死ねばもろとも
月に着陸している宇宙船の乗員たちがモニターに映る惑星を眺めながら、歓喜の声を上げていた。
「青くて綺麗な惑星だな」
「ああ、水も豊富にある」
「それに知的生物は存在するようだが俺たちと違い、恒星間飛行ができる程には文明が進んではいないようだ」
「最高指導者様に報告するから母星を呼び出せ」
モニターに映し出された最高指導者に宇宙船の艦長はこの星の事を報告する。
報告を聞き終えた最高指導者は次の命令を艦長に与えた。
「知的生物を駆除しろ!」
「畏まりました」
モニターから最高指導者の姿が消えると艦長は部下に指示を与える。
「何時ものように隕石に偽装したミサイルで、病原菌をプレゼントしてやれ」
「分かりました」
それは世界各地の首都を含む大都市から始まった。
屋外にいた人たちが突然、身体中を撫で回すようにしながら狂ったように叫び始める。
「熱いー!」
「身体が焼けるー!」
「助けてー! 身体が 燃えるー!」
何事かと突然叫び出した人たちを眺めている人たちの前で、叫び声を上げていた人たちの身体が次々とボンっという音と共に炸裂し塵になった。
その塵を浴びた周りの人たちもまた同じように「身体が焼けるー!」などと叫び、身体が炸裂し塵に変わる。
それを離れたところ眺めていた人たちはその場から少しでも遠ざかろうと、四方八方に走り出した。
だがその行為を嘲笑うように四方八方に逃げ出した人たちもまた、逃げた場所で次々と炸裂する。
世界各地の大都市から始まった人間の炸裂は次第に地方に拡散していく。
世界中のあちらこちらで貧富の差無く、身分の上下無く、老若男女の区別無く次々と人間が炸裂していった。
屋外の人間が次々と炸裂するのを屋内で目撃した人たちの一部は、核シェルターなど隔離されたところに逃げ込む。
だがそれさえ無駄であった。
逃げ込んだ核シェルターなど隔離されている場所の中で、人々は次々と炸裂する。
一緒に核シェルターに逃げ込んだボディーガードが炸裂するのを見たある独裁国の独裁者は、これを敵対する大国からの攻撃だと受けとめ執務室のデスクの引き出しの中のボタンを炸裂する寸前に押した。
宇宙船内でモニターに映る知的生物が次々と炸裂する様子を顔に笑みを浮かべ眺めていた宇宙人たちは、地表で突然起きた爆発を見て笑みを浮かべていた顔を引きつらせる。
核爆発は1度で終わらず地表や空中で次々と連続して爆発する。
地球人を抹殺して地球侵略を企んだ宇宙人は知らなかった、核兵器を所有していた各国の指導者たちは万が一何らかの理由により政府や軍が機能しなくなった時の事を考え、自国領土内に核攻撃を受けた事を感知すると自動的に大陸間弾道ミサイルが発射され、海中に潜む弾道ミサイル搭載潜水艦に報復ミサイル発射指令が出されるようにしていた事を。
そのため敵対する大国からの攻撃だと受けとめた独裁者が死ぬ直前に押したボタンにより発射された、数十発の大陸間弾道ミサイルを自動的に感知した敵対していた大国は、即座に保有する全ての大陸間弾道ミサイルを独裁国だけで無く敵対していた全ての国に向けて発射した。
その結果、大国が敵対していた大陸間弾道ミサイル保有国全てが自国に核ミサイルを撃ち込んた大国だけで無く、大国の同盟国や目障りだった全ての国々に向けて自動的に大陸間弾道ミサイルを発射する。
宇宙人の攻撃を発端として、第三次世界大戦が止める者が存在しないまま勃発したのであった。