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技術使い  作者: 中間
一章:技術使いと元王女
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エピローグ

ガーラ伯爵を撃退して、プリムがキルマイア王国からの脅威から解放されてから数日が経った頃、シンはギルド2階の客間で昼寝をしていた。家をガーラ伯爵に吹き飛ばされたシンとプリムは、ギルドに厄介になっていた。宿無しになった次の日に、山小屋があったところに行き、地下から金貨300枚を回収した。時間がなかったのか、それとも気付かなかったのか、まったくの手付かずだった。

その内、交渉の時に借りた金貨150枚をギルドに渡したたので、手元には金貨が150枚と少しが残った。

一生働かなくて何とかなる金は残っているし、当面の敵を排除したシンは、毎日食って寝るだけの生活に戻っていた。

お昼を回った頃に、プリムが部屋にやって来た。


「兄さん、もうお昼ですよ。起きてください。」


プリムがそう言いながら右手を両手で握ってきた。


「『不別の指輪』のリセットもしましょう」


元々シンは、ゴロゴロしていただけで、眠っていたわけではないので、半分寝ているようなものでもあったが意識はあった。爆発タイマーをリセットするために、手を繋いで『不別の指輪』に魔力を注いだ。

最近、爆発タイマーのリセットの回数が増えている気がする。具体的には一日に二回ぐらい。まあ、リセットに使う魔力は微々たるものなので大した問題はないか、とシンは結論付けて、シンの手を両手で包んで幸せそうにしているプリムを見た。


「もういいんじゃないか?」

「あっ、はい。そうですね」


プリムが少し残念そうにシンの手を離した。


「おやすみ」


シンがもう一度寝ようとすると、そこにサリナが入ってきた。サリナは入室した流れで、ここ最近毎日シンに言っていることを口にする。


「シンさん、いつまで客室を占領するつもり何ですか?家を買うお金ならあるでしょう」

「いや手続きとか面倒だし、そんなことしたら金が無くなる」

「・・・・・はあ~~~、働いてください強いんですから。面倒ならプリムさんに代理で行ってもらったらどうですか?一緒に住むんですし」

「おお、それはいい。プリム頼んだ」

「わかりました。いい家を探してきますね」

「頼んだ~」


プリムとサリナが部屋を出て行くと、シンはまた横になった。

次の日の朝、またプリムとサリナが部屋にやって来た。


「兄さん、家を見に行きましょう」

「家、ああ良いのが見つかったのか」

「はい、もう買いました」

「・・・・・・買ったのか、まあいいか」


なんだか嫌な予感がしたが、気のせいだと思うことにした。シンとプリム、サリナの三人でその家を見に行くことにしなった。

それからしばらく後、シンは呆然とした様子でプリムを問い詰めていた。


「・・・・・それで何処にあるんだ?」

「目の前にありますよ」

「・・・・・目の前にあるのは屋敷だ。二人ないし三人が暮らすような家じゃない」


シン達の目の前には大きな洋館が建っていた。3階建ての屋敷で、今いる外門から玄関までに広い庭がある。部屋の数も30以上は有りそうだった。とてもじゃないが、金貨150枚で買える物じゃない。


「足りない金はどうした?」

「アルフレッドさんとライラさんのお父さんが、立て替えてくれました。無利子ですって」


無利子、俺への首輪のつもりか?


「この屋敷いくらだった?」

「え~と、金貨400枚でした」

「400枚・・・・・」


金貨250枚の借金


「どうかしましたか?」

「こんの、大馬鹿ーーーーー!」


シンが『不別の指輪』をつけられた時並みの、怒声を上げた。プリムはシンを怒らせる才能があるらしい。

それからしばらく後、往来で叱り付けるのもなんなので、三人は屋敷の一室に入っていた。


「なんでこの広さの家が必要なんだ?」

「そ、それは」

「この屋敷、誰が掃除するんだ?」

「えと、その・・・・・・ごめんなさい」


久しぶりに怒られてプリムがどんどん小さくなっていく。


「・・・・・はあ」


シンは、やっぱりプリムは元王女で、世間知らずなのだと再認識していた。山小屋が小さすぎたのだろうか。

見かねたサリナがやんわりと止めに入る。


「まあまあ、シンさんそれくらいに」

「サリナ、お前が唆したんだろう」

「えっと、その・・・・・・・はい、そうです。は、発案は父とライラさんのお父さんですよ」


認めた後に、慌ててサリナが弁解する。あの二人か、まあ金を出したのはあいつらなのだから、それはわかるが


「何が目的なんだ?」

「さ、さあ?(言えない。金貨250枚も使って花婿争奪戦だなんて、馬鹿馬鹿しすぎて言えない。)」


この状況は、数日前にサリナの父親であり、シンが所属するギルドのマスターでもあるアルフレッドと、シンに会うためにギルドを訪れたライラの父で、豪商でもあるライアンが出会い、会話の流れでお互いがシンを自分の娘の婿にと考えていることを知り、この屋敷での共同生活を考えたのだ。魔窟により人口の減っている今の時代は多夫多妻は珍しいことではない。なので、アルフレッドとライアンが反目しあうことはなく、協力関係になった。まあ、自分の娘を一番に、くらいは考えているかもしれないが。

シンの矛先がサリナに向きそうになった時、誰かが屋敷に訪れた。


「誰だよこんな時に」


玄関に向かうとそこには、大荷物を持ったライラが立っていた。


「えと、不束者ですがお世話になります。」


借金の肩代わりした片割れがライラの父親と聞いた時から、予想はしていたのだがシンを急激な疲労感が襲っていた。


「ライラ」

「ご、ごめんなさい。でも、私もシンさんと一緒がいいんです。」

「もう好きにしてくれ」

「あ、私もこのまま一緒に暮らしますからね」


サリナも山小屋に引き続き、ここで一緒に暮らすらしい。そこに、妙に仲のいいアルフレッドとライアンが屋敷にやってきた。


「やあシン君、新しい新居はどんな感じだい」


シンが『武器庫』投擲用の短剣を取り出して、無言で短剣を投げつける。それをアルフレッドが首を曲げて避けた。


「はっはっは、あぶないなあ。」

「それで何のようだ?」

「いや~お金に困っていると思って仕事を」


シンが短剣を2本投げつける。またアルフレッドが避ける。


「お前らの差し金だろうが」

「まあそうなんだけど。シン君が僕達に借金を抱えているのは事実なんだし」

「すぐにこの屋敷を売り払う」

「こんな家そうそう買い手なんかつかないよ」

「ぐっ」


シンが悔しそうに唸る。


「まあ、無利子なんだし気長にやっていこうよ。これ仕事のリストね。報酬の高いばっかだから」


アルフレッドが紙の束を玄関近くにあった棚の上に置いた。

報酬が高いのは、依頼そのもののランクも高いだろうが!シンが心中で毒づく。


「もういい、お前らは帰れ」


シンがアルフレッドとライアンを押し出そうとする。二人は押し出されながら自分達の娘にエールを送っていた。


「サリナ、まず覚悟を決めるところからだ。がんばれ」

「ライラ、積極的にいくんだぞ、積極的に」


それを最後に二人は家から追い出された。


「はあ、もういい、今日は・・・・・・・・寝る」


シンは不貞腐れて、プリムがシンのために特別に用意した、高い寝具が揃えられている寝室に引っ込んでしまった。

その夜、プリムとライラがシンの寝室を訪れて、ベットに忍び込んで同衾している中、サリナは


「無理です。恥ずかしすぎます。」


といって、一人自分の部屋で眠った。その夜、ギルドの一室


「しかし、あんな強引にしてよかったのですか?」

「きっと近い内に彼の力が必要になります。今回のは彼がこの国に留まる理由のひとつに過ぎませんよ」


ほかにも孤児院のことなど色々あるが、アルフレッドは確かな理由が欲しかった。そこに借金を持ってくるあたり、アルフレッドも商業大国であるグンダーラ王国の国民だった。まあ、やろうと思えばシンは簡単に借金なんか踏み倒すので、確かな理由にはならないのだが。


「北も西も南もきな臭くなってきましたし、この国最後の魔窟も魔物の数が増えてきていると聞きました。」


二人の男は不安そうに、だが少し楽しそうに密談に耽っていた。



 一章完


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