走馬灯劇場 終焉
相模と徳子との縁談の裏話。
それは、相模の母と祖父との話で明らかになった。
「お父様、本当にありがとうございました」
「なに、可愛い真純の為だ」
「まあ、お父様ったら!」
「かかかっ。これで、龍三も落ち着くだろう。
しかし、どこまで手が焼けるのやら……」
「申し訳ありません、お父様」
「いいんじゃ、いいんじゃ。龍三のような者は早く身を固め、他所で叩かれた方がいいんじゃよ」
「大丈夫でしょうか? 今までは相模家の後ろ盾に、私達の後ろ盾。
この二つに、おんぶにだっこでしたのよ……」
「じゃから、そのように堕落した者は我らと関りがない所へ行ってもらうんじゃよ」
要は、相模は厄介払いだったのである。
相模は祖父の息が掛った企業、高田三共へ捨てられていただけだったのだ。
相模が信じ難い真実を目の当たりにしていると、カラカラとまたフィルムが回る音が聞えて来る。
そして、相模の走馬灯劇場は相模の高田三共のサラリーマン時代へと移った。
ここでも相模は陰口を叩かれていたが、相模はそれに全く気付いていなかった。
さらに、ある優しさにも全く気付いていなかったのだ。
その優しさというのは、高田三共の社長である高田 義信 の優しさだ。
高田は相模の祖父への恩義もあったが、それを除外し、相模を庇い育てていた。
そんな事とは露知らず、相模は自分の力だけで出世したと勘違いし、
揚げ句の果てに高田三共の有望な人材を連れ、自分の会社を立ち上げたのだ。
その結果、高田三共は人材不足に陥り、高田は心労によりこの世を去ってしまった。
相模がその事実を知り、藻掻く事を止めても音を立てフィルムは無情にも進む。
そして、次に映し出された相模の走馬灯劇場は、
相模が立ち上げた会社 相模グループの場面だった。
そう、相模は自身が有望と思った人材は是が非でも獲得し、不要と思えば即、首を切っていた。
そうやって相模に振り回された人々の嘆きと恨みに満ちた声が、
じわりじわりと、相模の周りに集まって来た。
そして、その声はまるで砥いだばかりの包丁のように次々と鋭く、相模の体中に刺さっていく。
さらに、耳からはいった声は相模の耳の中で暴れ、中から相模を抉っり出した。
それは耳だけでなく、目も抉り、その痛みは鼻にまで広がった。
耐えがたい激痛を相模は声に出し少しでも緩和させようとしたが、ここは、三途の川の底。
それは叶わなかった。
全身が激痛で全く動けなくなってしまった相模の耳に、また、あの声が聞こえてくる。
「爺さんや。まだかいな?」
「婆さんや。もうちょい待つんじゃ。無駄に長生きしとるからに、フィルムが一つじゃ足りんのよ」
もう、止めてくれ……。
そう相模が望んでも、カラカラとフィルムが回る音が響く。
そして、相模は見えなかったが、相模の走馬灯劇場はフィナーレを迎え、相模の葬式となった。
暗い中、参列者の声が聞こえて来る。
だが、誰一人として泣いている者はいない。
寧ろ、相模が死んで喜んでいる声が多く聞かれた。
その中で一際大きな声で喜んでいたのは、何と、息子である 治大だった。
「やっと、くたばってくれたぜ!! これで、相模グループは全て俺のもんだ!!
親父、死んでくれてありがとよ! まあ、遅えぐらいだがな!」
治大のその言葉は、相模の心臓を抉った。
そして参列者の笑い声の中、相模は意識を失った。
「あらら……。 じゃぁから、ここを渡ってはいかんと忠告したといいうのに。
爺さんや、少々、厳しかったかいな?」
「そうじゃな、婆さん。こやつ、さらに罪を重ね負ったに……。
じゃぁが! ここからじゃよ?」
「きぇっへへ! 爺さん、そうじゃったなぁ……」
「きぇっへへ! ああ、そうじゃとも。まだまだ、ここからじゃて……」
そんな奪衣婆達の楽しそうな声が聞えた気がした。
それから相模はあまりの凍える寒さに目を覚ました。
だが、相模は視力を失っており、目の前が真っ暗だった。
そんな暗闇の中でも、相模は暖かいものを感じた。
地獄に仏とは、この事だ!
相模は体を温めるべく、その方に近づいた。
しかし、それは地獄の煮えたぎっている窯だった。
たじろぐ相模に、何人もの声が聞こえて来る。
「ほほぅ……。これは、稀に見ぬ悪人じゃな」
「せやなぁ……。舌が何枚あるんじゃろうなぁ?」
「まあ、抜き買いがあるというもんだろう」
「じゃが、少しは改心したから自ら窯の前まで来たのでは?」
「かもしれぬが、ドロドロのあれを飲ませないかんのでな」
「その前に剃刀で肉を切り裂かなくてはいけないよ」
「さぁて、どんな詫びを入れるのかね?」
「入れる間もなく舌をぶっさすさ!」
「これは頼もしいのう……」
「さて、そこの重罪人よ。何年これが続くと思うかね?」
その後、相模は地獄の鬼に連行され、そして、天文学的な年月の間、地獄の拷問を受け続けた。
永遠に終わる事のない時間の挟間で相模は何を思ったのか。
誰も知る余地はない。
まずは、ここまでのお付き合いに感謝します!
そして、評価、ブックマーク、数々のリアクション、本当にありがとうございました!
色々と聞いた話で作った、私、紅pにとっての初めてのホラー作品。
所々、笑ってしまう場面が多かったと思いますが、如何でしたか?
ちなみに、私、初めて三途の川の渡り方を聞かれて、
足首までの深さの川を渡る!と答えました☆
それは、●●年前の事……。
で、では、今は、どうなっているのでしょう!?
にゃははぁん♪
それでは、またのホラーの機会があればお会いしましょう! by 紅p☆




