2話
太陽が燦燦と降り注ぐ白い砂浜にひとり、黒いスーツ姿で瓶のコーラを傾ける男。
「美味い!」
関白 次郎は爽快な笑顔を浮かべながら言った。
「刺激的な喉越し、鼻に抜ける香り、やっぱりコーラは世界最高の飲み物だ。美味すぎる!」
「急にどうしたんだ、さっきまでとは人が変わったみたいに声が大きくなってるぞ」
少し嫌な顔をしながら黒猫が言う。
「コーラだよコーラ!これを飲んでしまったら俺は冷静ではいられなくなるんだ。前世で嫌なことがあった時はいつもこいつが助けてくれた。こいつが一緒にいたから俺は頑張ってこれたんだ」
さらに瓶を傾け喉に流し込む。
「泣いてないか?」
呆れた顔をされているがそんなのは関係ない。とにかくコーラが美味すぎる。
「泣くに決まってるさ。まさか異世界に来てもコーラが呑めるなんて思わなかった。前世で受けたストレスがまさか役に立つなんて思わなかったよ、嗚呼、女神様ありがとうございます、本当にありがとうございます」
「せっかくお前に似合う服を選んでやったのに、それに関してはほとんど反応なしか」
ため息をつく猫。
「いや、そんなことないよ嬉しいよ」
呑み終わったコーラの瓶を名残惜しそうに見つめながら言う。
「最初はなんでスーツなんだろうって思ってたんだけど、意外と着心地がいいんだよねこれ、すごく動きやすいしさ」
「そりゃあそうだ。なにせ魔法の効果を付与しているからな」
「魔法の効果?そんな話は聞いてないんだけど」
「言ってないからな」
そう言いながら顔をそむけた。どうやら拗ねているようだ。口は悪いけどかわいいところがあるじゃないか。
「聞きたいな。この黒いスーツにどんな効果があるのか教えてよ」
どうやら目の前にいる黒猫、ジョンはスーツについて語りたいらしいコーラを飲んでいる間はその事しか考えられなかったが、ようやく冷静になってきた。
「そんなことよりあれを見ろ」
黒くて丸い手の示す方を見ると船。
「ええ!?」
大きな木造の帆船がこっちに向かって進んできている。
「もしかして海賊?!」
帆に髑髏の模様が書かれているわけではないのだけど、なぜかそう思った。漫画に出て来るような明るくて楽しい海賊じゃない、マジの方の海賊は危険すぎる。
「もしそうだとしたらお前はすぐに殺されるだろうな」
ジョンという名の猫はあっさり言った。
「なんでさ!女神様は「ストレスファイターRX」という能力は使いようによっては素晴らしく強力な力となりますって言ってたんだ。海賊になんか負けないでしょ!?」
「使いようによっては、だろ?」
「?」
「お前はただストレスを服とコーラに変換しただけだ。戦いの準備なんか何ひとつしていないじゃないか」
「そういうことか!」
「あの画面を呼び出して能力を見てみれば、自分がどれだけ弱いかははっきり分かるだろうさ」
「オープン!」
目の前の空中にスマホくらいの大きさのカラフルな画面が表示された。
左上には「関白 次郎」という自分の名前が表示され、その下にはスピード、パワー、スタミナ、技術、魔力の項目、そして右側には誕生日、身長、体重の情報が記載されている。
「全部Gだ」
スピード、パワー、スタミナ、技術、魔力の隣には青文字の「G」が全てにおいて寄り添っている。
「ちなみにGっていうのは………」
「最低評価だ」
「やっぱりか!」
この画面の作りは大好きな野球ゲームの選手育成でよく見たもの。「G」というのは救いようのないくらいの弱点だった。
「こんなんじゃ海賊になんか勝てないよ、スピードもスタミナも無いから逃げることだってできやしない」
「だから言っただろう」
「そんな冷静に言ってないで助けてよ」
「もちろんそのつもりだ。私とてお前にすぐに死なれてしまったのでは困るからな」
「へ?」
「お前の「ストレスファイターRX」とかいう能力は今までに受けたストレスを変換することが出来る。それはもちろんステータスに対しても同様だ」
「つまりステータスをアップすることが出来るってこと!?」
「そういうことだ」
「それなら今すぐ準備を始めよう。手伝ってくれよジョン」
船は刻一刻と島に向かって近づいていた。




