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第八話

「……それより二人とも、まだ学校行かなくてもいいの?

 そろそろ行かないと遅刻なんじゃない?」



「「へ?」」



 おばさんに言われて、俺と丸子は時計を見てみる。時刻は遅刻ギリギリだ。



「あっちゃ~、のんびりし過ぎちまったな。

 それじゃおばさん、親父さん、俺らもう出ますんで。

 御馳走様でしたッ!」



「あ、鯉黒!

 あ、朝ごはんはお母さんが作ったけど、昨日の晩ごはんは私が作ったんだから私にも感謝の言葉くらい言いなさいよッ!」



「へいへい、丸子様、美味しいごはんをありがとうございました」



「むきー! 心が籠ってないわよ!」



「んなこと言われてもよー……というか、感謝の気持ちだなんだってのは心で感じてくんねーか?

 お前と俺の間に言葉でわざわざ感謝するってのも今更だろ?

 丸子の考えてることが俺には丸分かりなのと同じで」



「な、なななな、なに、こっぱずかしいこと言ってんのよ!」



 HAHAHA♪ 丸子をからかうのは俺のアイデンティティーって感じかな?


 何故か親父さんとおばさんが少し離れた「あらあらまぁまぁ」と眺めているのは少し恥ずかしいが。


 さってと、早く行かねぇと本当に遅刻しちまいそうだし急ぐとすっか。



「うっはははは。こりゃ遅刻間違いねぇな♪」



「ちょ、ちょっと! 朝から暑苦しい根性論者の担任の説教なんて聞きたくないわよ!!」



「ははっ、そりゃ俺も同意すっけどよ。

 まっ、仕方ねぇから丸子、お前俺の背中に乗れよ。

 俺が全力で泳ぐ方が早く着くぜ」



「なっ!!」



 いつものことだが、真っ赤になって固まる丸子。


 オレとしては遅刻をしないために至極まっとうな事を言ったつもりなんだがな。



「ほれ、それとも口の中がいいか?

 まぁ、気持ち良さに誘われて、そのまま胃の中にまで入られても困るから早いところ背中に掴まってほしいんだがな」



「わ、分かったわよ。

 遅刻するくらいならこ、鯉黒の背中にのってあげるんだからっ!」



「おいおい、耳元で怒鳴るなって……そんじゃ行くぜッ!」



 丸子を乗せて学校まで全速力で泳ぐが、考えてみれば遅刻を回避するために全力で泳ぐってのはいつ以来だろうかな。


 一人の時は流れに身を任せて泳ぐもんだから、遅刻したらしたで仕方がないと考えてるんだが、勉強は出来なくとも無遅刻無欠席の丸子のためだとついつい本気を出しちまう。


 やれやれ、俺としたことが本気を出すのが女のためだけってのはカッコ悪ぃかもしんねぇな。


 いや、逆にカッコいいのか?



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