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誰ヵ之半妖物語 平成への道のり  作者: アワイン
誰ヵ之半妖物語 助けられた僕が彼女と家族になって生きたお話
32/34

常世 幽世 三途 あの世 地獄

 目覚める。真っ暗な空間に立っていて、川が流れる音か聞こえた。ここがどこなのか。組織の半妖としての本能でわかる。あの世、だ。川が近い音からして三途なのだろう。

 そっか、僕は死んだか。僕が死んだことに、どうと思わない。

 ただかよちゃんたちが亡くなったのは。

 ……くそ。くっそ!!

 僕のせいだ。僕が至らないせいで守りきれなかった!!

 自分の首を絞めたい。頭をぶつけたい、殴りたい。憎たらしい!

 歯を噛み締めて、多くの感情から拳を強く握る。


「お疲れ様」


 背後からよく知る声が聞こえ、僕は振り返った。狩り衣の貴族の服を着た男性が立っている。僕らの上司だ。名前を呼ぼうとしても声が発せられない。

 上司は僕を見つめて、口を動かす。


「かよさんと君の子は殺されて死んだ。けど、三代治を責めてない」


 ……あれはかよちゃんのせいじゃない。僕の誤りと悪路王のせいだ。


「さっきから見ていたが、そう自分を攻める事はかよさんたちは望んでないぞ」


 ……僕の声を聞いて、上司はいう。……言われてしまえば、言えなくなる。


「判決は無慈悲なものではない。先の悪路王の件もあり、極楽行きが許された」


 この判決を聞き、僕はホッとした。

 そうか。彼女と僕達のややこは極楽いきか。胸をなでおろすと上司が困ったように笑う。


「でも、かよさんはちゃんと君と生きたいという要望でね。しかも、お前の子どもの子も同じ希望だ」


 えっ。


「その要望はかなり強く訴えられたゆえに、審査にも通ってしまってね。だから、君の後を追うように転生することになった。悪路王の件もあり特例で認められた」


 ……。


「ほっとけないそうだよ。君がまた自分を責めるから一人にしておけないって。まったく、強情で素敵な奥さんだな。三代治」


 ほっとけ、ない。一人にしておけない。僕の顔は赤くなっていると思う。……かよちゃんは本当、素敵な女性だ。

 僕の顔を見ながら、上司は微笑む。


「三代治。お前の息子の良介くんは無事だ。八一が無事助け、悪路王を倒した。その時のお前の全力が悪路王に効いたらしい。そして、お前の遺言どおりに悪路王の件については記憶を消した」


 ! 良介と八一が……!

 ああ、良介は無事だったんだ。……八一は僕の頼みも聞いてくれたのか。万感の思いがこみ上げて、目頭が熱くなる。目を押さえて顔をうつむかせる。

 八一。お前は自慢の相方だよ。……あんな役目を背負わせてごめん。


「良介くんはしばらくは組織預かりだが、1人前になったら人間社会の大人として組織の手から離れる。それでいいかな」


 手で涙を拭いながら、顔を上げて僕は首を縦に振る。良介、この先お父さんが見てやれなくてごめん。ちゃんとこの先も良介のこと、覚えている。……忘れないから。

 僕を見て、上司は咳払いをする。


「実はある方々から代表して、ある言葉を預かっているんだ」


 言葉? なんだろう。不思議に思っていると、上司が穏やかに教えてくれる。


「『よく生きた。よく励んだ。三代治、本当によくやった』

『大切なおなごと息子を懸命に守ろうとし愛したこと誇らしいですよ』とのことだ、そうだ」


 驚くしかない。だって、その言葉の代表って。上司は人差し指を立てて口に当てる。


「これ以上は聞かないように。この言葉を預かった後、匿名を希望したからな」


 泣きたくなるのを堪えるけど無理だった。

 みんな、僕の事を見守ってくれていたんだ。ボロボロと涙を流しながら、僕は唇を噛む。

 みんな、おじ様、母様。

 僕は、みんなに褒められるほどのことをしてきましたか。恩を返すのに十分な生き様を見せられましたか?

 そうであれば、嬉しいです。

 僕は袖で何度か涙を拭いながら上司を見る。声は発せられないけれど、言葉がわかるとなれば僕はあることを伝えて、しなければならない。


 たかむらさん。お願いがあります。


「おや、三代治どうした」


 地獄の彼らと協力を得て、僕を修行してください。

 僕は──自分の持つ力とすべてを強くしなきゃならない。もし、悪路王と合間見えたとき僕はそいつを簡単に殺すほどの力をつけなくてはならない。

 

 あの光景を思い出すたびに怒りが湧き上がり、憎しみが溢れ出す。今度こそ、大切なものを守るために。今度こそ、許せない奴をこの手で殺すために。

 僕は頭を下げた。


 僕を、強くしてください。


 

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