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かみかくし

作者: 弐兎月 冬夜

昭和の初期のころの話。 田舎の裕福な家に育った曾祖母が体験した少しばかり奇妙な話です。

曾祖母が子供のころ、一緒に遊んでいた近所の子が突然姿を消しました。三日立っても見つからず、人々は『神隠しにあったのだろう。』と噂をしていました。そんなある晩の事・・・。

 これは私の母が祖母から聞いた話。

 私の母の祖母は、さる田舎の、とある旧家の生まれだったそうで、それは広い屋敷に住んでいたんだそうです。相当に裕福だったらしく、屋敷の中には大きな木製のラジオと柱時計があったそうです。そしてあまりに広い敷地だったものですから、近所の子供たちが曾祖母の家によく遊びに来て、鬼ごっこやかくれんぼなんかをしていたのだそうです。


 ところがある日。

かくれんぼをしていた子供たちの中の、まーちゃんという子がいなくなってしまいました。大人たちは夜中まで探したのですが、一向に見つかりません。

 それから三日が過ぎても、その子は見つからなかったのです。人々は『神隠しにあったのだ。』と噂していました。


 まーちゃんがいなくなって4日目の夜。曾祖母は尿意をもよおして夜中に起きたそうです。

 曾祖母の寝ていた部屋から御手水(おちょうず)までは長い廊下を行かねばならず、真っ暗な家の中を行くのは大人でも気味が良いものではありませんでした。

 それでもさすがに慣れたもので、曾祖母は真っ暗な家の中を手探りで御手水に行き、用を足して戻る途中の事でした。

 真っ暗なはずなのに、廊下の片隅から仄かな灯りが漏れているのに気づいたそうです。

 不審に思った曾祖母が、灯りの方へ行ってみると、大きな木製のラジオの電源がついていたのだそうです。『こんな夜中に誰が点けたのだろう?』曾祖母は不審に思いながらもラジオの方へと向かいました。柱時計の振り子の音が、異様に大きく響いていたのが忘れられなかったと言ったそうです。

 そして、ラジオに近づくにつれ、どこからか しくしく しくしく と女の子のすすり泣くような声が聞こえたのだそうです。

 曾祖母は全身に鳥肌が立つのを感じたそうですが、怖いもの見たさというものでしょうか、曾祖母も怖いながらも恐る恐るラジオの方に近寄って行ったと言います。

 そしてラジオの前に立つと、やはりスピーカーの中からすすり泣く声が聞こえていたのでした。

≪・・・た・・すけ・・て・・・・。≫

 曾祖母は恐ろしさのあまり、その場に卒倒してしまいました。


 翌朝、曾祖母の母親から『廊下で眠るとははしたない。』と大そう怒られたのだとか。


 五日後、まーちゃんは幸いなことに隣村のお堂の中で見つかったそうです。どうして隣村のお堂の中にいたのか? かくれんぼをしていたはずなのに自分がどこにいたのか? それすらも覚えてはいなかったそうです。


 ネットで前に、(たしか九州の方だったように記憶しているが)おばあちゃんの話として、書かれていた怪談を模した物です。因みに盗作と言う訳ではないと思いますが、神隠しの話はほぼ同じだったように記憶しています。今回はラジオがお題だったので、ラジオから助けを呼ぶというような形をとりましたが、本当は柘植義春氏の漫画にあるように柱時計の中に子供がいるというような感じに仕上げたかったです。ラジオの中にいると言うと、あの当時の真空管ラジオの大きさから言って、可能かもとは思いましたが、なんとなく別の話になりそうで、やめにしました。

 ついでと言っては何ですが、この話は全くの創作です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 語り口調のテンポがよく、とてもするすると読めました。読ませていただき有り難うございました。
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