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さぷらいず

連続投稿です。



広い心で読んでくださると幸いです。

「はい、コーヒー」

良い薫りだ。

安物のインスタントだが、砂糖をたっぷり入れたコーヒーは疲れた身体にしみる。幸せだ。


「美帆の好みはこの3ヶ月でバッチリ覚えたからねー」


そう言って笑う妖怪。見た目は

少年のようだが実際はいくつなんだか。


「さぁ? 忘れちゃったよ」


とぼけた表情で羊羹を出してくる。コーヒーとの組み合わせが良いんだわ、これが。



彼は甲斐甲斐しく私の世話をしてくれる。

『覚』の能力のおかげか、その仕事っぷりはまるで熟練の執事のようだ。痒い所に手が届く。


なんでも彼はこの場所に縛りつけられているらしい。

理由を聞いたら、

「イタズラしすぎちゃった、テヘッ」

そして縛りつけられ暇になった彼は、私の世話をすることで暇を潰しているのだ。



正直、寂しい独り身生活中の私にとって話し相手ができるのは嬉しい。

しかし! 常に心の中を読まれているというのは、裸を見られているのと同じような羞恥だ。


「裸なんてとっくに見てるけどねー」


トラウマをえぐる言葉に暗い殺意が芽生える。






時間は3ヶ月前に遡る。

季節は夏、私は一人暮らしを始めるためにこの部屋へ引っ越してきた。


まだクーラーもついていない地獄のように暑い部屋の中で、慣れない引越し作業をした私はバテバテにバテて滝のような汗をかいていた。


そこで、汗を流し疲れをとろうとお風呂に入ることにしたのだ。

湯船にお湯をはり、シャワーを浴びたまでは良かった。

そして湯船の蓋を開けた。



黒いナニカが揺れていた。


コレハイッタイナンデショウ?


ナニカと目が合った、その口がニヤリと歪む。


私は気を失った。





気がつくとベッドに横になっていた。

身体を見る、ちゃんと服を着ている。

周りを見る、暗い、電気をつける...

「!?!?」


黒髪の少年が立っていた。


「あ、気が付いた?」

「.......」


な、なんですか、不法侵入ですか!? け、警察は119、、じゃない!! えと、えと........


「あのー、別に危害を加えたりとかしないから安心して」


そんなこと信じられますか!!


「そう言われても...」


あれ? 私何も言ってないのに会話が成立してる?


「うん、そうだよ」


え、なんで



「だって僕、妖怪だもん」




私はまた気を失った。







目が覚めるともう周りは明るかった。


昨日のことを思い出す...

「変な夢見たなー」


「夢じゃないよ」


...ナンデスト?


声の方に振り向くと、昨日の少年が立っていた。


「おはようー」

「...おはようございます」

「あ、やっと喋ってくれたね!」


そういえばそうだ。


「...えーと、夢じゃなかったんですか?」

「うん」


昨日のことを思い出す。


「...じゃあ、あなたは妖怪なの?」

「そうだよ、『覚』といいます」


かくかくしかじか、説明を受ける。


「......」


頬をつねる、痛い。現実だ。


「疑ってるなー、本当だよ?」


そう言われましても。


「じゃあ、なんでもいいから何か考えて」


なんでもねぇ...そういえばお腹すいたなぁ。


「あ、朝ご飯作っといたよ、食べる?」

「!?」


え、本当に!?


「だから言ってるでしょ、本当だって」

「......」


...おーけい、信じよう。人生諦めが肝心だ。


「やっと信じてくれたね! 」


満面の笑みになる少年(妖怪)。

...ちょっと可愛い。


「あれ? おねーさん、そっちのケの人?」

「!?」


断じて違う!今のはふと思っただけ...あぁああ、 私はノーマルだ!!!


「ふーん、そうなんだ?」


そうだ!


「まぁ、どっちでもいいけどねー。 あ、朝ごはん食べるでしょ、用意するね」


そういって彼はキッチンへ。


.....妖怪『覚』、なんて恐ろしい能力なんだ!




「できたよー」


私が戦慄しているうちに用意ができたらしい。


「あんまり材料なかったから、これだけしか作れなかった、ゴメンね」


いえいえ、こちらこそたいした食材もなくてすいません。


「フフ、じゃあ食べようよ」


サトリが用意してくれたのは、ご飯、味噌汁、海苔、玉子焼きだ。


「グゥー」


お腹が鳴る。よく考えたら、昨日の夜から何も食べてなかった。


「いただきます!」


がっつく。美味い。


「いただきます」


そんな私の様子を見てサトリも食べ始める。


ふと疑問に思った。


「ねぇ、妖怪も食事するの? 」


まぁ、実際今食べてるんだけど。


「ん? あぁ、基本取らなくても大丈夫なんだけど、味は分かるから食べることは好きだよ」


なるほど、美味しいモノなら食べたいよね。


「うん、そゆこと」


ほー、妖怪も人間と同じところがあるんだねー、などと思っていると別の疑問が。


「そういえば、昨日のアレはなんだったの?」

「アレは新しい住人にサプライズをと思ってね」


...うん、確かに驚いたよ。あいわずさぷらいずどだよ。気絶するほど素晴らしいサプライズだったよ!


「そう、喜んで貰えたようでなによりだよ」


ニコニコと笑う少年(妖怪)。

...なんだろう、これが殺意ってヤツなのかな?


「うーん、違うと思うよ!」


...まぁ良い、昨日の風呂での一見は忘れることにしよう。





......風呂?

そうだ、あそこは風呂場だった。そして私はシャワーを浴びた後。

当然生まれたままの姿でいたはず。

.......ということは、


「あ、昨日裸で気絶しちゃってたから、風邪引かないようにちゃんと拭いて服も着せといてあげたよ!」


天使の様な笑顔で爆弾発言する少年(妖怪)。


......ウン、コレガサツイダ。



感想・アドバイス等お待ちしております。

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