イカロスの瞳
「さぁ、これから俺はこの羽根で空へ飛び立つんだ!」
町の出口で青年は叫んでいた。
目の前に広がっているのは広大は平原と青い空。そして、燦然と光輝く太陽。
「やっとこの時を迎えることが出来たんだ!俺は…俺は必ず成し遂げてみせるぞ!太陽の元へ行ってやる!!」
自分への誓いと、目的地である太陽への誓いを新たにたて、腕を広げる。
「…イカロス」
後ろから、不安そうに声を掛けて来た恋人にイカロスは目を移した。
「大丈夫さ、必ず太陽の輝きを間近で見て、君の為に俺は帰ってこよう」
朗々と歌い上げるように、恋人へと声を掛ける。
「…ああ、イカロス…。私は…いいえ。ここで止めてはいけないのね。きっと…きっと帰って来て下さい。その真っ白な美しい羽根を羽ばたかせて」
悲しみを瞳に宿しながらも彼女はイカロスの為にその頬を涙で濡らすことはなく、真っ直ぐに彼を見上げて言う。
「ああ、必ず。必ずあの素晴らしい光を持ち帰り、君に捧げよう!」
イカロスは遂に恋人に背を向け、その真っ白な翼を広げた。
「いざ行かん!あの尊き太陽のも
「ストーーップ!!!
と…え…?」
「ストップ!待った!!照明〜!客電頂戴!!」
その言葉から少し遅れて灯りがつく。
「なんだよ、このいいタイミングでっ!!」
「今のは駄目だろ!お前、太陽に向かってくように見えない!目が死んでるから!!!」
「俺様の素晴らしい演技に対して文句つけんじゃねぇよ、演出!!」
黄色いメガホンを持ち、それを振り上げながら男は舞台の上にいる翼を付けた男を怒鳴りつけた。
背景のスクリーンに緑と青の照明のついた舞台の上でイカロス役の男も負けじと声を張る。
「じゃあお前、どうしろってんだよ!こんなもんで空飛んでくったってやる気出ねぇよ!」
そう言って彼は自らの腕に取り付けられた真っ白い紙で作られたイカロスの羽根を指差す。
「出なくても出すんだよ!いいか、ここはイカロスが恋人の前から太陽へと旅立つ重要なシーンなんだぞ!?もっと目に光を灯せ!目からビームを出す勢いで行け!!!」「んなもん出るかっ!!!」
重要なシーンなのは分かっている、分かっているが…。
なんでこの部活は舞台はちゃんとしてるのに、道具がちゃちいんだ。
「お前なら行ける、大丈夫だ自信を持て!はい、目からビーム!!」
「無茶苦茶言うな!部長のこん畜生ーーっ!!」
彼の叫びは広い広い、客席へと広がっていったのだった。
でも、書いてて結構楽しかったりなんかしちゃいました、はい。
イカロスさん、空を飛ばせて上げられなくてごめんなさい。
またこんな駄文を読んでくださった方に感謝いたします。ありがとうございました!宜しかったら感想等頂けたらとても嬉しいです。
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