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第一話



気付いた時には、もう



『恋』



してた。







りょうにぃ、まってよー。靴が〜」


「早くしろ、けい。遅刻するぞー」


慌ただしく家を出る仲睦まじい兄妹。いつもとなんら変わりはない夏の日。


お向かいのお婆ちゃんはそんな二人をみながら、今日も荒槻あらつきさんとこの子達は仲良しねー、と微笑んでいた。


近所でも有名な仲良し兄妹。

歳が離れていることと、両親が多忙であまり家にいないせいか、兄 りょうが妹 けいの世話をして来た。

こうして、見事なお兄ちゃんっ子が出来上がったのだ。


現在、凌は高2、佳は中1。2人の通う学校は同じ敷地にあるため、毎朝一緒に登校してるのだ。


実はこの兄妹、校内でも有名だったりする。


なぜなら…



「じゃあな、佳。今日、藤野の所によって帰るから、遅くなる」


「りょーかい。気を付けてね」


中学校の正門の前で別れる凌と佳。

凌が佳の頭を軽く撫でると、佳はにこっ、と笑った。


2人の様子を見ていた生徒は、ある者はため息を洩らし、ある者は顔を紅潮させ、ある者は目眩を覚えた。


「今日も変わらず美しい…」

「見た?見た?凌様が撫で撫でしたよー!」

「絵になるなぁ」

「は、鼻血でそう…」

「真夏なのにあそこだけ爽やか〜」

「佳ちゃんのスマイルいただきましたーーっ!」



何を隠そうこの2人、超絶美形兄妹なのだ。



凌は二重の黒い瞳にサラサラ黒髪の涼しげな顔立ちの男前。一見細く見える身体は、部活の弓道で鍛えられた筋肉が程よく付いている。


佳は凌と同じ二重の黒い瞳に肩までのサラサラ黒髪、そしてまっさらな白い肌に淡い紅色の唇。可憐ながら凛とした美しさを兼ね備えている。小柄な身長だが、細い手足はすらりと長い。



その上、凌は上位10位以内には常にいる成績優秀者で有りながら弓道部のエース。佳の方もそこそこの成績で、運動神経は凌といい勝負をするほど。

ハイスペックもいいところなこの兄妹、性格までよろしいときたら悪い所を探すのが困難である。

言うまでもない、モテモテだ。

ただし美形すぎて、誰もがつり合わないと思ってしまうので告白しようなんていう勇気のある人間はそうそういないが。




「は〜、毎朝毎朝死人出すつもりなの?この美形兄妹」


「ほら、佳。無駄に笑顔振りまいてないで早く行くよ。凌さんも!遅刻するよ?」


正門前でいちゃつく二人を引き離すのは、佳の親友、御影みかげ 依月いつき漆間うるま 有穂ゆうほ。依月は長身のボーイッシュな少女で、有穂は大企業社長の娘で超が付くお嬢様。


「えー、別に笑顔振りまいてないよ・・・あだだだ、い、痛い痛い。わーかったってばぁ。行く!行くから手、離してー!じゃーねー、凌にぃ。」


ぶぅ、とほおを膨らませる佳の口を依月が抓り、左腕を有穂が絡め取ってずるずると引きずる。


「あ、凌にぃっ!」


なおも引きずられながら、笑っている凌に向かって叫ぶ佳。


「なにー?」


「リツに早くCD返せって言っといて!」


「機嫌よかったら言っとくよ。ほら、早く教室いけー」


「わかったわかった、リツによろしくー」


この会話の一部始終を聞いていた生徒は顔が青くなった。もちろん、佳の親友である依月と有穂も。


「「・・・ほんと、佳と凌さん、尊敬するわ」」


「え、リツのこと?そんな怖くないんだけどな」


綺麗にハモった二人に言い返すと


「「いや、怖いから」」


と、またも綺麗にハモられた。


「だってさ、あの飛鳥あすか 律斗りつとだよ!?


中学の入学式で、絡んできた先輩12人を病院送りにして、教師を4人退職に追いやって1人は未だ精神科通い。

気に入らない奴がいたら全力で学校から叩き出す。

一睨みしただけで身体が硬直するあの眼力」


と、依月が言うと


「そうそう、こないだなんか不良ヤンキーに奇襲かけられたけど、警察が発見した時にはあたり一面に人が倒れてる中に返り血浴びて無傷で立ってたんだって。

不興を買ったら最期、蛇に睨まれた蛙のごとく、ただ怯える間に自分の立ってたところには血の海が出来る、その強さは最早異常。流石、狼帝ろうていなんて呼ばれるだけあるわ」


と、有穂が続けた。


「それはさ、確かに事実だけど・・・」


ふてくされたように言うその表情も可愛い佳の頭をぽんぽんと撫でる依月。


「それでも、好き、なんでしょ?」


佳の眼を上から覗き込む様にして聞いてくる。


「飛鳥先輩は恐いけど、応援してるよ」


有穂もそういってにこっとした。


「えへへっ」


佳は少し頬を赤らめて笑った。





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