ行けば、あの山にたどり着く。とにかく真っすぐ行きなさい」

「「ありがとうございます!」」

「あのドラゴンはとにかく凶暴だから、無茶はしないようにね」


 リュウくんとアリスちゃんはオケラのおじさんに何度も頭を下げて、おじさんの言うとおりに、道をまっすぐに歩いていきました。


 しばらく歩いていると村があり、そこにはネズミのおばあちゃんがいました。

 でも、なんだか困っている様子です。


「おばあちゃん、どうかしたんですか?」

「実はここにあるゴミを捨てたくて、ごみ捨て用の穴が掘りたいんじゃけど、わたしはこのとおりおばあちゃんだから、穴を掘る力がなくて困ってるんじゃ」


 おばあちゃんは腰が曲がっていて、穴を掘るのは難しそうです。

 そして、家の横には山積みのごみ袋があり、これを捨てるだけの穴を掘るのも大変そうです。

 ですが、この仕事にうってつけの男の子がいます。


「じゃあ、ぼくが掘ってあげるよ。まかせといて」


 リュウくんは得意の穴掘りが役に立つので大張り切り。


「穴を掘るときゃごーかいに、ほーりほりったら、ほーりほり♪」


 リュウくんはあっという間に、ものすごく大きな四角い穴を掘り上げました。


「ちょっと張り切りすぎちゃったかな」

「わー、すごいねー、これだけ大きな穴なら一生分のごみを捨てられそうじゃよ。どうもありがとう」


 ネズミのおばあちゃんは大喜び。


「これ、ウチの畑で取れたものだけど、良かったらどうぞ」


 お礼におばあちゃんの畑で取れた、こしょうやウコンなどのスパイスをもらいました。


「ところで、君たちはどこに行こうとしているのかのう?」

「ドラゴンの棲み家です。そこを通らないとおうちに帰ることができないんです」

「そりゃあ、大変じゃのう。あのドラゴンも昔は優しい奴だったんじゃが、今では(ドラゴン)が変わったように気が荒くなってしまったからのう。気を付けて行くんじゃよ」

「ありがとうございます」


 リュウくんとアリスちゃんは、ネズミのおばあちゃんにお礼を言って、また先へと進んで行きました。


「人助けするのって、気持ちがいいな」

「お礼までもらっちゃったね」


 リュウくんとアリスちゃんがまたしばらく歩いて行くと、次の村には素敵なドレスを着た、白いフェレットの綺麗なおねえさんがいました。

 でも、おねえさんもまた困っている様子です。


「どうしたの? なんか手伝いましょうか?」


 フェレットのおねえさんは気の毒そうな顔をしながら言いました。


「大事な指輪を落としてしまって、地面に埋まってしまったの。ずっと探しているのだけど、なかなか見つからなくて……。でも、通りすがりのあなたたちにお手伝いしてもらうのもねえ」


 落ちているだけならまだしも、地面に埋まってしまった小さな指輪を探すのはとても難しいように思われます。

 ですが、この仕事にうってつけの男の子がいました。


「じゃあ、ぼくが探してあげるよ。まかせといて」


 リュウくんは宝探しが大得意。


「指輪を掘るときゃしんちょうにっと♪」


 あっという間におねえさんの指輪を見つけました。


「わー、キミすごいね! どうもありがとう!」


 フェレットのおねえさんは、あきらめかけていたものが見つかったので、ものすごく嬉しそうです。


「良かったら、お礼にこれを持って行って。運びやすいように荷台も一緒にどうぞ」


 フェレットのおねえさんはそう言って、おいしそうな佐賀牛のお肉のかたまりを荷車ごと持ってきました。


「いやいやいやいや、これはもらえないよ」

「受け取れないわ」

「いえいえ、これでもお礼したりないくらいです。どうぞどうぞ受け取ってください」


 フェレットのお姉さんが一生懸命お礼を言ってくるので、二人は佐賀牛を受け取ることにしました。


「ところで、二人はどこへ行こうとしているの?」


 アリスちゃんがドラゴンの棲み家へ行くことをおねえさんに伝えると。


「あの辺りは火山が近いから、用心をした方がいいわよ。気を付けてね」


 と、教えてくれました。


「なんか、すごいものもらっちゃったね」

「ほんとだね」


 それからリュウくんとアリスちゃんは野を越え谷を越え、とにかく道をずーっとまっすぐ進んでいると、ドラゴンの棲み家があるという岩山のふもとの森までやって来ました。

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