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第十三話

この先少しだけ、喧嘩等の暴力を含む場面が出てきます。そこまで重いものではありませんが、苦手な方はご注意下さい。

「う、があぁっ…」


「ひいいぃっ!すみ、すみませ…っ」


悲鳴の絶えなかった暗い倉庫に静寂が訪れた。


よいぃ、終わったよぉ。

こいつら狼帝の狂信者なだけあって強かったけどぉ…宵が出るまでもなかったねぇ」


つまんなーい、と白い髪の男は無邪気に笑い、重なり倒れる大勢の人間を見下した。


「あ、そーいえば。狼帝の『ひめ』のことで耳に入れたいことが…」


眼鏡をかけた男がコンクリの上に座って傍観を決め込んでいた男に耳打ちする。


「…そうか。くく…待ってろよ、狼帝」


暗闇に紅い瞳が妖しく煌めいた。










「佳、はい弁当」


「ありがとー!」


凌が佳に手作り弁当を手渡す。佳のキラキラ輝く笑顔を見るたび、心の満たされる凌だった。


「じゃあ、またな」


「ん、ばいばーい」


「あ。佳、ちょっと待った」


「なーに?」


「最近ちょっとリツの喧嘩絡みであんまり良くない噂が流れてる。

今は時間ないから詳しい事は帰ってからな。佳なら大丈夫だと思うけど…絶対一人になるなよ。迎えにきたいけど、今日は部活あるんだよなぁ」


いつもの、愛する妹に向ける甘く優しい顔とは違う、真剣な顔。佳は凌のこんな顔を見るのは久しぶりだった。

前に見たときは佳が変質者ストーカーに狙われた時だった。その変質者は凌と律斗の手によって沈められたが。


「わかった。気をつける」


「っと、時間だ。じゃあな、佳」


「うん!じゃあね凌にぃ」




「ってことがあったんだけどー」


「多分、『 クロウ 』のことだと思うな。よいって人が頭の族。

わりと規模の大きい所でね、犯罪すれすれのこともやってるって話、よく聞くよー」


教室について、依月と有穂に話をすると有穂からあっさり返答が帰ってきた。

有穂の兄が不良であるため、自然と有穂自身も不良関係の噂に詳しいのだ。


「で、そのクロウの総長『よい』は狼帝…飛鳥先輩をずっとライバル視してるらしいの」


「それは、喧嘩で負けたから?」


「そ。それも、ぼろ負け。


知ってる?この街ではここ数年ずっと不良達の間で『最強』が決まってないの。だから、この街の不良達はこぞって最強の座を争ってる。


宵も、飛鳥先輩と闘うまでは負け知らずで、誰にも止められないくらいの勢いでクロウも勢力拡大してたんだって。それこそ、一番最強の座に近いのはクロウの宵だって言われるくらいにはね。

それが、飛鳥先輩に負けて最強の座を取れなかったもんだから・・・

『最強』になる条件は、全チームの総長、そして通り名を持っている人に勝つこと。で、宵が勝ってないのは、飛鳥先輩だけ」


「何が何でもリツに勝って最強の座を手に入れたいってこと?でもまぁ、だーれもリツには勝てないよー」


「結局のろけか!」


「のろけじゃなくて本当のことなのにー」


「佳が飛鳥先輩のこと話すとのろけにしかならないからね?」


心外だとでも言いたげな佳を依月はばっさりきる。


「でも、ほんとクロウには気をつけて。普通に人質とかとっちゃうような所だから。飛鳥先輩に一番近い佳が狙われるのは当然だし」


佳は、リツに近い人なんていくらでもいるのにー、と心の中で呟いた。


「私は大丈夫だよー。知ってるでしょ?そんなに弱くないから〜」


「佳が喧嘩できるって知ってるけど、それでも、ねぇ?」


「ただでさえ狙われやすいってのに…」


心配そうに佳を見つめる有穂と依月。


本当にいい友達をもったと、佳は幸せをかみしめていた。





その日の帰り


「え!?家までなんていいよー?」


「ばか!何かあったらと思うと、心配で心配で…」


家まで送るという有穂と依月に佳は首を振った。

有穂が泣き真似をすると純粋な佳は騙されて首を縦に振ることになった。



「ふたりともありがとうねー」


「気にすんなって」


「いつも凌先輩か飛鳥先輩に取られてばかりだものね」


「もー、大好きいぃ!」


佳は笑顔で2人に抱きついた。そんな佳につられて有穂と依月も笑顔になった。



「…あ」


依月がふいに妙な声を出した。


「依月?どうしたの?」


「あ、いやなんでも…」


不自然に目を逸らす依月。佳が依月の視線があった先に目をやると、そこにいたのは楽しそうに笑う律斗と、律斗に腕を絡めている




髪の長い、綺麗な女の人だった。




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