第十二話
リツお泊まり編
「リツ、今日泊まっていかない?肉屋のおばちゃんがいっぱいくれたんだぁ。焼肉しよ!」
買い物から帰ってきた佳がじゃーんっ!と広げて見せたのは大量の肉。
「お、肉か!いいねぇ」
「しかもこんなにいい肉ばっかり…佳、何したんだ」
「ん?ただ店先で肉売り込んでただけだよー。そしたらおばちゃんがお礼にって」
佳が売り込めば、可愛いものには目のない商店街のおば様方が買わないわけがない。
「でかした!」
「裕子さんと文也さんも呼ぶ?」
「いや、今日は二人とも帰ってこれねぇっつってた」
「そっかぁ。残念」
裕子と文也の事を、おばさんおじさんと言うよりは姉や兄の様に慕う佳は心底残念そうにした。
「じゃ、三人で焼肉しますか!」
「「いぇーいっ!」」
肉の焼ける香ばしい香りが家じゅうに漂う。肉につけるタレはもちろん凌の手作り。
「佳、ほら肉」
「ちゃんと持ってるよー?さっきも貰ったのに」
次から次へと佳の皿に肉を載せる凌。
「凌、俺に肉は?」
「あ?知るか、肉くらい自分で焼きやがれ」
その優しさはどうやら佳に対してだけの様だ。
律斗はこんのシスコンがー、とぶつぶつ文句垂れつつホットプレートの肉に手を伸ばし口に運ぶ。
「あー!リツその肉私が焼いてたのにぃ」
ぶぅ、とむくれる佳。
「お?悪りぃ悪りぃ。ほらお詫びにこれやるから」
そう言ってホットプレートの肉にタレをつけて佳の方へ差し出した。
「…絶対熱いじゃん」
「ったく。へいへい、冷ましますよー」
ふーふーと息を吹きかけて冷ますと再び差し出した。佳は口を開けぱくりと食べもぐもぐ咀嚼する。
「ん〜、おいひぃ〜」
「そりゃ良かった」
満面の笑みを浮かべる佳と佳を優しくみつめる律斗。あま〜い空気の漂う食卓に気まずくなった凌は、
「…あー俺、茶とってくるわ」
と言い、不自然に目をそらし立ち上がろうとした。
佳と律斗は顔を見合わせ自分達の行動を冷静に判断するとたちまち首まで赤くさせた。
「あ、あー凌にぃ、お茶なら私が取りいくよ!」
佳はガタンと音をたてて立ち上がるとパタパタと走って逃げ出した。
「・・・」
「・・・」
しばし降りた沈黙。
「…悪りぃな、凌」
「ざけんな」
「いっでえぇ!」
なにが悲しくて人のいちゃいちゃをみていなくてはいけないのか。しかも可愛い可愛い佳のだ。
ニヤッと笑った悪人面に、凌は怒りを込めて律斗の手の甲に箸を突き刺した。
「いくらリツでも、まだ佳はやらん!」
「シスコンもたいがいにしろよ!」
戻ってきた佳は、仁王立ちする凌と手をさすりながら叫ぶ律斗を不思議そうに見つめるのだった。




