一話 説明なんてなかった。
気付けば俺は、会議室にいた。
そんな馬鹿な。と思われるかもしれないが会議室なんだ。真っ白な長机、硬い椅子、ホワイトボード。
これが会議室じゃないとしたら何処だ?
椅子は四つ。そこに座るは男一人に女二人、中年の男は嬉しそうに、少女は醜いものを見るかのように、女性は優しく柔らか目でこちらを見る。
ホワイトボードの側にも一人。銀髪の女だ。
眩しい。その女は眩しかった。詩的な表現は得意ではないが、彼女はまるで女神のようだ。美しさの象徴だ。
なんて思っていると、優しい目の女性から声をかけられた。
「私は鈴山 愛理。あなたの名前は?」
この人も美人だ。この人の瞳は黒曜石のようだ。覗こうとすると自分の顔が映る。なんて醜い顔だ。こんな美女と顔を合わせて言い訳がない。
だが、答えないなんてもってのほかだ。
「外山 陽助です。ここって何処なんでしょうか?」
つい質問してしまう。ここを知りたいという好奇心からか、この人ともっと話していたいという欲望からかは分からないが。
「それは、私が説明致します。」
銀髪の女神が言う。
「まず、あなたたち四人は勇者です。」
『「 え?」』
鈴山さんとハモる。
「あなたたちはこれから異世界に召喚され、「魔王」を討伐する旅に出るのです。ここはそれの説明場所といったところでしょうか。申し遅れました。私は「女神」アルギュロス。あなたたちに加護を与えるものです。」
『「マジで?」』
またハモる。
「マジです。」
そっか。
「トントン拍子でお話が進みますねぇ?ご質問、させていただいてもよろしいでしょうか。」
不気味な中年男が言う。
「いいえ。質問は控えて下さい。」
厳しめなんだ。女神様。
「異世界でのルールなど、「読者」の皆様は大体分かります。説明するとダレてしまいますので、説明はなしで。ご自分でご自由に学んで下さいね。」
「読者」って何?メタ発言?
「じゃあ召喚しちゃいますね。頑張って下さい。」
すばやいな。ほぼ説明0じゃん。説明場所なんだろここは?
辺りが真っ白になり、気付けば俺は視線が厳しい少女と一緒に、王城にいた。