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儚げ少女は元不良様  作者: いとみ
敵は変幻自在の教職者
12/31

若気の至りで済むなら世は乱れる

今回、話が粗いかもです。

何を書いているのかわからなくなってきました。

「田原……」


 ギュッと掴まれた腕、首元に添えられた手、上向きにされる顔。

 熱を帯びた瞳、ほのかに香るコロン、どんどん近づく端正な顔。


「んっ……」


 合わさる唇、腰にまわされる手、密着する身体。

 ままならない呼吸、微かに漏れる熱い吐息、絡められる舌。

 離れる唇、微かに上気した頬、欲を孕んだ男の眼。


「っ、小町……」


 切羽詰まったように呼ばれる名前、低く甘い声、閉じた瞳。

 深く長いキス、服を掴み縋りつく手、力が抜ける身体――――


 ど、どうしてこうなるわけ――――!?





 ま、ま、ま、まさかの事態ですぞ、たいちょ――!!

 思考回路は絶賛機能停止中の小町です。


 前回、美少女・琴美ちゃんと変態・門倉の結婚式に出席したわけです。

 全然めでたくないけど琴美ちゃんがものすっごく綺麗だったし、幸せそうだったから仕方がない。癪だけど、もう入籍してしまったし(でもでも、これからも変態の邪魔はしてやるのだ。なぜなら変態の幸せそうな顔を見るのはムカつくから)。


 それで琴美ちゃんに挨拶した後、進藤が家まで送ってくれるって言ったんだよね。まだ帰るには早いと思ったんだけど、未成年って押し切られたのさ。くすん。教師って頭固いから嫌だね。


 でもって琴美ちゃんにお祝いを言ったときから、何故だか涙が止まらなくなってさ。あたしは顔をぐちゃぐちゃにして、泣きまくっていたんだよね。

 涙腺が崩壊して、一生分泣いたんじゃないかってぐらい泣いた。次第にどうしてこんな状態になっているかもわからなくなってきたもん。情緒不安定。

 帰り道でもずっと泣いていて、隣で歩いている進藤が呆れた声を上げたんだ。


「田原ぁ。そろそろ泣き止め」


 言いながら、あたしにハンカチを差し出す。それで目を押さえて流れ出る涙をせき止めようとしたけど、効果なし。ハンカチが水分を吸って、重量を増しただけ。

 そんなあたしをしばらく眺めて、困り果てた進藤がこう言ったんだ。


「泣き止まないと、キスするぞ?」


 そんなことを言われても当然すんなり泣き止めるはずもないし、何の冗談かと思ったんだ。どこかのラブストーリーじゃあるまいし、あたしをからかって何の得があろうか。


 それなのに本当に進藤の顔が段々近づいてきて、軽く唇同士が触れた。そしてすぐ離れる。

 進藤のまさかの行動に、びっくりして涙が止まった。

 は? 今の柔らかいのは、進藤の唇でよろしいのか? タラコではなく?


 目を見張って、進藤を見上げる。するとひどく真剣な顔が目に飛び込んできた。

 固まったままでいるとまた顔が近づいて、唇に柔らかいものが重なった。今度はなかなか離れなくて、どう息をしたらいいのかわからなくなってすごく息苦しい。でも頭がボーっとするほど気持ちよかった。もう何も考えられなくて、ただ与えられるものに流された。


 気づいたときには縋りついて、進藤からのキスを受け入れていたのだ。しかもベロチュウまで許しているし。何度逃げようとしても確実に捕まる、舌の攻防。若葉マークが熟練者に敵うはずがないのだ。

 いや、むしろ「もっとしろ、コノヤロウ」と求めていたかも。こっちから絡めるほどに。


 うぉーい!! あたし、チューはじめてなんですけど!! それなのに貪欲に求めるってないわ。それなのに……。

 いやぁあああっ!! 恥ずかしい!! 絶対初めてなんて思われないよ。遊んでる認定!? 勘弁してっ! あたしそんな軽い女じゃないから! 身持ち固い女だから。これ、前世から変わらないから!


 脳内妄想でパニックを起こしている間に、進藤の口づけは激しくなっていく。後頭部を掴まれ、腰を引き寄せられ、肌寒い夜に進藤の体温が心地いい。それ以上に自分の体温が上昇していき、なんだか身体が火照る。変な気持ちだ。

 恐る恐る目を開けると、間近に長いまつ毛。男なのにこの長さは嫌味だ。

 小さく嫉妬していると進藤がうっすら目を開け、すぐに目を細める。うわ。この流し目、めっちゃセクシー。身体がゾクゾクした。


 ……まさかあたし、進藤に欲情してる? いや、そんなわけない。ビックリし過ぎて、身体がおかしくなっただけだ。そうに決まってる。

 とにかくこの状況から抜け出さねば。これ以上このままだと、あたし痴女になる。


 自問自答で出てきた“欲情”という言葉に動揺し、夢中であたしの唇を貪る進藤を押しやった。

 息を弾ませ、少し頬を上気させて、潤んだ瞳であたしを見下ろす進藤の姿はフェロモンしかない。目元の泣きぼくろがかなりエロッ。学校での進藤とはまるで別人みたい。

 その姿を見て、「あたしこの人とさっきまでキスしてたんだ」と思ったのがまずかった。

 身体中が羞恥で真っ赤に染まり、進藤を直視できなくなってしまった。


「……田原?」


 怪訝な様子の進藤。何か言わなきゃいけないのに、言葉が見つからない。


「あ、あの……」


 ……駄目だ。まともに話せない。こうなったら――――逃げるが勝ちっ!!


「ご、ごめんなさ――――い!!」


 あたしはくるっと進藤に背を向けて、全速力でその場から逃げ出した。


 ごめん、マジでごめん、チャラ男。

 あたしは逃げるのは嫌い。でも今は、今だけは逃げる。だってあんたとこれ以上顔を合わせていられないんだよ――――!!






 ゼェ、ゼェ、ゼェ……。あー、足が痛い……。

 ヒールの靴で全力疾走したせいで、家に着くころには足がガクガクで痛い。さらにテンパったせいで無駄に体力を消耗したようだ。あたしは珍しくヨロヨロだった。


「……ただいま」

「おかえり~。楽しかった?」

「うん、まぁ……」


 出迎えた兄に返事をすると、兄はあたしの顔をじっと見ている。視線が若干下の方にある。


「……何?」

「口、どうした?」

「口?」


 え、何よ、口って……。ま、まさか!

 もしかしたら夢中でキスしまくったせいで、唇腫れてるのかも。


「うぎゃぁああああ!」


 恥ずかしすぎて、あたしは部屋に駆け込んだ。ドアを閉め、それに寄り掛かってズルズルと床に崩れ落ちた。両手で顔を覆い、頭を振る。

 どーしよ? 兄貴にまで気づかれるとかないわ。身内のエロは嫌! 知るのも、知られるのも!


 慌ててかばんから鏡を取出し、唇を確認した。リップは取れてるけど、腫れてはいない。

 ホッとしたが、何の気なしにそのまま唇にそっと手を伸ばした。

 これに、さっきまで、進藤の唇が……。

 記憶が瞬時によみがえり、あたしは悶絶した。床にコテンとひっくり返る。

 とんでもないファーストキスだ。刺激が強すぎる。あれは大人のチューだ。あたしにはまだ早い。


 床をゴロゴロと転がっていると、ふと手の中に自分の持ち物ではないものがあることに気付いた。

 ……あ、ヤバッ。ハンカチ、持ってきちゃったよ。

 ピシッとアイロンがかかっていたのに、涙で濡れてしまったし、あたしがずっと握りしめていたから皺だらけだ。そこから進藤がつけていたコロンの香りが微かに匂う。


 ハンカチを凝視していると、何とも言えない気分になってきた。腕で目元を覆う。  

 ……さすがチャラ男。ありえないほど上手かった。さりげなく抱き寄せる感じも、顎を掴む手とか、こんなのもあるんだっていうぐらいのいろんな種類のキスとか……。伊達に場数は踏んでない感じ。


 そもそも、どうして進藤はあたしにキスしてきたんだろう。本当にあたしを泣き止ませようとして? もしくは雰囲気に呑まれて? ノリ? 冗談? でもそんなことをするような男とは思えない。


 ま、まさか進藤、あたしのこと好きなんじゃねーよな? 

 ……ないわ。ありえないわ。こんなガキンチョ、相手にするはずがない。もうロリじゃん。未成年に手を出すほど餓えているとも思えない。

 だって長年片想いしていたあの娘さん、清楚だけど大人~な感じの人だった。あたしにない色気を持っていたよ。あたしと全然違う。あたしは絶対進藤のタイプの女じゃない。この案だけは却下。断言できる。


 ――あー、やめやめ。もう考えるの、疲れた。とりあえず今日は風呂入って寝よ。


 あたしは着替えを持ってお風呂へ直行。上がったら、そのままベッドへダイブした。

 脳みそはオーバーヒート中らしく、爆睡した。






 一夜明け、あたしは家でゴロゴロしていた。だってすることないし、何もする気ないし。


 進藤の本心はわからない。訊こうにも携帯の番号は知らないし、だからと言って会いに行くのはもっと無理。気まずくて、どんな顔をして会えばいいのかわからない。

 今のあたしと進藤の関係は教師と元教え子、それだけ。もう卒業してしまったのだから、こっちから会いに行かない限り、会うことはない。

 琴美ちゃんと門倉のことがあったからあれほど近しい関係になっただけであって、普通だったらあの距離感はなかっただろう。ありえないほど近すぎたのだ。


 このままうやむやにしてしまうのも手だと思う。

 もしかしたらあたしの知らないところで、進藤は飲酒していたのかもしれない。そしたら酔った上での行動ってことで、進藤自身が覚えてないかもしれない。うん、そうかも。

 それならあたしも記憶から消去すればいいだけだし。全部なかったことにするだけ。


 でも、それでいいの? ――――もう一人の小町がそう囁く。


 いいわけない。だって大事に、大事にしてきたファーストキスだもん。

 進藤の真意は知らないけど、これでもし「悪い、ノリだった」なんて言われた日には、温厚なあたしもさすがにキレるぜ。スナパ持って闇討ち決行。やるといったらやる女だぜ。


 ……いやいや。あの進藤に限って、ノリでそんなことをするとは思えない。チャラいのは見た目だけだもん。本当は一途で、ちょっとヘタレてるんだもん。生徒想いだし、何かと気にかけてくれる素敵な先生だよ。

 元とはいえ、教え子にノリで手を付けるとは思えん。手の早いらしいチャラ~い友人さんからあたしを守るために、恋人の振りしてくれたわけだし。


 するとだよ、あたしのこと好きなの? っていう案に戻るんだよ。

 でもでも、あたしに進藤から好意を持たれる要素なんて、これっぽっちもないわけですよ。むしろ迷惑かけまくりで、問題児だったと思う。何度職員室に連行され、怒鳴られたことか。嫌気がさしてもおかしくないほどに。むしろ嫌われていてもおかしくない。


 あー……。考えれば考えるほどわからん。もう迷宮入りですわ。

 もしかしたら現代社会は、あたしが思う以上に乱れているのかもしれんな。

 若気の至り? それはヤンチャなことだけで十分。色恋沙汰でそんな経験したくないわ。


 ――――もうわからん!! 誰か、進藤に訊いてきてくれ! 事の真相を!!




小町、悩みの無限ループに陥る。

朝チュンと迷って、結局キスで落ち着きました。

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