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技術使い  作者: 中間
二章:侍と鬼山
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プロローグ

シンが暮らすグンダーラ王国から、北に向かった位置にヤマト国という島国が存在する。そこには侍という、ほかの国でいうところの騎士のような者達がいる。グンダーラ王国がある大陸が大戦だった頃、ヤマト国はいくつかの国に分かれて、戦国時代だった。それを纏めたのが、現在のヤマト国の国王、センドウ・センヤという人物だ。彼は自分の一族を率い、主に武勇を持ってヤマト国を平定した。

ヤマト国がある島には、北東に鬼系の魔物が巣くう魔窟『鬼山』が、南東には額に一本角を持つ有角族がいる。ヤマト国と有角族は不仲というわけではないが、過去に戦った間柄で、現在は国という形での交友はない。

現在のヤマト国は、何とか平和な時代を送っていた。だが、今日のヤマト国のお城は、どんよりとした空気に包まれていた。


城の中のとある一室で二人の男女が、人物画前で涙を流していた。

女の方はまだ幼く、10代前半くらいに見える。黒髪を腰まで伸ばしていて、煌びやかな和服を着ている。とても愛らしい容姿をしている。

男の方は、10代後半くらいで同じく黒い髪を短く切っている。和服を着ていて、大陸から来た眼鏡をかけている。文官のような格好をしている。

大きな絵には、泣いている男に少し野性味を持たせて、少し歳を重ねたような男が描かれていた。


「お兄様」

「兄さん」


二人の言葉からわかるように、絵の人物は二人の兄だ。そして故人でもある。死んでまだ数日しか経っていない。

佇む二人の後ろから、侍女が声をかける。


「姫様、殿下、センドウ王がお呼びです。」

「ああ、わかった」

「はい。今行きます」


二人は城中の会議室に向かった。会議室は長い長方形の和室で、襖で仕切られている。一段高くなった上座が存在して、上座から伸びる形で座布団が並び、向き合う形で二列並んでいる。座布団の数は30以上はある。上座の席と二つの席を除いて、厳ついおっさん達が座っている。姫様、殿下と呼ばれた二人は、残っている上座に一番近い座布団に座った。二人が座ったことで、上座以外に空席は無くなった。


「集まってるな」


そこに顔の右側に大きな傷を持った男が入ってきた。がっしりした体型で大太刀を腰に下げている。眼光は鋭く、雰囲気は歴戦の覇者だった。彼が入ってくると室内の厳ついおっさん達に、緊張が流れた。中には明らかに萎縮している者もいる。


「三日前、息子のキリツグが鬼どもに殺された。俺はここに浄化戦を宣言する。」


部屋がざわざわ騒がしくなる。


「ようやく奴らを叩き潰せるのですね」

「鬼なぞ我らの敵ではありません」

「・・・・・・・」


やる気満々の者もいれば、沈黙している者と色々だが、否定的な意見を口にする者は居なかった。ここにいるのは文官と武官が半々だが、ヤマト国の男は誰もが刀を帯刀しており、剣術を齧っている。キリツグは優れた武士で尊敬を集めていた。最近は文官としての仕事も手伝い、次代の王になる準備も積極的だった。次代の王になることに、ヤマト国に誰も不満を持っていなかった。

周りの反応を見たセンドウが話を続ける。


「よし、ガンリュウ、お前に前線の構築を任せる。俺は十氏族を連れてオオヤシマに入る。ここは息子のケイジに任せる。ケイジ、お前は後方支援をしながら、他国に協力を頼めろ。有角種のことは、マイに任せる。」

「「「御意!」」」


臣下が肯定の意を示すと、ガンリュウと呼ばれた厳つい男がセンドウに意見を手を上げた。


「なんだ?」

「王よ。有角族をどうするおつもりで?私は有角族の所為で王子が死んだと聞いたのですが」

「関係ない。それにキリツグは有角族との融和を目指していた。キリツグを理由に有角族と戦うことは断じて許さん」

「・・・・・わかりました」


ガンリュウもそれ以上は言わなかったが、室内には納得していない者いるようだった。

キリツグは有角族に幾人か知り合いがいて交流を持っていた。だが、首都には有角族を呼ぶことができない。そのためキリツグが国境近くまで出向いていた。そこに鬼が攻め込んできたのだ。そして応戦した際、有角族を守ってキリツグは命を落とした。

ヤマト国内には元々有角族を嫌っていた者が多い。有角種の所為でキリツグが死んだと、本気で思っている者もいるのだろう。

その後、センドウ達は軍議に移っていった。

有角族への対処を任されたマイは、キリツグの元側近だった。そのためキリツグ繋がりで有角族と交流がある。マイはキリツグが死ぬ時、別件で他所に居たため、咎められなかった。

マイはそれほど高い身分や功績を持っているわけではない。ただ有角族への対応を任せられる者が他にいなかっただけなのだ。なので役職は与えられても、分不相応と考え軍議には深く入っていかなかった。

それにマイは軍議より第二王子のケイジや、その隣の姫のことを気になっていた。二人の様子は暗く沈んでいた。

ヤマト国は大きな転機を迎えていた。だが、マイは自分にできることが無いことを痛感していた。


「こんな時、シンさんが居てくれたら。」


マイは昔の仲間の雷使いのことを口にした。



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