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コミュ障エルルの召喚魔法  作者: Abel
第三章 家族の絆と向こう側のボク
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家族との和解と再会




「よろしいのですか、テューホーン……」


 悲しさを含んだティオの問いかけに、お父さんは弱弱しく頷いた。


「お前たちには迷惑をかけてしまう。だがすまない。私は……娘の幸せを優先したい。長として失格だが、それでも」


 お父さんがボクを見上げる。迷いのない表情だ。グランドフォートで出会った時とはまた少し違う、スッキリした表情だ。

 妄信も邁進もやめた表情と言えばいいのだろうか。


「それでいいと思うぜ。オレは」


 お父さんの選択を、テレサが強く後押ししてくれる。もともとティオと違ってテレサは『ボク』に忠誠を誓ってくれた。

 だからこそ彼女は、ボクがボクとして生きることを選んだことを喜んでくれている。

 ティオは、正直無理もないって思っている。血縁関係であるお父さんやボク個人を守ろうとしたテレサと違って、彼女はあくまでもハデスに従った。

 ハデスでありエルルであるボクに従い冥界の繁栄を求めていた。だからボクが一時でも去ることが嫌なのだろう。


「イヌンダーティオー・ルクスリア」


「……はい」


「いつか、ボクはこの地に帰ってくる。だからそれまで、ルクスリアの当主として冥界を守っていてほしい」


「ハデス様……」


 頷きたくはないのだろう。納得したくはないのだろう。


「イヌンダーティオー。エルルの幸せはケーラの望みでもある。わかってほしい」


「ケーラ……っふふ。今のスペルビアの当主が聞いたら怒るでしょうね」


 お父さんの説得に、ティオの表情が和らぐ。彼女にとってお母さんは、かけがえのない親友だったらしい。

 お父さんとティオ、テレサが立ち並ぶ。ユーゴくんと手を繋いでいるボク、クルルを背負ったハムちゃんと見合う形で。


「エルル。こっちの国で暮らすつもりはないのか?」


 お父さんの申し出は、素直に嬉しい。

 あっちの世界にはまだボクを怖がる人もいるだろうし、いつかハデスとして戻ってくるのならこっちにいたほうがいいのだろう。

 それに、お父さんと親子として暮らすのも理想の一つ、ではある。

 でも、ボクが求めている幸せはその先だ。


「……うん。エルルの暮らしは向こうにあるから」


 エルルとして生きてきた記憶。辛い思い出も沢山ある。

 でも、それら全部がエルルとしてのボクを支えてくれる。こうしてボクを理解して受け止めてくれる大好きな人と出会えた。

 やっと。

 やっと、ボクを愛してくれる人と出会えたから。

 ユーゴくんを見上げる。優しく微笑んでくれる。それだけで心が弾む。嬉しい。嬉しい、大好きっ。

 ハムちゃんを見上げる。魔力の繋がりは失われても、彼はボクを支えてくれようとしている

 眠っているクルルは、いったいなんの夢を見ているのだろう。口元が笑っているから、きっと幸せな夢を見ているんだろう。


「エルル様」


「ハムちゃん。ごめんなさい」


 ボクを取り戻そうと空の上で駆けつけてくれた彼を、ボクは拒絶した。ティオの魔法で記憶が混濁していたとはいえ、してはならないことだ。

 それでも彼は微笑んでくれる。ボクに家族としての愛情を向けてくれる。


「いいのです。私こそ貴女を守れなかったのですから」


「ごめんね。ごめんね……」


 差し出した手を、握ってくれる。それだけで魔力が繋がる。ずっとずっと、物心ついたときから繋がっている魔力。

 ハムちゃんがクルルを降ろして、ボクが抱きとめる。ハムちゃんはすぐに竜に変化する。

 ……ちょっと大きくなってない? いやでもファフニールと融合したんだっけ。なら仕方ないのかな?

 頭を下げてくれたハムちゃんの頭の上に、乗ろうとする。


「エルル」


「お父さん」


「幸せにな」


「……うん!」


 微笑んでくれるお父さんに、満面の笑顔で答える。ユーゴくんと手を取り合う。


「エルル、それじゃ」


「へ? あっ」


 頭の上に飛び乗るには、ボクじゃちょっと身長が厳しかった。それを見かねてユーゴくんがボクを抱きかかえてくれる。

 クルルを背負ってそれをこなすんだから、身体能力が凄いなぁ。

 いつもより広い頭の上。クルルを寝かせて、ボクはユーゴくんに飛びついた。

 ハムちゃんが高度を上げていく。お父さんたちがどんどん遠くなる。

 さようならお父さん。また、今度。


「ちょ、エルル?」


 顔を赤らめている。思わず可愛いって言いそうになっちゃったけど、堪える。

 ユーゴくんの胸元に飛びついてから、姿勢を変えて彼に背中から抱き締めてもらう形に。

 ぎゅ、と抱き締めてもらえる。すっごく幸せ。


「ユーゴくん」


「あ、痛いか?」


「ううん。違うの……えっと、ね……大好きっ!」


『のろけてないでさっさとセルたちを迎えに行きますよ』


 胸に込み上げてくる感情はいくら言葉にしても足りないくらいなのに、ハムちゃんに怒られてしまった。

 もちろんハムちゃんも大好きだよ。お兄ちゃんみたいだしね!


『はぁ……ハデスの記憶を得た分なんだかアグレッシブになってますね』


「今ならなんでもできそうだしなんなら世界征服もできちゃうよ!」


「危険だから止めよう。な?」


「はーい!」


 抱き締められる形でも、ユーゴくんに身体を押し付けることはできる。

 彼と触れ合ってる場所が凄く幸せだ。もっともっと触れていたい。もっともっと一緒にいたい。

 あ、そうだ。


「ユーゴくん、ボクと一緒に暮らしてください!」


「はい。ってちょ!?」


「やったやった! ありがとユーゴくん大好きっ!」


『まあ一人分くらい食費が増えても問題はないですが……』


「ってエルル!?」


「なぁに?」


「ちくしょう可愛いなぁ!」


「やーんっ」


 ユーゴくんがさらに強く抱きしめてくれる。ちょっと苦しいけどそれ以上に嬉しくて幸せだ。

 ほんとは真正面から抱きつきたいしキスも沢山したい。でも嬉しすぎて幸せすぎて彼の顔を見たら心臓が爆発しちゃいそう。

 うーん。すっごい。好きって言うたんびにもっと好きになる。頬が緩む。緩んじゃう。


「えへへ~」


「ん……あれ?」


 目を覚ましたクルルが、傍から見ても困惑している。

 目を点にしているクルルが見れるなんて貴重すぎる。


「私なんでハムの上で寝てたしどうしてユーゴがエルル抱き締めてるしエルルがこれまで見たことないくらいほにゃほにゃ笑顔で幸せオーラ全開でお父さんと戦ってる間にお父さんの雰囲気変わってから記憶ないんだけど私の知らない間に何が起こったリプレイ機能かシーン回想はないの!?!?!」


「シンみたいに饒舌になった!?」


「というかエルルその笑顔はなに幸せそうな笑顔しちゃって!」


「ユーゴくんが大好きだからだよ!!!」


「私はエルルが大好きだよ!」


「ボクもクルルが大好きだよ!」


 飛びついてきたクルルを抱き締める。ボクの優秀な半身は事情を詳しく理解するまでもなくボクがボクに戻ったことを把握したようだ。




「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁエルル! エルル! エルルぅ! くんかくんかすはすはエルルだエルルだわっしょいわっしょいやっと私の元に戻ってきてくれたユーゴ邪魔だからどいてほらほらエルル抱き締めさせてくんかさせてちゅーしてそれ以上もしよ!!!」


「え、やだ」


「エルルぅぅぅぅぅ~~~~~っ!」


 拾ったせるちゃんに泣かれながら抱きつかれた。リフルちゃんもクロエさんも笑っていた。

 戻ってきた、って感じがする。久々のミニマムモードのせるちゃんを膝の上に乗せる。

 さあ、帰ろう。

エルルがデレてます

せるちゃんがある意味完全復活です

ハムちゃんはこれからの家計を考えています

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