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第十九話

「とまあ、こんな感じです。はい」


捺からやいやいちょっかいを出されながら宵は話した。


「その時の噂がまだ消えないんだよなぁ。噂は一旦広まったらなかなか鎮まらないからねぇ」


「でも捺はクロウの情報屋なんでしょ。情報操作?っていうのかな、そーゆうので噂を否定したりとかはしないの?」


「俺、情報収集は得意なんだけど、情報操作は苦手なんだよー」


首を傾げた佳に、捺は口をとがらせた。


「まあ、なんでもできる人なんてそうそういないよね」


そういう佳はわりかしなんでもできるじゃねぇか…(捺情報)と全員がつっこんだのはしょうがないことだろう。


「それで、肝心なこと忘れてません?」


「あ?あー、なんで俺が狼帝を狙うかってことだったな。それはおまえ、なんといっても『 最強 』は、男の夢だからな。いやー、なんつうか心沸き立つってぇの?喧嘩やってる男ならやっぱ欲しいじゃねぇか、『 最強 』ってのがさ。だから、なんとしても狼帝に勝ちてぇんだ」


そういって笑う宵はびけいを見慣れているはずの佳がドキッとするくらいそれはそれは男前な顔だった。クロウの下っ端たちも見惚れている。


「宵いっけめーん。ね?佳ちゃん」


捺がヒューと口笛を吹いた。


「うん、かっこいー!」


「お、おー。さんきゅー?」


どうやら宵も無自覚な美形のようだ。


「長話して疲れたでしょう?お茶淹れたから皆でおやつにしよー。佳ちゃん紅茶でよかったぁ?」


洸河がにこにこと微笑みながら山盛りのお菓子と人数分の紅茶を持ってきた。


「うん、ありがとう!・・・わぁ、この紅茶すごっくおいしー!なんだろ、リンゴの香り?」


「そうそう、リンゴの皮使って香り付けしたんだぁ。佳ちゃんよくわかったねえ」


「鼻は良い方なんだ。お茶、もしかして一人一人違うの?」


佳がひょいとのぞくと色とりどりのコップの中は緑茶や紅茶、コーヒーにジュースまで様々だ。


「飲み物って特に好き嫌い別れるからねぇ」


「え、てことは全員の好きなもの覚えてたりする?」


「うん、そーだよぉ。これでもいちおー大派閥の幹部だからさぁ、メンバーの顔とか特徴は覚えてた方がいいでしょー」


洸河はこともなげにさらりと言う。


「ちなみにお菓子も全部洸河の手作りなんだぜ」


佳がなにも言えずに目を見開いていると、さらに爆弾を落としてきた。落としたのは、つくった洸河よりも自慢げな宵だが。


「へぇ、すごーい!んー、おいしい〜っ」


洸河の美味しいお菓子とお茶に顔をほころばせる佳。そんな佳をみて周りの不良達もほんわかしていた。



その時



ドガーンっっ!!!!



けたたましい衝撃音と共に、扉が文字通り吹き飛んでいた。


全員が一斉に戦闘態勢に入る。


もうもうと立ち上る砂煙の、その奥から放たれる殺気。


顔を見なくても分かる──



「やっときたか・・・狼帝」



皆が緊張に包まれるなか、宵だけが楽しそうに笑っていた。


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