賽の河原の老婆と老爺 出会い
立ち止まっている相模の前にいたのは、気味の悪い老人二人組だった。
その老人達は乱れた白髪に、開けた粗末な着物姿で、白蝋のように色白く、
二人共、骨が浮き出る程痩せ細っていた。
「だ、誰だ!? お前達、何時の間にいたんだ!?」
驚いた相模は、その老人達に聞いた。
すると、老人達は、きぇっへへっへ!と気味の悪い笑いをし、互いを見た。
「爺さんや、聞きましたかえ?」
「ああ、婆さんヨ。聞いたとも」
「あたしゃ等を、誰だとさ」
「儂等を、いつの間にいたのかだとよ」
そして、その老人達は、また気味の悪い笑いをし、今度はギロリと、相模を睨んだ。
「お前さんは、ここから戻れんよ」
まずは、老婆が口を開いた。
「何故だね?」
相模は首を傾げる。
そして、老婆と話す事にした。
「何故じゃと? お前さん、自分の胸に手を置いて、よぉーく考えてみよ」
「分からない……。僕は善人だ。だから、ここには間違えて送られたんだ。
御老人、天国へ渡る橋、もしくは、船は、何所にありますか?」
相模は自身の胸に手を当て、考えた。
そして、出した答えがこれだった。
「お前さん……。本気で、それを言うとるのかえ?」
「ああ! 僕は善人だからね。嘘はつかないよ!」
相模は爽やかな笑顔で胸を張ったが、
老婆はその痩せこけた頬が際立つ程、開いた口が閉まらなかった。
すると、今度は老爺が口を開いた。
「婆さんや! 祖奴に何を言うても無駄じゃ!! 早う、祖奴の着物を剥ぎ取るんじゃ!!」
老爺の言葉を聞き、老婆は、はっとし我に返った。
「そうじゃったわい! あたしゃとした事が、この自惚れ男の戯言に耳を貸してもうた!!」
そして、老婆はまた気味の悪い笑いをし、涎を垂らし、それを拭った。
それから、いきなりその拭った手で相模の死に装束を鷲掴みにした。
「な、何をする!? 汚っ!!
うわっ!? しかも、臭っ!!」
相模は抵抗した。
だが、老婆は痩せ細った体からは考えられない怪力で相模の死に装束を握り、離さなかった。
そして、老婆はそのまま相模の死に装束を脱がそうとした。
「離せ! 何をするんだ!?」
抵抗する相模。
その相模の脳裏に、ある事が浮かんだ。