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烙印戦記 ー破滅エルフと棄てられた箱庭の英雄ー   作者: 弌黑流人
箱庭の国

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第42話 古の盟約と黒の血脈

 ヨルによって切り裂かれた「理の光線」が、左右の荒野を爆発させ、立ち昇る熱気と土煙が視界を遮る。頭上の雲はどろりと赤黒く変色し、まるで世界そのものが激昂しているかのように唸りを上げていた。


「カイル、伏せていろ! まだ来るぞ!」


 ボルグの怒号が響く中、ヨルは折れた細剣を構えたまま、微動だにせず空を睨み据えていた。その隣で、澪が翠の魔力の障壁を展開し、降り注ぐ光の破片を弾き飛ばす。


「……ヨル。あんた、さっき『アキ』と言ったな。それは俺の先祖の名前だ。あんたは何を知っているんだ!」


 激しい風の音に負けじと、カイルは叫んだ。ヨルは視線を空に固定したまま、地を這うような低い声で応じる。


「アキは……俺の弟だ。信じがたいだろうが、俺とあいつは数千年前、この空の向こうにある場所からやってきた。そこには魔法も、天使の使徒も、こんな歪な箱庭もない世界……鉄の鳥が空を飛び、夜でも街が太陽のように輝く場所だ」


 ヨルの言葉に、カイルの背中の烙印が、共鳴するように激しく拍動した。ヨルが語る「外の世界」。それはカイルが夢にさえ見たことのない異景だった。だが、ヨルの黒い瞳を見れば、それが真実だと魂が理解した。


「空中都市の連中……当時の四聖家は、俺たちの持っていた『概念』を欲し、俺をシステムの守護者に、アキを地上管理の『種』として引き裂いた。……カイル、お前は間違いなく、俺の弟アキの血を継ぐ子孫だ」


 ヨルは一瞬だけカイルを振り返り、その背中の文字を見つめた。


「そして、その背中にある『否』の文字。奴らがお前を『英雄失格』と断じ、屈辱と共に焼き付けたその言葉が、今や皮肉にもシステムへの絶対的な拒絶権として機能している。奴らが押し付けた不名誉こそが、この檻を壊す鍵なんだ」


「……っ。奴らが俺を否定したことが、反撃の力になるってのか……!」


 カイルは唇を噛み締め、大剣を握り直した。その時、障壁を維持していた澪が、銀色の髪を激しくなびかせながら叫んだ。


「ヨル、あなたの話した『外の世界』……私にも身に覚えがあるわ! 私も、かつてはその国で生きていた。そこで一度命を落とし、この箱庭のさらに外側……魔法と精霊が溢れる国でエルフとして転生したのよ!」


 澪の告白に、ヨルが初めて驚愕に目を見開く。

 澪はエルフとしての永い寿命を生きる中で、この世界の閉鎖的な歪みに気づき、試練を突破して介入してきたのだ。元は同じ日本人の魂を持ち、一方はシステムの一部として、一方は外部からの介入者として、この場所で邂逅した。


「エルフとして長い時を生き、私は確信したわ。ここは命が巡る場所じゃない。魂を搾取し、磨り潰すだけの残酷な檻。……元は同じ場所にいた者として、私はこの冒涜を終わらせる!」


 空の赤黒い雲が渦を巻き、さらなる大規模な粛清の予兆を見せる。ヨルは折れた細剣を強く握り直すと、カイルと澪に向かって言い放った。


「同じ故郷の魂を持つ者が、エルフとなって戻ってきたか……。いいだろう、最短でこの空の喉元を切り裂く道を教える。北だ! 雲を突き抜け、天空へと至る唯一の経路――『昇降のバベル』。そこへ走れ! 俺が殿しんがりを務める!」


 戦場の硝煙と魔力が混ざり合う中、三人の「異邦者」たちの意志が、一つの点へと収束した。


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