ふっ切れたチャラ男
未だ怒り顔の田原を宥めて、席に座らせた。相変わらず視線は全く合わない。しばし互いに無言だったが、こうなったら腹をくくるしかない。こういう機会を作ってくれた二人の厚意を無駄にしないためにも。
「悪かった……」
小さな謝罪はちゃんと田原の耳に届いたようだが、返事はかなり刺々しかった。
「謝るようなことしたんですか? ってことは、やっぱりあれはノリっていうか、冗談ってことなんですね」
「そうじゃない。謝ったのは、お前の同意なしにしたことに対してだ。ノリや冗談であんなことはしない」
ハッと顔を上げた田原と、ようやく視線が合う。
「……な、何でそんな格好なんですか」
「チャラ男は苦手だろ?」
「苦手ですけど、それと先生のイメチェンは関係ないですよ」
こいつ、マジでわかってない。普通ここまでされたら気づくだろうよ。思わずため息が出た。
「……鈍い。大アリだ。俺は何とも思っていない女のために、長年してきたスタイルを変えるようなことはしない。まして好きじゃなきゃ、付き合っていない女にキスなんて……絶対しない」
完全に告白めいたことを言っているにもかかわらず、田原は俺の言葉を真に受けずにはぐらかした。
「はは……冗談キツイって。何であたし? 生意気で、こんな一回りも年下のガキに……」
完全に頭に血が上り、立ち上がって田原を囲い込むように背もたれに両手をつき、片膝を彼女のすぐ横に乗せた。すぐそばに呆然とする愛しい女の顔がある。
「……冗談でこんなことするわけねーだろ」
スッと目を細め、自分の中で何かのスイッチが入ったかのように田原に迫る。さっきまでウジウジグルグル悩んでいたのが嘘のように。
わからせたい。こいつに、俺の想い全てを。
「俺があのときどれだけショックだったか、お前にわかるか? 俺に縋り、潤んだ眼をしながら貪欲に俺の唇を求めていたお前に……急に突き放されて泣きそうな顔されて、断りの言葉を口にしながら逃げられた俺の気持ちが」
固まったままの田原が微かに頬を赤く染める。そうだ、思い出せ。あのとき自分がどれほど俺を求めたのか。
「お前に求められたとき、『こいつも俺と同じ気持ちだったんだ』と嬉しかった。……それなのにお前は逃げた。振られたと思ったよ。それがどれだけショックだったか……。また一人でウジウジ悩んで、それを門倉なんかに慰められたんだぞ」
「そんなの、知らない……。何も言われてないのに、そんなこと……」
くそっ、鈍すぎだ。もういい。遠慮はやめだ。
「お前が好きだ」
田原の耳元に顔を寄せ、言葉に色を込めて囁いた。ビクッと身体を震わせたかと思えば俺を押しやろうとする。腕に閉じ込め、きつく抱きしめる。
絶対逃がすか。知れ、お前は知らなきゃいけない。
「いつの間にかお前を目で追っていた。十年片想いしていたあいつへの気持ちも、いつの間にか消えていた。田原、お前を意識し始めてから……」
俺を変えたのはお前なんだ。お前じゃなきゃ、きっとあいつのことを未だ引きずっていたはずだ。
「ずっと苦しかった。――教師と生徒だからな。でも……」
彼女の耳に軽く歯を立てると、ビクッと身体を震わせる。
「もうお前は俺の生徒じゃない」
頑なだった俺を本気にさせたんだ。それをこいつに嫌ってほどわからせてやる。
「いろいろ馬鹿みたいに悩んだが……もう遠慮しない。お前を俺のものにする」
細い首筋に顔を埋めれば、仄かにせっけんの香りがする。唇を寄せてきつく吸い上げると赤い印が付く。
「逃げたきゃ、俺を殴って気絶させろ。お前ならできるはずだ。逃げないなら同意と取る」
「せんせ、ドッキリならもう……、――っ!」
ここまでされてまだ言うか。黙らせるために首筋に思い切り歯を立てた。
「俺の本気をドッキリで片づけるな」
田原は怯えた目で俺を見る。その間に位置を逆転させた。俺が座席に、そしてその膝の上に彼女を乗せて再び抱き締める。
「先生、何を……」
「お前が冗談と思いたいなら、今はそれでもいい。冗談と思えなくさせるだけだからな」
言葉で、行動で。冗談なんて二度と言わせない。
どうやらこいつは耳が弱いらしい。吐息だけで本人も未だ理解していないだろう快感を律儀に拾っている。往生際が悪くジタバタと抵抗するものだから、少し虐めたくなる。
「暴れるなら、ここで抱くぞ」
途端に硬直し、抵抗を止めた。もちろんそんなことはしない。どこで誰が見ているかわからない状態で、こいつの痴態を誰が晒すか。
顔を近づけて覗き込むと、怯えと不安で黒い瞳が揺れている。それを安心させるように、じっと見つめた。
「好きだ、小町。……好きだ」
何度諦めようとしただろう。でも無理なんだ。
「小町、俺を好きになって」
彼女の頭を胸に押し付ける。ちゃんと聞けよ。お前に触れているだけで、こんな馬鹿みたいにドキドキしてるんだ。
サラサラの黒髪を撫で、チュッと口づける。
「好きだ……好きなんだ……小町……」
馬鹿で鈍いお前が理解するまで、何度でも言い続けてやる。
かわいい、愛しい、堪らない……好き過ぎて、自分を見失うほどお前に夢中なんだ。
腕の中で大人しくしている田原を思う存分愛でる。頭、目尻、頬、額、首筋――唇以外のあらゆるところに口づける。唇は、こいつが俺を受け入れるまでおあずけだ。
しばらくされるがままになっていた田原だったが、どんどん真っ赤になって目に涙を浮かべていた。少し俺から離れて睨み付けてくるが、それが怒りではなく羞恥なのは一目瞭然。こっちまで照れてしまう。そんなかわいい顔で睨まれたら理性が吹っ飛びそうだ。
「くそっ……あんまり煽るな」
その顔を直視するのは危険だと、なけなしの理性で顔を胸に抱き込んだ。
あっという間に観覧車が地上に戻った。降りて数歩歩いただけで、田原はその場に崩れ落ちる。しまった、やり過ぎたか。
「田原……大丈夫か?」
彼女の前に屈んで視線を合わせると、真っ赤だった顔色が更に上気する。つられて俺も赤面してしまった。どうしよう。こいつと目を合わせるだけで、遥か昔に忘れてしまった甘酸っぱい気持ちが蘇る。
互いに見つめあったまま硬直していると、「そんなところで座り込まれたら邪魔です」と門倉の声。
奴はぐったりとした九条を抱えて立っていた。こいつは観覧車だろうがどこだろうが密室ならやる男だと思った。
さすがの田原も何か感じ取ったようで、瞬時に奴に噛みつく。
「あんた、琴美ちゃんに何したのよ!」
「おや、あなた方も似たようなことをしていたのではありませんか? そんな事後みたいな表情で詰められても、何の説得力もありませんよ」
確かに潤んだ目だし、全身赤く火照って匂い立つ色香がムンムンだし、俺もちょっと想像しちまったけど……――ああ、くそっ。俺以外の男がこいつを見るな。
田原を抱き寄せて、そのかわいい顔を門倉から隠す。
「お前らと一緒にするな。俺たちは別に何もしてねぇよ」
「そうなのですか? 進藤は意気地なしですねぇ。既成事実を作ってしまえば最後でしょうに」
それを考えなかったと言えば嘘になるが、そのどこか投げやりな言い方が不快でしょうがない。
「俺は田原が本気で好きだから、こいつの気持ちを大事にしてやりたい。こいつの同意なしに、もうそういうことをしたくないんだ……」
「先生……」
田原は感嘆の声を上げたが、門倉は俺の言い分に少し呆れたようだった。
「あなたがそれでいいなら何も言いませんけど、うかうかしているとまた逃げられますよ」
「誰が逃がすか。小町は俺のものだ。誰にもやらない」
キッと睨み付ければ、クスッと笑われた。その柔和な顔に似合わぬ鋭い視線が「ようやく本気になったか、馬鹿め」と言っているかのようだった。
苦々しい想いを感じていると、田原が俺の服をツンツンと引っ張る。
「ん? どうした、田原」
「せんせ……ここから、逃げたい……」
その言葉に視線を向けると、俺達は周囲から好奇の目を向けられていることに気付いた。その場にいる人数はそこまで多くはないが、悪目立ちしているのは確かだ。
「歩けるか?」
田原を立たせたが、どうやら自力で歩くのは困難なようだ。
「抱き上げても……いいか?」
困ったな。これ以上触れていると、俺の強固な理性もグラグラ揺れる。
彼女の了解を取り、膝裏を抱えて抱き上げてその場から離れた。俺の首に腕を回してしっかりしがみつかれて、このまま誰もいないところに攫ってしまいたくなる。
門倉は九条をお姫さまだっこして後からついてくる。絵になるよな、黙っていれば。
そのまま駐車場へ向かい、ここで門倉達と別れる。
九条が正気を取り戻すと、俺に抱き上げられた田原を見て驚いたようだ。
「こ、こ、こ、小町ちゃん。そういうことなの?」
「いや、ちが……」
「大丈夫。言わなくてもいいよ。そっか、よかったねぇ~」
「だから、ちが……」
「進藤先生、小町ちゃんを泣かせたら承知しませんよ」
「ああ、もちろん」
「ちょ……先生!」
即答すると睨まれた。このまま外堀も埋めてやろうかとつい笑みが漏れる。
「小町ちゃん、今度詳しく聞かせてね」
「では帰りましょうか、琴美さん」
「うん。進藤先生、さようなら。小町ちゃん、またね」
二人は言いたいことを言って、帰っていった。
「何なの……あれ……」
呆然としながら走り去る車を凝視している田原がおかしくて、クスクスと声を上げて笑うと怒られた。
「ちょっと先生! 笑いごとじゃないんですけど!」
「どうせそうなるんだから、いいだろ?」
「…………」
「そうならない、とは言わないんだな……」
拒絶の言葉が出ないことに安堵した。スッと笑みを消し、しっかりと田原を見つめ真剣に尋ねる。
「俺は……望みを持ってもいいんだな?」
「先生……」
「嫌なら、今ここではっきり言ってくれ。そしたら……諦めるから……」
もしそう言われてしまったらと想像して、泣きそうになる。
「本気で嫌じゃなければ、少しでも望みがあるなら……考えてくれないか。大事に、するから……」
今は観覧車内のときのように強気には出られず、田原に請い願う。
しばし無言の後、田原が消えそうな声で言った。
「い、いや……じゃないから……困る」
「ん?」
「こんなこと……初めてだから……よく、わかんない……」
一生懸命考えて話そうとしているのだろう。言葉に詰まる彼女の言葉を辛抱強く待つ。
「先生のことは……嫌いじゃ、ない……。嫌いなら、キスなんて……させてない。だから、少しだけ……時間をください。ちゃんと……考えるから……」
もう返事は出ているような気もするが、今日はこの言葉で十分だ。
「ありがとう……すげぇ嬉しい……」
あまりの嬉しさで、きっと俺は今ものすごく緩んだ顔をしていることだろう。そのままギュッと彼女を抱きしめた。
田原の家のそばまで来るまで送った。降りようとしたのを、引き留める。
「携帯、教えろ」
これをしなければ話にならない。俺からコンタクトを取れないなんて耐えられない。
「連絡してもいいか?」
素直に頷くので、少し調子に乗ってみる。
「キス……してもいいか?」
そんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。あたふたしている田原の後頭部に手を伸ばし、引き寄せる。ギュッと目を閉じて硬直するので、少し虐めすぎたかと苦笑する。唇ではなく額に軽く口づけると、彼女がゆっくり目を開く。
「今日は……これで我慢する。今度、どこか行こう。……二人きりで」
ちゃんと聞こえているのかわからないほど反応がない。じれったくて、また少し意地悪したくなる。
「我慢しなくてもいいなら、今からホテルにでも行くか?」
こいつの弱点である耳に唇を寄せて、言葉に艶を含ませて甘ったるく誘う。もちろんそこに吐息を乗せて。彼女はびくっと背筋を震わせ、酷く混乱した顔だ。
「行くよな、デート」
再度確認すると、ようやく小声で了承を得た。今日はこのぐらいで止めておいてやろうと、優しく頬を撫でる。
「おやすみ……小町」
「お、おやすみなさい」
フラフラと車を降りて家の中に入っていった田原を見届けて、ようやく体の力を抜いた。ハーッと大きくため息をつき、ハンドルにうな垂れる。
「っ、心臓壊れそう」
あんな気障ったらしいことを平然とやったくせに、今更いろいろ思い出して恥ずかしくなる。それでも首の皮一枚繋がったことが嬉しくて、浮かれたまま帰路についた。
翌日。ソファーに座った俺は、手の中の携帯電話をジッと見つめていた。
昨日散々浮かれていたが、一つ失敗したことがある。デートへ誘ったはいいが、はっきりとした約束をしていなかったことだ。今度っていつだ。俺から誘わなければ、絶対実現しない。
そのことに朝起きた後にようやく気づき、半日携帯電話を凝視して迷っていた。
ええい、お前は男だろ。散々臭いセリフ吐いたじゃねーか。デートぐらいスマートに誘え!
自分を叱咤し、ようやく気持ちを固め、電話を掛けた。が、田原は出ない。
ようやくボタンを押せたのに。ここで諦めたらもう二度と誘えないかも……。
もう一度だけ、と再びダイヤルすると、今度はすぐに通話状態になった。
『も、もしもし!』
少し慌てた声。もしかしたら出る前に俺が切ってしまったのか。出てくれたことに心底ホッとした。
「……小町? 俺」
しかし相手の返事がない。
「おい、聞いてるのか?」
『あ、はい! 聞いてます!』
返って来た大声に、思わず笑ってしまった。
「今日は元気だな」
『あ、あたしはいつも元気ですよ?』
「そうだな」
『せ、先生、何か用でも?』
「ん、別に何も」
大嘘だ。でもこれも本音。
「ただ……小町の声が、聴きたかっただけ」
電話口では絶句しているようだ。顔を見ないと、結構臭いセリフも言えてしまうものだな。それは向こうも同じなのかもしれない。
『あ、あの……』
「ん?」
『あ、たしも……デス』
息を呑み、二の句が継げなかった。
こいつ、今、何て言った……? 空耳じゃないよな? 田原も、俺の声が、聴きたかった……?
多分、今の俺はかなり真っ赤な顔をしているんだろう。嬉しくて、頬が緩む。
「そっか……」
『……そうですよ』
「……うん」
『はい……』
くそっ、何で電話なんだろう。目の前にいたら押し倒して、嫌って言うほど貪りつくしてやるのに。
「小町……会いたい」
『っ!』
「顔が見たい……」
『ぅ……』
「抱きしめたい……」
自然と馬鹿みたいに甘ったるい言葉が出てきた。
『先生……恥ずかしくないんですか?』
「何がだ?」
『そんな甘ったる~い、キザなこと言って』
「恥ずかしくない。だって……」
『だって?』
「こんなこと、小町にしか言わないから」
俺、何言ってんだろう。これまでこんなこと、一度も言ったことないのに。
やっぱり電話でよかった。こんなこっ恥ずかしい自分、絶対に見せられない。
一度深呼吸し、落ち着いたところで本題に入る。
「ところで来週の週末、暇か?」
『あ、はい』
「じゃあ、約束」
『約束?』
「したろ? 二人きりでデートしよう、って。どこに行きたいか考えておけ」
『…………』
「小町、返事」
『は、はい!』
「よろしい」
ふう。何とかうまくいった。
「じゃあ土曜の十一時に駅で待ち合わせでいいか?」
『はい』
「楽しみにしてる」
『はい』
こいつ、さっきから「はい」しか言ってねぇ。もっと違う言葉が聞きたい。
「小町」
『はい』
「好きだ」
『っ……あ、ありがとうございます?』
何で疑問形だよ。ほんとにこいつは……。苦笑するしかない。
「そこは同じように“好き”って返して欲しいんだがな」
ま、いいか。昨日と比べたら大した進歩だ。
「じゃあ、土曜な」
『はい』
電話を切り、それをテーブルに置く。ソファーに寝転がり、そばにあったクッションに顔を埋める。
「っっしゃああああ!」
腹から出した絶叫がクッションに埋もれる。そのままクッションを抱きしめてゴロゴロ転がると、ソファーから落ちた。腰を強打したが、構わず転がる。
痛みなんてどうでもいい。ニヤニヤして、誰にも見せられないほど緩み切った顔をしていることだろう。
数日前までには考えられないほど、俺は浮かれていた。
月曜になり出勤すると、俺の姿を見たほぼ全員が驚きで目を丸くした。
「進藤先生、どうなさったんですか」
「誰かと思いましたよ。随分変わられましたね」
職員室で先生方に口々に変化を指摘され、居たたまれない。
「私ももういい年なので少し落ち着こうかと。……似合いませんか?」
訊けば、大げさに首を横に振られる。
「いえいえいえ。よくお似合いですよ」
「そうですよ。真面目な先生って感じでとてもいいと思います」
ってことはこれまでは不真面目っぽかったってことか。そりゃそうだよな。あんな教師、どこ探したっていないわな。逆にこれまでよく注意されなかったものだ。
生徒にも驚かれ、まるで見世物パンダのような扱いを受けて何とか一日を終えた。
放課後。門倉に一応報告に行けば、顔を合わせた瞬間に笑われた。
「随分だらしのない緩んだ顔をしていますね。うまくいったのですか?」
「土曜に二人で出掛けることになった」
「大進歩ですね。よかったじゃないですか。僕と琴美さんのおかげですね。感謝してください」
「ああ。感謝してるよ」
素直に礼を言えば、不気味なものを見る視線を向けられた。
「……どうしたのですか。気持ちの悪い」
「お前なあ……」
人がせっかく素直に礼を言っているというのに。言うんじゃなかった。
上機嫌で平日を過ごし、とうとうやって来た土曜。駅で田原と待ち合わせる。
落ち着かなくて、ほとんど眠れなかった。しかも待ちきれなくて三十分前に駅に着いてしまった。小学生の遠足でもあるまいし、浮かれすぎだ。
ところが待てども、待てども、待ち人は来ない。電話も繋がらない。
一体どうしたのだろう。ドタキャン……ではないか。もしかして事故にあったんじゃないだろうか。心配でいてもたってもいられなくて、その場から歩き出した。
駅から田原の家へは一本道だ。よほどのひねくれものでもない限り、必ずこの道を通るはず。どうやら事故に遭った様子はないみたいで、少し安心する。
田原の家の屋根が見えてきた。このまま訪ねて行って親御さんが出てきたら、何と説明すればいいのだろうと悩んだが、目に飛び込んできた光景がそんなものを空の彼方へ吹っ飛ばした。
「っ……!」
心臓が止まるかと思った。
窓枠に手を掛け宙ぶらりん状態の彼女が目に飛び込んできた。
「小町っ!」
居てもたってもいられず、俺はその場から駆け出した。




