3話 道化と始まり
女神様は何を考えておられるのでしょうか。
こんな醜い男と同じ所に召喚するなんて。
ほら、王様も勘違いしていらっしゃるじゃない。
普通はそうよ。誰もこんな男、勇者だと思わないわ。まぁいいわ。この男は魔族。これがバレたらどうなるでしょうね。
「鑑定」?いいわね。これはこの醜い勇者の化けの皮が剥がれる時は近いわ。
(ーーーーーーーーーなさい。ミネアよ。)
女神様の声。頭に響く。
(この男はーーを生むかもしれない。ーーを好まぬお人好しだった場合はーーーなさい。)
女神様。なんと素晴らしいお考え。ですがこの状況ではあの男をーーー出来ません。
(分かっておりますミネアよ。我が使いが行きましょう。安心しなさい。)
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痛っ!!頭打った。
あれ?ここどこ?俺、死んだの?
「起きたみたいね。」
あ、少女。ミネアさんだっけ?
「起きましたか!陽助様!!!」
え!?どこ?誰か話しかけて来てる。
てか本当にどこ?テントみたいに周りは布でおおわれてる。
「今は、馬車での逃亡中でございますぞ!!」
逃亡中?どゆこと???
「バスチさんが助けてくれたのよ。私は別によかったんだけど、ついでにって言うから。」
ああ。成る程。あの城で俺は殺されかけた。
そしてバスチさん??に助けられた。と。
確かにか体は包帯でぐるぐる巻きだ。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」
あれ?目から汗が………。何でだろ。あれ。
「本当に………ありがとうございます…………う、うわあああああん!!!生きてる!俺、生きてるよ!」
「なに男の癖に泣いてんのよ。気持ち悪い。」
「だって、だってえええええええうわああああああああん!!!!!!!」
汗が止まらないよ。
「まぁまぁ。生きていることを喜ぶのは素晴らしいことです。私はバスチと申します。とあるお方からあなた方の世話をするように頼まれました。」
「あるお方?」
「詮索無用でお願い致します。」
「はい……でも…………本当にありがとうございます。
俺に出来ること…ないとは思いますが、何でもおっしゃってください。」
「そうですね…………強いて言うなら力を付けていただきたい。この世界の荒波を押し退けることが出来る力を。あらゆる者と戦う力を。」
「抽象的過ぎるわ。具体的に。」
ミネアさん。恩人に毒舌過ぎ………ってミネアさんにとっては恩人でもないのか。ついでらしいし。
「ならば……「魔王」でも倒していただきましょうか。」
その男。いやバスチさんは俺達、いや、俺に女神と同じことを言った。
「「魔王」ですか。一体誰なんですか。魔王って。」
「その質問に答えるために、前提として説明が必要ですね。あなた方が召喚されたこの世界は、ダールフと呼ばれています。「人」「亜」「魔」がそれぞれの領地を支配する世界です。そしてこの三種族は敵対しております。」
成る程。三つの種族が治める世界。ありがちなファンタジーだな。
「その「魔」を統べるものが「魔王」になります。種族を統べるものが「王」となり、強大な力を手にするのです。私たちは「覇王」になる前に何とかせねばならないのです。」
「「覇王」って?」
「「覇王」とは「王」がさらなる力を付けた者のことをいいます。覇王は三種族を統べる力を持つとも言われています。ですので魔王が覇王になった場合は…………」
「大変なことになりますね…………だから魔王は倒さねばならないと。」
「はい。ですが、そんな単純な話でもないのです……………………あの忌々しき、道化のせいで。」
「「道化」?」
ピエロのことか?何故この世界にピエロが?
「道化は「魔」の中の一族でしかないにも関わらず、「魔」から独立した国家を持っています。勿論「王」も。「道化王」と呼ばれるものがおります。幸い今は出現していませんが。」
この世界のピエロってすごいんだね。
「「道化」が何故忌々しい種族に?」
「「道化」は、「魔王」と共に神を封印したのです…………それからダールフは闇に包まれたのですよ………」
酷い…………この世界のピエロは悪者なのか…………
「酷い……ですね……。闇に包まれ、どのようなことが?」
「三つの種族は互いに憎み合い、争い、多くの犠牲を払うことになりました。今は争いがおさまっていますが、いつまた始まるか……………………この話はやめましょう。ね?まぁこれから、頑張って行きましょう。ね?まずは、冒険者ギルドです!!!出発!!」
道化と魔族ね。道化が悪いやつとは思えないんだよなぁ……同じ魔族だからかもしれないけど。というか俺、魔族のわりに見た目は人間なんだよなぁ…………謎だ。