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人喰少年  作者: SR
first season
2/23

第1話 人喰い

「ここら辺か」

若い女の声が聞こえる。昼間だというのにこの森は光を通さず薄暗い。

「えっ~っと、あぁっ。あれか。」

女は辺りを見渡し何かを見つけたように頷く。

そこには煙を上げ、フロントガラスが粉々になった白い車が停まっていた。

はぁ。というため息と共にポケットからタバコを取り出し咥える。

一息つくと共に口から煙が吹く。

薄暗い辺りにはタバコの赤色が目立ち、女の背丈や格好がわかるほどに。


ブーブー。ピチッとしたジーンズが震える。

「もーしーもーしー」

腑抜けた声が1人響く。

「ちょっ!?桜花さん!?何処にいるんですか!?」

こちらもまた若い女の声。しかしこちらの方が声がが少し高い。

「うるさっ!お前の声キーキーするんだよ!」

そういいスマホを遠ざけて再び耳元に戻す。


「んでっ?何?」

「何?じゃないですよ!また、単独行動ですか!」

「だってここに人喰いが出たって……」

「貴女に出撃命令出してないですよ!もおっ!」

「こんな事するから9番隊に誰も入らないんですよ!」

「私は別に部下なんかいらねえの!1人で十分過ぎるわ!」


はぁ。というため息がオペレーターから漏れる。

全くこの人は…。という呆れからくるため息であろう。


「それで?私を怒るためだけの電話か?だったら、切るぞ」

「あぁっ!ちょっと待ってください!」

慌てたようにオペレーターが呼び止める。

「今日、新入隊員の入隊日じゃないですか?」

「あ?あぁ、そうだったな」

「9番隊志望の子が1人いるみたいなんで、面会お願……」

「マジで!?ホントに!?よっしゃぁぁあ!!」

「何でそんなに喜んでるんですか……部下いらないんじゃ……」

「今すぐ片付けて帰るからその子ストックしといて!!」


「あぁ、あともう一つ……」

プープー。電話の切れる音が耳に響く。

「あぁ!もう!何なのあの人!」

「今回の敵……中々レートが高いから……大丈夫かな……」


さてと。という声が薄暗い森に響く。

スマホをポケットに戻し、咥えているタバコを一度離し、煙を吹いた後に再び口元へと戻す。

ジーンズの狭いポケットに両手を突っ込み、黄金色のエンブレムが描かれているジャケットをなびかせ1歩目を踏み出す。

途端!背後から恐ろしい程の殺気と何かに見られているような感覚が全身を襲う!


「どぉぉおじょぉおおぉ」

そんな雄叫びと共に緊迫した状態から一気に何かが距離を積めてくる!


「出たな。轢き逃げ野郎。」

低い声を轟かし後ろを振り向くと共に、自慢の右足で腰から上辺りを接触さし蹴り飛ばす!

ドンッ!という大きな音と共に大きな大木に吹き飛ばされたその”何か”はもはや、人間の原型は止めていなかった。


「気持ち悪りぃな……」

そんな声が出るのも無理はないくらいに、醜くおぞましい姿がそこにはあった。

皮膚という皮膚が膨張を起こし、ブクブクに膨れ上がった顔面と大きな目が二つ。

「お前……何人喰ったんだ……」

「早めに殺っとかないと、犠牲者が増えちまう…」


「どぉぉおじょぉおお!!」

そんなに雄叫びと共に再びこちらに向かってくる。

足が溶けてないはずだが、それでもそれなりのスピードでその醜くおぞましい顔を近付けてくる。


「普通の人ならここで逃げるの一択だが……」

「私は、お前らをぶっ殺す組織の人間だ。」

「私らが、お前らに素手で挑むと思うか……?」

「才能と呼ばれる能力を使う事が出来る。」

「見てろ……私の才能(能力)はな……」


そう言うと、足元にある木の枝を拾う。

何のためかはわからない。そんな木の枝が戦いに役立つ訳がないはずだろうと。


「どぉぉおじょぉおお」

ふと見上げると、もう既に顔もとまでに迫っていた。顔面からは大きな口を開き、その口は人間を喰らう用の口だ。

そして今まさに人間を喰らう瞬間だった--


拾った木の枝を左手に持ち替え腰を深く落とす…。

「薙刀」

そう呟くと、左手に持った木の枝がみるみると形を替え、背の丈以上の大きな鉄の薙刀へと変貌を遂げる。

そして、間髪いれず薙刀を左の片手で下から斜め上へと切り上げる。


「どおおしよおおぉぉぉぉおおおおお」

大きな声が響き渡ると共に、怪物からはとてつもない量の血が切れ傷から噴き出す。


「オーバーキルしてやんよ。」

そういい、今度は血のついた切った薙刀を地面に突き刺し、今度は小石を天高く放り投げた

と同時に空中へとジャンプする。


「大切断」

ポツリと呟いたその言葉と共に空中から山のように巨大な欧州風の剣が物凄いスピードで落ちてくる。


怪物は雄叫びを上げる隙も無くその巨大な剣によって一刀両断された。

辺りの木々は風圧によってなぎ倒され、地面が粉々に崩れると共に辺り一帯に砂ぼこりが舞う。


スタンと女は地面に軽く降りるように空中から戻る。

薙刀と大きな剣にそれぞれ触れると、どちらも前の形に。つまり、小石と木の枝に戻った。


「私の才能はな、触れた物を自由自在に武器に出来る才能なんだよ」

「って、人喰いに言っても言葉通じねぇしわかんねぇよな」


そういい、怪物の方へとトコトコと歩き出す。地面には巨大な剣の後が残されており、真ん中には面影が無くなった怪物がまっぷたつに倒れていた。

怪物からは、黒色の煙が登り、みるみるとおぞましい肌が溶けて無くなっていく。

「……」


女は無言で近付き、手を合わし、祈りを捧げる。

怪物の姿が完全に溶け、無くなった時には、その場を既に後にしていた--











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