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誰ヵ之半妖物語 平成への道のり  作者: アワイン
誰ヵ之半妖物語 助けられた僕が彼女と家族になって生きたお話
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狐のお見送り

 徳川吉宗が統治している頃、私は大きくなった良介とともに丘から町の風景を見ていた。良介の着ている着物はしっかりしたもので、商人が着るようなものだ。髷も結っている。見た目の歳は私よりも歳を食っているかもしれないな。髷を結っている相方にも見えるから、時々三代治って呼んでしまいそうになる。

 ……本当に大きくなったな。

 良介は私を見て、軽く頭を下げた。


「八一おじさん。今まで見守ってくださり、ありがとうございました」

「いいって、良介が商家に婿入りしたの見送れただけで十分だ」

「……何を返したらいいか、おじさんには本当に恩を返しきれません」

「いいや? 恩を返してもらってるよ。あと、そういうところ、君の親父さんに似ているよ」

「……えっ、そうですか?」

「そうだよ」


 私の指摘に良介は若干嬉しそうに笑う。

 良介は元服した後、商家へと働きに出た。まあ三代治やかよちゃんに似て優秀であったからか、色んな仕事を任されたらしい。ついには婿に抜擢されて婿入りをして、商家の娘と夫婦になっている。

 ここに私と良介がいるのは、本当に別れるためだ。

 たくさん三代治とかよちゃんとの思い出を語ったし、良介の家族の死についても話した。死に際については記憶を消したから本人は覚えてなくて、驚いていた。けれど、良介はこれ以上は何も言わなかった。

 良介は私達側ではなく人の世を生きると決めた。妖怪の血を引いていてもそれを発現させることがなく、人として生きると決めているからだ。

 私は空を見て微笑む。

 三代治。良介は本当に大きくなって立派な人間になっているよ。

 空を見ている私に、良介が声をかけてくる。


「八一おじさん。私はもう仕事があるのでいきますが……おじさんはどうしますか?」

「ん? 私は本部に帰るよ。もうやることはないから、しばらくはお休みかな」


 そう話していると、良介は真剣な顔になって私に言葉を向ける。


「組織については一生話しません。墓まで持っていきます」

「うん、それはありがたい」

「……けど、八一おじさんにも生きていれば、きっといいと思ういい人が現れると思います。……私はおじさんが幸せになることを願ってますからね!」


 言われて驚き、良介は私に笑顔を浮かべていた。その笑顔は間違いなく三代治とかよちゃんが浮かべるような温かいもの。

 良介は頭を下げて、別れの挨拶をして町の方へ歩いていく。

 

 ……遠くなる背中を見ながら、私はしてやられたなと笑う。


「三代治。良介は間違いなく、お前の息子だよ」


 現世にいない相方につぶやいて、私も町とは反対側に足を向けてこの場を去っていった。

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