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プロローグ 少年が見たもの
破壊された建物、辺り一面に広がる血の海、無造作に散らばる肉塊……肉塊……肉塊。
地獄とも思える光景は、幻ではなく現実で、今もまた誰かの悲痛な叫び声が聞こえる。
その中を一人の少年が駆け抜ける。
村の外へ。
生き残る為に。
この惨状を誰かに伝える為に。
しかしそんな少年の決意を嘲笑うかのように死は少年に襲いかかる。
「おっと、逃がさねぇよ!」
叫んだ化け物の左手から出たツタのようなものが少年の身体を捕らえる。
為す術もなく引きずられる少年。その表情が恐怖に塗りつぶされていく。
それを確認した化け物は嬉しそうに顔を歪め右手と同化している斧を少年に振りかざす。
「じゃあなぁ。坊主」
降り下ろされた一撃は少年の体を両断し、ただの肉塊にした……。
はずだった。
反射的に目を閉じた少年が次に目にしたのは、闇と見間違える程の黒い大剣、そしてその大剣で斧の一撃を受け止める、蒼黒の鎧に身を包んだ男の姿だった。