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コミュ障エルルの召喚魔法  作者: Abel
第三章 家族の絆と向こう側のボク
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求める感情




 頭の中が沸騰する。高鳴った鼓動が苦しさと同時に安らぎを与えてくる。

 心臓が激しく脈打ちすぎて痛いほどに。でも、決して嫌な痛みではない。

 触れ合った胸元から感じるユーゴくんの鼓動も、ボク以上に激しい。

 ゆっくりと、ユーゴくんが離れる。光を灯した瞳で、ボクを見つめてくる。

 何も言ってくれない。ボクも何も言えない。

 ただ、ただただ幸せだった。触れ合った唇を触って、寂しくなってくる。


「……ユーゴくんの、ばか」


 小さく、彼の胸板を叩く。


「ばか。ばか。ばか、ばか、ばかっ」


 ぽかぽかと、何度も叩く。力が入らない。


「なんで、じぶんの、いのち、捨てようと、するの。ボクは、そんなの、望んじゃ、いないっ」


「……ごめん。でも、こうでもしないとエルルは俺のことを信じられないと思ったから」


「だからってっ。だから、って……」


 ボクのことを思っての行動だって、わかってる。わかってるから、強く否定できない。

 でも自分の命を軽視されるのは、嫌だ。命は自分自身のものだけだから。大事にしなくちゃいけない。

 嬉しさと悲しさ、どっちかわからない感情が溢れて涙が出てくる。視界を滲ませたままユーゴくんを叩く。

 どうして彼が呪いの使い方なんて知ったかはわからないし、どうでもいい。

 でも、彼はボクを説得するために自分の命すら利用しようとした。

 許せないことだけど、ボクという存在にそれほどまでの価値を見出してくれたことが、嬉しい。


「やっと、エルルって感じがする」


「……え」


「戦ってる中で、ずっとエルルなんだけど何処か遠くにいる感じがした。でも、今は違う」


 思わず手を止めてしまうと、ユーゴくんがボクをそっと抱きしめてくる。

 暖かい。大好きな人の温もりだ。彼の心臓の音まで聞こえてくる。


「此処にいる。俺の大好きな女の子が、此処にいる。もう、離したくない」


 ぎゅ、と優しく、けれど力強く抱き締められる。

 けれどきつい拘束ではない。ハイエンド・ハイブースターを使えばすぐにでも引き剥がせる。

 でも、離れられない。ユーゴくんからの抱擁を、引き剥がすことができない。

 ……ボクも、離れたくないから。

 震える手で、彼を抱き締め返す。神竜真鎧(よろい)が光となって消えていく。ボクの戦意が失われてしまった証拠だ。

 ダメだ。ハデスとして生きるのなら、神竜真鎧(よろい)を纏ってユーゴくんを突き飛ばさないと。

 でも彼は、ボクの望みを叶えてくれた。ボクの傍にいてくれると。ボクに命を捧げても構わないと。全てをくれると呪いを以って証明してくれた。


 ぎゅ、とユーゴくんの背中に手を回す。ボクと彼とじゃ頭一つぶんは身長が違うから、自然とボクが胸元に顔を埋める形になる。

 暖かい。暖かい。ずっと求めていた、ボクが望み続けた愛が、此処にある。

 ボクが如何なることをしようとも、彼は左手に宿したアテナの力で無力化してくれる。

 ボクの望みが、叶えられてしまった。ボクが欲した者が、今ボクを抱き締めてくれている。


 ……もう一度、もう一度、彼の温もりが欲しい。


 ちらり、とユーゴくんを見上げる。目と目が合う。合ってしまう。


 う、うー。なんだか恥ずかしくなってきた。でも、彼の抱擁から逃れられない。逃れたくない。


「ユーゴ、くん」


 胸が、どきどきする。自分が何を言おうとしているのかわからない。わかるんだけど、恥ずかしすぎて、言葉にしたくない。


「ああ」


 でも、彼が微笑んでくれる。ボクの言葉を待っている。だから、どんなに恥ずかしくても、彼なら受け止めてくれる。叶えてくれる。

 彼のすべてが愛おしい。


「あの、あのね」


「大丈夫。しっかり聞いてる」


 耳元で囁かれる優しい言葉で頭がふわふわする。思考が霞がかる。難しいことを考えたくなくなる。


「……ボクが、ボクがもっとユーゴくんを信用できるように……も、もっと、して……?」

すいません短くてすいませんでもなんか展開的にここでさくって区切りたかったんです何卒何卒……!

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