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13話

 


「どうしようかな………」


 雑踏の中を立ちすくむ関白 次郎が言った。


「相変わらずの馬鹿面だな」


 肩掛け鞄の中から黒猫が顔を出した。


「やるべきことが多すぎて何から手を出したらいいのか分からないんだ。宿を手配した方がいいだろうし、風呂にも入りたいし、替えの下着も買った方が良い、とりあえずは冒険者になりたいから、薬とか地図とか、いやいや、その前にまずはギルドで登録をしなくちゃいけないな………」


「優先順位をつけて必要なものから一つづつ潰していけばいいんだ」


「うーん、さすがはジョンだよ頭良い人が言いそうなこと言うよね。けど俺みたいなやつがそう言われても、何が優先なのかが分からないんだ」


 苦笑いを浮かべる。


「無能だな」


「そんなこと今まで100回以上言われてきたから、言われたところで傷ついたりしないよ」


「フン!」


 金色の目をした猫が鼻を鳴らした。どうやら俺の煮え切らない態度にイライラしているらしい。


 けどどんなに悪口を言われたところで、人ごみの中を歩くのが嫌だからと、鞄の中から顔を出している猫に言われても怒る気にはならない。


「だったら私が決めてやろう」


「え!?」


「このままここで立ち尽くしていても時間の無駄だ。私は他人がチンタラしているのを見ると無性に腹が立ってくる性質なのだ」


「それじゃあジョンに決めてもらおうかな」


 ジョンがいないと女神様から授かった「ストレスファイターRX」を使うことは難しい。だからあまりイライラさせてしまって、どこかにいかれてしまっては困る。ここは大人しく言うことを聞くのがいいだろう。


「ちっ、プライドを持てプライドを」


 舌打ちされた。どちらにせよ怒られる運命だったらしい。


「まあいいか、まずその前にそこらで暇そうにしている奴に金を渡して案内役をやってもらおう。いくら私でも着たことのない街の地理まで把握していないからな」


「なるほど、それはいいアイディアだな」


「お前も少しは頭を使った方が良いぞ」


 金色の目がちょっと怖い。


「そうだね、その通りだよ。確かに前世ではもっと考えて行動しておけばよかったと何回も思った、そうすればもっとましな人生を過ごせていたってね。ジョンの言う通りだ、これからはちゃんと考えるようにするよ」


「お前といると頭が変になりそうだ」


「よく言われる」


「それでは案内役に丁度良さそうな奴を………」


 黒い猫が金色の目で探し始めてすぐの時。


「街の案内だったら俺が出来るよ!」


 いつの間にか近くにいた汚い格好をしたこともが元気よく言った。


「どうやら話を聞いていたようだな」


「うん聞いてた!最初は鞄の中に猫が入ってるよって思ってびっくりしてみてたんだけど、今度はしゃべり出したからさ、俺そんなの初めて見たから、すげーって思ってずっと見てたんだ」


「そうか、名前はなんという?」


「オノノって言うんだ」


 オノノは髪の毛が2色に分かれているという初めて見る髪色をしている。格好は汚れていてずっと笑顔なので一見頭が悪そうに見えるのだけど、その目にはどこか深みが感じられる。


「こいつはなかなか面白そうなやつだな」


 どうやらジョンは気に入ったらしい。


「それじゃあオノノ、案内を頼めるかい?」


「もっちろん!どこに行きたいの?」


 きらきらとした笑顔で聞く少年の目線の先にいるのは猫。ああ、頭のいい子だな。さっきの会話を聞いていただけで誰に話を聞くのが良いのかすっかり分かっているらしい。


 今までの人生で年下に指示されてきたことハンドもあったのだけどついには猫にまで指示されるくらいに無能だという事が判明してしまったのだ。


 悲しくてちょっと笑える。


「まず最初は奴隷商に連れていってくれ」


 黒猫が言った。




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