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三途の川  作者: 紅p
7/11

男と女 裏切り

「私はここから見てたの。あなたの悪行を、ずっとね……」

 徳子は話し始めた。

 その徳子の話は静かに続く。

 だが、その静かさには怒りが見え隠れしていた。

 何から話して良いのか分からないぐらいあなたの悪行は多すぎたわ。

 そうね、でも一番の悪行は、繁さんから私を奪った事かしら?」

「はっ!? お前を太牟田から奪っただと!? ちょ、く、苦しい!!」

 相模が息をしようと水面から顔を出すと、太牟田が相模の顔を覗き込んできた。

 その太牟田の顔は憎悪に満ちていた。

「そうさ、俺と、徳子は付き合ってたんだ。愛し合ってたんだ……。

 だけど、お前のおふくろが徳子の両親を金の力で脅し、無理やり俺達は別れさせられたんだ!!」

 太牟田が怒鳴ると、徳子のすすり泣く声が聞こえてきた。

「徳子!? 本当なのか?」

「ええ、そうよ……。でも、私は一生懸命あなたを愛そうとしたわ……。

 だけど、あなたは私が、治大やすゆきを身籠っている間、

ずっと、他の女の所で夜のお仕事を頑張っていたじゃない?」

「なっ!? そんな事、あるか!!」

「まあ!? この期に及んで、まだ嘘をつくの? 信じられない……。

 私が知らないとでも思ってたの? 教えてあげましょうか?

 あなたの夜のお仕事相手の名前……全てを、ねぇ?」

 そう言った徳子はぽつりぽつり一人、また一人と女性の名を呼んでいく。

 その女達の名を聞く度に、相模の顔は強張っていった。

 そんな相模に、恨みが増している徳子の話は続く。

「あなた、今のは私が治大を身籠っていた時の話……。

 だけど治大を出産した後も、彼女達と関係は続いていたでしょ?

 そして、その他にも色々な女と関係を……。

 そんな事ばかりしてるから、私が弱っている事にも気付かず、

私の死に目にも夜のお仕事を楽しめていたのでしょ?」

「その癖、徳子の葬式の時お前は如何にも、お前と、徳子の仲は良く、

最期まで看病し続けたとか、ほざいてたな?

 俺から徳子を奪った揚げ句、徳子を苦しめておいて、よく善人だったと嘘が言えたな?」

「ガバッ!! ゴボボボッ!?」

 太牟田が相模と徳子との話しに割り込んできた。

 だが、相模は水に濡れた死に装束の重さで沈みかけ、三途の川の水が口に入ってきていた。

「さあ、相模……。地獄の十王様達が、お待ちが根だ。早く、いけ」

「そうよ、龍三さん。地獄に堕ちなさい」

「ゴボブダ!??! ガブゴオ!!」

 相模が最後の力を振り絞り、二人の名を呼んだが、二人は相模から離れて行き、

相模には二人の楽しそうで幸せそうに話す声が聞こえてきた。

「さあ、徳子。一緒にいこう……」

「ええ……、繁さん。今度こそ、二人で幸せになりましょう……」

 その二人の幸せそうな声を聞くと、相模に何所からともなく力が溢れてきた。

 その力は恐ろしい事に、相模を三途の川底からはい上がらせる力となった。

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― 新着の感想 ―
え? 這い上が… やだ。怖い。
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