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烙印戦記 ー破滅エルフと棄てられた箱庭の英雄ー   作者: 弌黑流人
箱庭の国

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第43話 反逆の軍旗

 天から降り注ぐ白銀の閃光が、逃げ惑う兵士たちのすぐ傍らで大地を爆砕させる。

 空はもはや、慈悲深い神の居所ではなかった。自分たちをただの「部品」として処理しようとする、巨大な殺意の渦だ。


「……終わりだ。使徒様が怒っておられる。俺たちは皆、ここで消されるんだ……!」


 生き残った騎士の一人が、武器を投げ出し、膝をついて天を仰いだ。だが、その絶望を切り裂くように、一際高い金属音が戦場に響き渡った。


「顔を上げろ! 絶望して首を差し出すのが、お前たちが誇った『騎士』の姿か!」


 カイルの声だった。彼は翠に輝く烙印を背負い、漆黒の大剣を掲げて、恐怖に震える兵士たちの中心へと躍り出た。その隣には、血を流しながらも不敵に笑うボルグと、影を纏い鋭い視線を放つアルヴァスが控えている。


「空の理は、今ここで一人の男の手によって断ち切られた! 見ろ、俺たちの隣には、かつて最強と呼ばれた執行官……いや、一人の人間として目覚めた男が立っている!」


 カイルが指し示した先、ヨルが折れた細剣を構え、天から降り注ぐ追撃の小規模な光弾を次々と叩き落としていた。その超人的な武勇に、兵士たちの目に驚愕と、そして微かな「熱」が灯る。


「……俺の名はヨル。あの日、お前たちと同じ地上の人間を守るために戦い、空に奪われた男だ」


 ヨルの掠れた、だが重みのある声が風に乗って広がる。


「お前たちは家畜ではない! 自分の意志で剣を握り、自分の足で未来へ進む『人間』だ! 死ぬのが怖いなら、その恐怖を空への怒りに変えろ! 俺たちの向かう先は、あの偽りの楽園の心臓部だ!」


 その言葉に、兵士たちが一人、また一人と立ち上がった。シュラインが祈りを捧げ、負傷した者たちの傷を癒していく。その聖なる光と、聖獣フェンリスの勇壮な咆哮が、人々の魂に最後の一押しを与えた。


「行くぞ! 目的地は北の果て、『昇降のバベル』だ! 天を墜とし、本当の世界を取り戻す!」


 カイルの号令と共に、即席の解放軍が動き出した。

 先頭をフェンリスが駆け抜け、カイルと澪、そしてシュライン、ボルグ、アルヴァスが兵士たちを鼓舞しながら北へと突き進む。


「……カイル、前だけを見て走れ。背後は全て、この俺が引き受ける」


 ヨルは一人、軍勢の最後尾――殿しんがりへと回った。

 空からは、地上の反乱を鎮圧せんと、さらなる天使の使徒たちの影が急降下してくる。


「数千年ぶりの『仕事』だ。今度は自分の意志で、守るべきもののために振るわせてもらうぞ」


 ヨルは黒い瞳を細め、迫り来る空の軍勢に対し、折れた細剣を正眼に構えた。


 荒野を駆けるカイルたちの背中には、初めて「自由」への明確な道筋が描かれようとしていた。


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