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ひっそりと消える

作者: 夕

 私は東京の片隅の小さなアパートで、ひっそりと一人きりで生活をしている女です。

 ある晩、私は不気味な夢にうなされました。目の前に黒い髪を垂らした女性の姿があって、彼女は私に何かを語りかけようとしましたが、私はその夢から逃げるように目を覚ましました。

 その翌日、街を歩いていると、夢に出てきた女性と瓜二つの女性を見かけました。私は彼女に話しかけてみましたが、彼女は私を無視して立ち去りました。

 その後、私はその女性が住んでいるアパートを突き止めました。彼女の部屋の前に立つと、不思議な気配を感じました。何度もドアをノックしましたが、返事はありませんでした。

 そこで私は決心をし、彼女の部屋に侵入することにしました。ドアノブを捻ると鍵は掛かっていませんでした。部屋に入ると彼女の姿はどこにもありません。

 私は彼女がどこに行ったのかと探し始めました。部屋の中を見渡すと、彼女が寝ているであろうベッドの下に黒いノートがありました。ノートを手に取ると、中には古びた写真や手紙が詰まっていました。

 手紙を読むと、彼女の先祖が悲惨な運命を辿ったことが分かりました。それは、彼女の先祖がこの世の者ではない存在と契約し、その代償として家族を犠牲にしてしまったというものでした。

 その手紙には更に驚愕の内容が書かれていました。彼女の先祖は、その存在から贈られた黒い髪飾りを代々受け継いでいて、その髪飾りを身につけた女性は、やがてその存在に呼ばれて消えてしまうのだというのです。

 私は、その時初めて気がつきました。彼女が黒い髪飾りをつけていたことに。そして、同じものが私の髪にも付いていることに。

 不気味な雰囲気が部屋中に充満してきました。その時、ベッドの下から、あの夢に出てきた黒い髪を垂らした女性が現れました。

「あなたは、私たちの家族を滅ぼした存在の末裔だ」と女性は言いました。

 私は怯えながら、彼女の言葉に聞き入りました。

「あなたも、私たちと同じ運命を辿るのよ。嫌ならその髪飾りを外しなさい」

 私は必死に髪飾りを外そうとしましたが、何度やっても外れませんでした。女性は、私の悲鳴を聞きもせず、部屋から消え去っていきました。

 私は一人、そのアパートに住み続けました。彼女の言葉通り、私もまた消えてしまう運命なのでしょうか。

 今でも、夜な夜な黒い髪を垂らした女性がベッドの下から顔を出すことがあります。

 彼女は私が消えていないか確認しにきているようです。

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