02,現在地、悪役令嬢モノ小説
ここは...
[ナンチャラ学園ナンチャラ(ほとんど覚えてない)]
主人公は公爵令嬢のナンチャラ。貴族学校に入学した彼女は、義理の姉に邪魔されながらも、学校で出会ったイケメンたち
(・姉の婚約者であり国の第一王子『ナンチャラ・ナンチャラ』
・義弟の『エリック・タレーラン』。
・違う公爵家の先輩『ナントカ・ナントカ』。
・クラスメイトの男友達『ナンタラ・ナンタラ』。
・みんなの憧れの生徒会長『ホニャララ・ホニャララ』
・その他隠しキャラ一名)
と恋を育む乙女ゲーム...
...に事故死して転生してしまった27歳OL(ここだけは何故か覚えている)の物語
「乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました!」
だ。
その名の通り、乙女ゲームの悪役令嬢(主人公の義理の姉)に、転生して、攻略対象者達に溺愛される、悪役令嬢令嬢モノ小説だ。簡単に言えばありふれていて、王道と言うか、つまらないと言うか、どっかからパクってきたような、そんな感じだった。
残念ながら、『エリック・タレーラン』以外のキャラの名前は覚えて無い。たしか、悪役令嬢の名前はナントカーヌだったと思う。
でも、『クリステル・シャトラン』なんて言う名前、主要人物には出てこなかった。流石に名前を言われたら思い出せるはずだ。となると、ボブキャラだろう。自分の未来がわからないとなると、この薄っすらとした知識、何に役立つのだろうか。
「クリス、聞いてる?」
もう、せっかく人が大事な事考えているっていうのに。
「まったく...。あなたの弟についてよ。名前は『アドリアン・シャトラン』。12歳よ。家族は皆な、アドって呼んでいるわ。」
同い年だ!
「弟...アドはなぜエリック様の話を?」
「エリック様は貴族界で有名だもの。剣術、勉学、容姿、爵位。どこをとっても素晴らしいお方よ。あなたの婚約者になってくだされば、一気に私は大金持ちよ!」
「私の婚約者なってくれる可能性はあるんですか?」
確か、最終的に悪役令嬢ナントカーヌと結ばれるのは、婚約者である第一王子ナントカだったはずだ。エリックは決意を決めて告白をするのだが、振られてしまう。恋愛的に見れば、チャンスはある。大金持ちになれるかもしれない。
「うちは子爵家だから、少し難しいかもしれないわ。でも、跡取りだから、王族やタレーラン公爵家よりも権力を持っている公爵家からは選ばないでしょうね。可能性は無くはないわよ。」
よくわからないけど、可能性は少しはあるってことか。あと、主人公の名前を知れるチャンスだ。
「...でも、うちは貧乏だから...。」
ナタリーがポツリと呟いた。
「貧乏なんですか?」
「ちょ、ちょっとよ、ちょっと!」
ナタリーが、慌てたように叫ぶ。
でも、すぐに気落ちしたように小声で呟きだす。
「人件費がかかるから、あなたに専属メイド1人も付けてあげれないけど...。アドに家庭教師も雇ってあげれないから、私が教えてるけど...。パーティーのたびにドレスを仕立ててあげる事も出来ないけど...ちょっと...だから...。ごめんね...もっとうちが裕福だったら...。」
ナタリーはすっかり自滅してしまい、ぼうっと空を見つめたいる。
ここまで言われると、大金持ちにしてあげたくなる。
でも、確かにちょっと貴族っぽくないけど、それだけだ。別に、生活していく上で、何も問題は無いと思う。でも、ナタリーが駄目と言うなら駄目なのだろう。
そういえば、肝心な事を聞きそびれていた。
「エリック様の義姉ってなんておっしゃるんですか?」
クリステルは、すぐに言ったことを後悔した。記憶を失っているクリステルが、エリックに義姉がいる事を知っているのはおかしい。
でも、ナタリーが反応したのはそこではなかった。
「義姉?どういう事?」
「えっ、だってエリック様は養子でしょう?」
「何を言っているの?エリック様と姉のヴァランティーヌ様はちゃんと血が繋がった御姉弟よ。何より、養子は跡取りにはなれないわ。」
どういう事だろう。確かに主人公の名前がヴァランティーヌだということは、今知ったばっかりだけれど、エリックが養子だという事は、間違いないはずだ。
「ちなみに、女性も跡取りになれないわ。」
つまり、実子のヴァランティーヌは跡取りになれない。もしかしたら、跡取りをつくるために、公爵は嘘をついているのかもしれない。または、単純に記憶が間違っているのかもしれない。
でも、公爵が嘘をついていた場合、これでヴァランティーヌを脅せば、お金持ちになれるかもしれない。又は、ヴァランティーヌは途中で乙女ゲームのシナリオと違うことに困惑するシーンが何度もある。その時、私がこそっと情報提供をして、コネを作っといてそれから...
「せっかくだから、相続権についてのお勉強をしましょうか。もうすぐ学校も始まるし。」
大事なこと考えてる時に限って...。
「いえ、結構です。...えっ、学校?」
「ええ、もう頭は大丈夫みたいだし、来週から春休みが終わるしね。」
全然大丈夫じゃない。いきなり小6(12歳)に16歳の勉強させるなんて無茶苦茶だ。クリステルは早口で捲し立てた。
「全然大丈夫じゃない!記憶ないし!だって、この国の歴史なんか知らないし、英語なんかローマ字しか書けないし、理科なんか小6のやつも覚えてないし、算数はできたけど中学から数学になって難しくなるらしいし、国語なんか漢字小6までしか...」
「わかったわ!わかったから、とりあえず落ち着いて、クリス。」
色々と「小6」とか言ってしまったが、ナタリーが何も言わないのなら、きっと聞き流されてきたのだろう。
「実力テストをしてみましょうか。」
使用人たちは、夕食の準備を始めていて、忙しそうだったので、ナタリーは自分で神とペンを取りに行った。
もうすぐ春休みが終わるということは、まだ入学していないということだろうか。はっきりとは覚えてないのが、ヴァランティーヌが転生か記憶が流れ込んでくるかして、急に性格が変わるのは、どっかの連休だったはずだ。しかし、夏休みは番外編があったので、考えにくい。
「冬休みだと良いなー。秋休みでも良いよー。春休みはやめてくれ。」
クリステルがぶつぶつ呟いてると、ナタリーが戻ってきた。紙を机に置くと、サラサラとペンを滑らせた。忘れていたが、ここは乙女ゲーム転生小説の中とはいえ、西洋風な世界なのだ。ナタリーが持ってきたのはボールペンではなく、羽ペンだった。
「テスト、できたわ。全教科一問ずつ作ってみたから、やってみなさい。」
早いな、アドリアンに勉強を教えていると言っていたし、ナタリーは頭が良いみたいだ。
①2.3x-7.1=12+5x
えっ、答えでてるじゃん。何を求めろと?
②トスリキ暦102年、起こった革命は何というか。
知らんわ!トスリキ暦って何?
③次の英文を読んで問題に答えろ。
Hello.I’m …
「何一つわかりません。」
「そ、そう...。かなりの重症ね。貴族学校中等部レベルにも満たないじゃない。」
「ちなみに私はどのレベルまで出来なきゃいけないんですか?」
「高等部レベルよ。さあ、初等部レベルの問題作ったから、やってみなさい。」
ナタリーの顔に、優しい笑みはあとかたもなく、すっかり怖い顔になっていた。




