この間初めて「前の車追ってください」に遭遇したんだけどさ、
「珍しいな」
「珍しいでしょ」
「タクシーで、後ろの車撒いて下さい。って頼むのと同じくらい珍しいな」
「追って下さいと撒いて下さいの依頼の数は完璧に同数だからね」
「確かに」
「て言うのもね、この間カフェで友達と待ち合わせしてたのよ。」
「ほう」
「それで待ってたら後ろでドアが開く音がして、友達かと思ってパッて見たら、男の人が女の人が追いかけて出ていく所で」
「ちょっと待ったー!って?」
「結婚式に乱入する人の言いかたなのが気になるけど、大体そう」
「結婚式場のドアって、ちょっと待ったー!って言いながらだと入れるけど出られない構造してるよな」
「そんな返しみたいなの付いてるんだ。知らなかったな」
「知っておくと役立つトリビアだな。それで?」
「そしたら女の人はタクシー拾って行っちゃったんだけど、すぐにもう一人もタクシーを停めて」
「体で?」
「それ出来るのスパイダーマンだけだから」
「ちゃんと顔のマスク返してあげた?」
「だからスパイダーマンじゃないって」
「それで、そこから?」
「…前の車追ってくださいって言って、しばらく追ってたんだよ」
「ちゃんとシートベルトしてたか?」
「無理にボケようとしなくても大丈夫だから」
「会話方式で書き始めたからラリーにしないといけなくて」
「だからこの文章には地の文が無かったのか」
「…そしたら相手の運転手さんが上手いのかだんだんと距離を離されるようになってきて」
「ふむ」
「運転手さん、スピードもう少し上げられますか?って」
「身長230cm、体重140kg、はち切れんばかりの筋肉を誇らしく見せびらかしながら、男はそう問うた」
「地の文が無いのを悪用しないで…ねえさっきから何?」
「何って?」
「ふざけてるの?僕の発言にいちいち突っかかって」
「ふざけてるのはお前の方だろ」
「何が」
「お前はいつまで居るんだよ」
「...?」
「...?じゃなくてさ」
「何がおかしいの?」
「お前その人がタクシー拾ってって言った後、前の車追って、とかスピードもう少し上げられますか、とか言ってるのも見てるんだよな?」
「...?うん」
「お前タクシー相乗りしてるじゃん」
「...?何か変だった?」
「何でわかんねぇんだよ」
「ごめんけど君って高卒だったっけ?」
「IQが20違うから話が合わない訳ではねぇよ」
「…それでお前、その後どうしたの」
「しばらくしたら前の車が停車したから、ここは僕が、ってお金払って」
「お金払ってんじゃねぇよ」
「タクシー乗ったら払うでしょ」
「お前が払ってるのがおかしいんだよ」
「上座下座の話?」
「違う」
「それだったら、僕は助手席に乗ってたから大丈夫だよ」
「この流れでなんでお前が助手席なんだよ」
「僕のほうが足速いんだから当たり前だろ」
「まさかの小学生方式」
「もういいから、取り合えず続きは?」
「さっきの女の人がタクシーから出てきたから二人で追いかけて」
「その人も怖かっただろうな、いつの間にか追手が2人になってて」
「俊足を活かして僕が先に追いついて」
「上座下座の伏線を雑に回収するな」
「捕まえて、警察呼んで逮捕してもらって終わりだよ」
「よくお前その場で逮捕されなかったな、傍から見たら何故か同乗してた不審者なのに」
「足速いからね」
「罪重ねてんじゃねえよ」
「結局、その追われてた人は何で追われてたの?」
「無銭飲食だってさ」
「…お前が飲食代を払った描写が無いのが心配になってきたな」




