第三話
「おにーちゃん、おきないねえ」
少年を家に連れてきてから2時間がたった。
「病気か何かなのかも」
自分で言っておきながら、本当にそうだったらどうしよう…と冷や汗たらたらの凌。
連れてきたのは良いが、なにをすれば良いのか分からなかったため、佳が熱を出した時の様に額に熱さましのシートを貼り、寝かせている。
しかし、目の前の少年は熱がでているようには見えない。
凌と佳が小さな頭を必死に捻って考えていたその時、
「…ぅ…」
少年が小さな呻き声とともに薄っすらと眼を開けた。
「りょうにぃ!!」
「だ、大丈夫?いたい所とかない?気分わるくない?熱は?」
佳は大きな眼を輝かせ、思わず凌を名前を呼び、凌は少年がいきなり目覚めたことに驚き、質問攻めしてしまった。
「え、えと大丈夫だけど…?」
少年は戸惑いながらもはっきりした口調で答えた。
「「良かったぁ〜」」
凌と佳は二人同時に言い、少年にニコリと微笑んだ。
天使のような兄妹に微笑まれ、少しばかり頬を赤らめる少年であった。
「あ、えっと助けてくれてありがとう。…俺、あすか りつと、小2です」
律儀にも軽くアタマを下げる。
「わたし!あらつき けい!よんさいです!」
少年の方に乗り出す佳を引き止めつつ、凌もなのる。
「俺はあらつき りょう、小2!よろしく!あ、俺たちにですとか付けなくていいからね?」
「よろしくねー、リツ」
相も変わらずニコニコ顏な美形兄妹に詰め寄られ、律斗はびっくりしていた。
「リ、リツ…?」
「お、リツ、いいねぇ。呼びやすいし」
と、親指をたてる呑気な凌。
「ねー、リツのおようふくよごれてるよー?だいじょうぶ?」
佳も佳でリツの驚きなど気にしていない。
「あ、ほんとだ。リツおふろわかすからはいれば?洋服は俺のかすし」
「え、いやでも…」
助けてもらっておいてさらにお風呂は…と律斗が身体を引こうとすると
「いーからいーから、子どもはえんりょすんなって」
「おかーさんのくちぐせー」
ケタケタと笑いながら律斗を引っ張る凌と佳につられ、律斗も思わず笑ってしまった。