10話
サリナたちと別れて1人になったシンは、魔法具店を探した。一時間ほどで魔具店を見つけることができた。女性が主な客層のトリムなだけあって、魔法具も趣向を凝らしている物が多かった。アクセサリー系の魔法具が多く、手軽に魔術が使える魔符には、意味不明なヒラヒラがついていたり、イチゴ味の魔力増強薬など工夫?がされていた。
シンはあるお目当ての物を見つけ、それを買ってから宿屋に戻っていった。
日が沈み始めた頃に宿屋に戻ると、宿の店主にある場所に行くように言われた。今そこについたのだが
「ここ、だよな?」
目の前にあるお店は、この町一番の高級レストランらしい。金銭感覚のおかしいシンでも、この店の金額には躊躇する。
何かの間違いじゃないかと思い、店の入り口で立ち往生していると、店内から初老のウエイターが出てきた。
「お待ちしておりました。シン様ですね。皆様がお待ちしえおります。どうぞ中へ」
初老のウエイターに案内されて中に入る。店内に入ってすぐのところにテーブルがいくつか並んだ大きなフロアがあったが、そのフロアは素通りして奥の個室に案内された。たぶん個室のほうが値段も高いはずだ。
個室には、7人が楽しそうに談笑していた。7人?。5人は見覚えがある。一緒に行動していたサリナ、ライラ、ミュリン、ジル、プリムだ。残りの二人には、見覚えが無かったが、予想はできた。二人は、白猫の獣人の男女だったのだ。おそらくライラの親戚か何かだろう。
男の方はタキシードを着た年配の男性で、女の方は青いドレスに身を包んだ妙齢の美女だった。シンが見知らぬ二人の予想を立てていると、二人が名乗った。
「始めまして、君がシンくんだね。私はライラの父のライアンだ。」
「母のテスラです。」
「どうも」
なんで、ここにライラの両親が?真っ先にその疑問が浮かんだ。
「シンさん、こちらにどうぞ。」
シンが疑問に思っていることに気づいたライラがシンを隣に招いた。
「私から説明します。」
ライラからの説明された内容はこういうものだった。
ライラが助けてくれたお礼がしたいと言い出して、このレストランと懇意にしている両親に、レストランに口利きしてもらうために魔法具で連絡を取ったらしい。そしたら、たまたまトリムの近くに来ていた両親が、ライラの恩人に一目会ってみたいと言い出して、こんな感じになってしまったらしい。
「こんなことになってしまって申し訳ありません。」
申し訳なさそうにライラが頭を下げる。
「いや、別にいいけど」
ただ、ライアンとテスラの視線が気になっていた。二人がシンを、品定めするように見てくるのだ。
「まあまあ、あなたがライラの恩人の・・・・・」
「この若造が、ライラの・・・・・君は、『青竜の爪』のギルドメンバーだと聞いているのだが。それにしては、武器を持っていないようだが?」
テスラは微笑んでいるが、ライアンは訝しそうにシンを見る。まあ、確かにシンはパッと見では武器を持っていないように見える。こんな席を用意してくれたのだからと、『武器庫』から刀を取り出してみせる。ライアンとテスラがそれを見て驚く。特にライアンを驚き方がすごかった。席から立ち上がって眼を見開いている。
「その腕の刺青は・・・・・」
どうやら、ライアンは俺のことを知っているようだ。まあ、大戦時は、青い雷を操り、腕から武器を取り出して戦う、妙に強い子供として知られていたから、ライアンぐらいの年齢の男なら俺のことを知っていても不思議ではない。
「お父様、シンさんのことをご存知だったんですか?」
「ああ、彼は大戦終了から少ししてから、突然グンダーラ王国に現れて、いくつかの『魔窟』の浄化に手を貸してくれたんだ。その際、目覚しい成果を上げた。こんなところで会えるとは」
さっきまで訝しげだったライアンの態度が一変して、にこやかになった。ライアンが知っているのは大戦後のシンだけのようだ。大戦後は、それなりに良い子だったからな。
「昔の話だ。今は隠棲してる。」
「君の年で隠棲は無いだろう。」
「もう面倒に巻き込まれるのは嫌なんだ。できれば秘密にしてくれると助かる」
大戦を知るライアンにも分かるところがあったのだろう。シンの頼みにライアンは頷いた。
「わかった」
そこで、料理が運ばれてきた。その後も次々に料理が運ばれてきた。豪華な料理がテーブルに並び、食事が始った。高級レストランなので、どんな作法を要求されるのかと思ったが、食事は形式に拘ったものではなく、結構自由な感じで会話しながらのものになった。
「ライラの実家って何やってるんだ?」
シンの問いにライアンが答えた。
「それは私が、説明しよう。まあ、何でもやっているが、運輸を中心にやっている。」
「王に認められて、子爵の位を与えられているんですのよ。」
テスラが、凄い事を言ってきた。
「子爵・・・貴族なのか」
「私の代だけのものだがね。」
「それでもすごいだろ。それにあんたの代だけってことは、あんたの功績ってことだ。何したんだ?」
ライアンが得意気な表情を浮かべて、教えてくれた。
「ギルドと商人の仲介をしたんだよ。特に運送関係の護衛のな」
「仲介?必要なのか?といより、よくできたな」
確かに昔は復興のために物資が飛び交っていた。運送系の依頼はたくさんあっただろう。
だが商人は金のことになるとすごく面倒になる。それにギルド自体が仲介の役割があるはずだ。必要ないように感じるし、面倒そうだ。
「ああ、大戦が終わってからは、道が駄目になったりで流通の流れが変わり、魔物の生息地もかなり変わってしまった。以前の勘による見立てや、経験が役に立たなくなって、色々問題が起きた。依頼の危険度を低く見積もって、『メンバー』や商品が危険に晒されたり、過多な人員を配置して、無駄なお金を払ってトラブルになったりね。」
シンには生まれる以前の流通のことなんてわからないし、終戦後もそういう普通の依頼はあまり受けなかったから、そんなことがあったとは知らなかった。
そういうことが続いたら、ギルドに依頼しづらかっただろう。それに、昔は盗賊や魔物が今よりも多かったから、流通の流れが鈍くなり、復興が遅れたことは想像できた。
「そこで私の商会では、マニュアルのようなものを作って、ギルドと商人の間を取り持ったんだ。おかげで、流通は回復して、復興が早く進んだ。その功を当代の王様に認めてもらい子爵の位を賜ったのだ。」
シンは素直にすごいと思った。
「シンくんには、そう言う話はこなかったのかい?君なら伯爵くらいにはなれたと思うんだが」
当時の至上命題は魔窟への対策だった。シンの力は、魔窟の浄化の際に大きな助けとなった。それを知るライアンは、シンにも爵位の話が来たと予想したのだ。
「ああ、え~と」
シンが言いづらそうに言葉を濁す。
「うん?」
「ああ、まあ、いいか。話はあったんだがな・・・・・断った。」
「えっ!?な、なんでだね。」
「面倒が多そうだったからな。それにあれって、使えそうな人材を国内に引き止めるための国策だろ。爵位も受けた奴の代だけだし」
シンが王族に聞かれたら、少々危険なこと口にする。ライアンもそれは感じていたんだろう、少し言いにくそうだったが、否定はしなかった。
「ま、まあそういう側面もあったのだろうが、王なりに感謝の気持ちもあったと思うんだよ。きっと」
その後も、シンとライアンは昔話に花を咲かせた。その横では、サリナ達がシンとライアンの話についていけずに、仲間内で話していた。
「なんだか話している内容すごいですね。」
「気にするだけ、損です。」
「何言っているか、わからん」
「ジルは、バカねえ」
「ねえ、ライラがギルドに入ってるのって、さっきの仲介と関係があるの?」
「ええ、ギルドのことは知っておいて損は無いって入れられたの」
「へえ~」
こっちはこっちでワイワイやっていた。食事会は恙無く進行した。
・・・
・・・
・・・
食事が終わって、シン達が宿屋に戻っていく中、ライラは両親と共にレストランに残った。
「ライラ」
「な、なに」
「シンくんのことなんだが」
ゴクッ
ライラは、口の中の唾を呑み込んだ。父はシンさんのことを知っているようだったし、シンさんのことを賞賛もしていた。だが、シンさんには得体の知れないところがある。父のシンさんに対しての反応が気になった。
「応援するぞ。」
「ホッ」
「彼には色々あるだろうが、頑張れよ」
「早く孫が見たいわあ。ライラ、夜這いしちゃいなさいよ。」
物腰が柔らかそうに見えるテスラが、とんでもないことを言う。
「な、何言ってるの母さん!?」
「まあ、それは冗談だけど。シンさんとは、どこまでいったの?」
「・・・・・」
ライラは沈黙で応答した。
「ふふ、そんなことだと思ったわ。ちょっと工作しておいたから、頑張ってね。」
いつの間に、嫌な予感しかしなかった。
「・・・・・何をしたんですか」
「ふふふ、秘密」
母は面白そうに笑うばかりで、何をしたの教えてくれなかった。仕方なくライラは宿屋に戻っていった。宿屋に戻ると、母の言っていた工作がようやくわかった。部屋割りが変えられていたのだ。
宿の店主に案内された部屋には、入るとそこにはシンがが武器の手入れをしていた。部屋にあるのはとテーブルとイスが二つ、そしてキングサイズのベットが1つだけ。
あの人は何をしてくれてるんですか!
「ライラ?」
シンが不思議そうにライラを見る。
「いえ、その、これは」
何故か恥ずかしくなって、うまく思考が回らなくなる。突然想い人と密室に入れられても困る。部屋の入り口にいる店主に助けを求めた。
「あ、あの~部屋、間違えていませんか?」
「いいえ、こちらで間違いありません。では、これで失礼いたします。ちなみにここは防音の魔法がかけられています。」
店主が最後に余計なことを付け足して、ドアを閉めてしまった。
ガチャン
鍵を閉めたような音が聞こえた。
「えっ」
嫌な予感がしながらライラは、ドアノブに手を伸ばして回してみる。ガチャガチャ・・・・・開かない。
と、閉じ込められた~!
この部屋は中から開けるのにも鍵が必要になっていた。窓には、複雑な模様の鉄格子がはめられていて、脱出不可能だった。何なんですかこの部屋、明らかに監禁を目的に作られていますよ!
このままシンさんと二人っきりで、朝まで過ごせってことですか。
「ど、どうしましょう」
「なんか良くわからんが、出られないなら仕方ないだろう。」
こんな状況なのにシンさんの態度は平然としていた。女として意識されてない気がして、少しムッとしてしまうライラだが、すぐに同じ部屋で一夜を過ごすことに気づいて、緊張してきた。すると、シンが手入れをしていた武器を、『武器庫』に片付けて、何処からかグラスとワインをテーブルに置いた。
「さっき、お前の親が届けてくれたらしい。ライラも飲まないか?」
「・・・・・飲みます」
お酒を飲んで緊張を紛らわすことにしましょう。シンさんがグラスにワインを注いで渡してくれる。ライラがテーブルの反対側に腰掛けて、ワインに受け取り飲んだ。親の差し入れなだけあって、いいワインだった。目の前でシンさんも、ワインを飲んでいる。
「シンさんは良くお酒を飲むんですか?」
「いいや、あんまり」
「そうなんですか?」
それならどうしてお酒を?顔に出ていたのか、シンさんが疑問に答えてくれた。
「ライラが緊張しているみたいだったからな。」
私に気を遣ってくれたらしい、それが嬉しかった。
私は、好意を寄せている異性と二人っきりで、ワインを飲みながら夜を過ごしている。それも密室で防音完備。
これがすべて母の仕業だというから、恐れ入る。しかし、絶好の機会でもあるのも確かだった。プリムさんがいつも傍にいるので、シンさんと二人っきりになれる機会は意外と少ない。
ライラは思い切って、踏み込んだことを聞いた。
「シンさんには、恋人や大事な人はいますか?」
「なんだ急に」
「お願いします」
ライラは必死だった。それが伝わったのか、シンは答えた。
「・・・・・恋人はいない。大事なのはプリムかな。」
『不別の指輪』があるから、プリムが死ぬとシンも死ぬ、だから当然といえば当然だった。それにミュリンとジルとプリムの関係について聞いた後から、シンはプリムを家族のように感じ始めていたから、大事な存在だとはっきり言えた。
ライラは、プリムを羨ましく思ったのと同時に、シンに恋人がいないことに安堵もしていた。
大戦後の、人口の少ないライラ達の世代にとって、重婚や複数の女性と付き合うのはそれほど珍しくはないが、想いを寄せる人に恋人がいないのはやはり嬉しかった。
それを知ったライラは、思いを抑えられなくなった。
「あなたが好きです。」
「・・・えっ!?」
シンが驚きの声を出す。シンが答えを返す前に、ライラが慌てて言葉を続けた。
「そ、そのわたし、シンさんに迷惑かけてばかりだし、ランクも〔CC〕で釣り合わないですけど。その・・・・・わたし、シンさんの特別になりたくて、だから、その、よかったら・・・・・」
ライラは次第に顔を赤くする。これから言うことが、とても恥ずかしい内容だったのだ。そのとても恥ずかしいセリフは、母に教わったセリフだ。それを今から口にする。
「私を飼ってください!」
言った。恥ずかしくて、どうにかなってしまいそうだった。シンさんが呆気に取られている。
「か、飼う?」
「はい。仕えるみたいな感じで、従者みたいなものです。」
「な、なんだ、従者か」
「その、もし、私を飼ってくださるなら・・・・・キスしてください!」
そう言ってライラは、テーブルに手をついて体を乗り出し、目を閉じて口を突き出した。完全にキスをおねだりする姿勢だった。ここまでが母に教わった流れだった。これをしたら、大抵の男は落とせると言っていた。
シンから見てライラは、とても愛らしい女の子だ。コリっとした猫耳も柔らかい尻尾も可愛らしい。その女の子が、私を飼ってと言い、キスをおねだりしている。ライラの行動はシンの理性を破壊するのに充分な破壊力があった。
シンさんがゆっくり唇を重ねた。
唇が触れ合った瞬間、ライラの肩がピクンと震えてしまう。
そこで終わらなかった。シンさんが舌を入れたのだ。これがファーストキスだったライラには、想像できないほどの濃厚なキスになった。数分間口内を蹂躙された後、やっと開放された。きっと顔はだらしなく緩んでいただろう。
「これで、私はあなたのペット、あなたのものです。」
ライラは、自然とそう口にすることができた。
・・・
・・・
・・・
ペット宣言の後、シンとライラは一緒にベットに入っていた。ライラは、また緊張していた。実は、到着してすぐに閉じ込められたライラは、お風呂に入ることができなかった。汗臭くないだろうか?というのもあるが、一番ライラを緊張させているのは、シンの匂いに包まれていることだった。獣人のライラは、人間より少し嗅覚が鋭いので、シンの匂いをかなり意識していた。ちょっと嬉しかったりもする。
(シンさんの匂い)
「なあ、ライラ」
「ひゃい!?」
ライラがシンの匂いを楽しんでいるとシンが話しかけてきた。自分の思考を読めれたのかと錯覚して、声が裏返ってしまった。それが恥ずかしくて、さらに顔が赤くなる。シンに気にしたようすはなく、話を続けた。
「お前の罰の内容を、考えてみたんだが。」
「あっ、罰ですか」
ライラが残念そうにする。あんなことやこんなことを期待していたライラだった。
「お前から頼んできたことだろう」
シンが呆れる。
「す、すみません。私もシンさんのペットになった以上は、罰は早めに済ませたいです。私にできることなら、何でも言ってください」
「それじゃあライラ」
シンはライラにあることを耳打ちした。
「え?」
「何でもするんだろ」
その時ライラが見たシンは、とても楽しそうな表情を浮かべていた。ライラは自分がとんでもないことを約束したことに気付いた時には、もう手遅れだった。悪戯好きなシンの本領発揮だった。
・・・
・・・
・・・
それから数分後、部屋には艶かしい声が響いていた。シンはそれを楽しそうに聞いていた。
「あの、あんっ、シ、シンさん、これが、うっん、罰・・・ですか?」
この声の主は、ベッドに座ったライラだ。理由は、簡単だ。シンがライラの後ろに座って、猫耳と尻尾を同時に愛撫していたのだ。シンが白い猫の尻尾をピンッと引っ張ると
「にゃん!」
ライラが、尻尾の付け根に、小さな痛みと強い快感を感じて身体を強張らせる。その後、シンに背中を預けるようにもたれかかった。
「・・・・・はあはあ、なん、で、これが罰に」
「これなら、俺にとって楽しいし、ライラも気持ちいいし、罰にもなる。一石三鳥だ。」
ライラには、罰については良くわからなかった。身体にある変化が起こっていて、それどころではなかったのだ。
「あの、でも、何か変っ、にゃん。」
「何が、どう変なんだ?」
「そ、それは、その・・・・・」
「なに?」
「・・・・・いつもより気持ちいいんです」
「いつも?」
シンは暗にいつも自分の尻尾や耳を触っているのかと聞いていた。すっかりSのスイッチが入ってしまったらしい。慌ててライラが否定する。
「い、いえ、た、偶にです。でも、これ、ホントに、気持ちいい。それに、なんだか体が熱い、あの、これ?」
ライラが惚けた顔をシンに向ける。
「『技術使い』は、氣力と魔力を混ぜた『合力』っていうのを使うんだが。『合力』は普通の奴にとっては色々と刺激が強すぎてな。こうやって体に流し込んでやると」
「~~~~ッ!」
少し多めに『合力』をライラの体内に流すと、ライラがビクッと身体が震わせた後、シンにクタァと持たれかかる。その後、ピクピク悶え続けている。
「それはそれは気持ち良いらしくてな。身体が熱くなるらしい。すごいだろ?」
「ひゃい。しゅごいです。」
ライラは呂律が回らないほどの、快楽を感じているようだ。『合力』を流す本当の理由は別にあるのだが、それを説明するのは今度でいいだろう。今日はあまり関係が無いからな。シンが掴んでいる尻尾を両手で弄り始めた。
「にゃん、あん・・・・あの、イッたので少し休憩を」
「まだまだ、これからだぞ」
そう言うとシンは、右腕でライラの膝の下に通して抱えるように抱きしめる。ライラは、体育座りの状態で抱っこされるような状態だ。ライラは結構恥ずかしい体勢にされて、身動きも取れなくなった。
「きゃっ」
可愛らしく悲鳴をあげて、顔を手で隠す。一つ一つの反応が可愛くて、もっと苛めたくなる。
「罰にもなるって言っただろ。」
「え?」
シンは左手でライラの白い尻尾の付け根を持って下向きにピンッと引っ張る。
「あんッ!・・・あっ、にゃん・・・・・はあはあ」
続けてシンが優しい手つきで、猫耳をコリコリと揉むと、ライラが妖しい声をだす。ライラはすでに、息を切らしていたが、シンに止める様子はなかった。
「これからが本番だ」
少しずつ流し込まれていたからだろうか、なんとなくだがシンが大量の『合力』を、体内で練っているのことにライラは気づいた。あんな量を一気に流されたりしたら。
未知に対する恐怖を感じながらも、ライラの心はそれを心待ちにしていた。右手でライラの顔を横に向けると、シンはライラにキスをした。
その瞬間、シンが大量の『合力』を込めて、ライラに流し込み始めたのだ。ライラは同時に強い快感を得た。
「ーーーーーーッ」
口を塞がれているから、声はでなかったが、その代わり絶頂したのがシンにはっきりと伝わってきた。しかし、シンは『合力』を注ぐのをやめなかった。その結果、ライラは何度も絶頂することになり、イク度にライラはシンの腕の中で悶えることになった。逆にシンが、ライラの氣力と魔力を口から吸い出すこともあった。ライラの氣力と魔力はシンに吸われて少なくなり、シンが注いだ『合力』の方は多くなっていく。
そして、シンの『合力』が、ライラの氣力、魔力の総量を上回った時、ライラは本当の意味でシンに支配されたことを実感した。
それと同時に、ライラはさらなる快楽を得た。その快感は静まることが無く、『合力』を注がれる度に強くなっていく。
あまりにも強い快感に、ライラが口を離した。顔を蕩けさせて、シンに懇願する。
「・・・・・シンさん、これ以上は、もう・・・・」
「ダメ。俺ので染める。」
ライラの懇願は、逆にシンの嗜虐心を刺激した。シンは強引に唇を重ねて、今までの3倍の『合力』を流し込んだ。
「ーーーーッ」
するとライラは、ブルッと身体を震わせた後、力が抜けたようにシンに身体を預けてきた。ライラはだらしなく、口の端から涎を垂らしていた。どうやら、あまりの快感に気を失ったようだ。
シンはそれを許さず、気付けの魔法でライラを起こす。
「・・・・・あっ、シン、さん」
「続けるぞ。早く慣れろよ」
「・・・・・・・え?ま、待ってください。本当に限界、あ、あ~~~~~」
その後も、シンは『合力』がライラの身体を満たすまで、ライラに『合力』を注ぎ続けた。
日付が変わった頃、シンはベットの上に座っていた。ライラはシンの隣で丸くなって寝ている。結局『合力』を注いだだけで終わった。できれば早く『合力』に慣れてほしいものだ。そうしなければ本来の意味のほうが使えないからな。
その頭をシンが優しく撫でると、ライラが気持ち良さそうな表情を浮かべる。
「うん?」
宿の外に気配を感じた。窓に近づいて外を伺うと、黒い影が見えた。
「大物が釣れると楽なんだがなあ」
シンはその影を見て、面倒くさそうに呟いた。




