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人喰少年  作者: SR
first season
1/23

第0話 プロローグ

「信号が青になったら渡りましょうね」

「はーい!ママ!」

幼き女の子の声と小柄な女性の声が聞こえる。

田んぼばかりで何もない田舎道。唯一あるのはこの信号くらいだろう。

車は通ってはいないが、律儀に待ちつづける親子。


「チッ……これじゃ時間に間に合わねぇ!」

「もっと飛ばすか……!」

一台の車が大きなエンジン音と共にやって来る。

その白いスポーツカーはというと、おそらく一般道路でありながらも80キロは出ているであろう。


「青になったし、渡ろっか」

「はーい!ママー!」

お人形のように小さな女の子が手を上げチョンチョンと横断歩道を渡ろうとする。

それにつられ、母親も後ろから様子を見ながら歩き出す。我が子が大好きでたまらないのだろう、笑顔を絶やさず幼子を後ろから見つめる。

そして、その時だった--


「あっっつ!ちーちゃん!待っ……!!」

母親が手を伸ばした時には既に遅かった。

一瞬何が起きたか分からなかった。気付いた時には、その小さな体が目の前から数十メートル先まで吹き飛ばされていた。

顔の原型は止めてなく、見るに絶えない無惨な光景だった。

「おっ……うっっ……」

酷い嗚咽と共に出る大量の涙。

そして、後ろには、煙を上げフロントガラスが粉々になったスポーツカー。

「ちーちゃん!ちーちゃん!ちーちゃん!……ちーちゃん……!」

何度も名前を呼ぶが、意味の無いことなんて分かっている。正常な判断が出来ない。頭が追い付かない。ただひたすら名前を呼ぶしかなかった。


後ろからキュルルルルという音。何かと思い後ろを振り向くと車がそこにはなかった。


「やべぇぇ!!やべぇぇって!人生終わるって!!」

「はぁ!はぁ!はぁ!どうしようどうしようどうしよう」

「どぉおしよどおおしよおお」

「どぉぉおじよぉぉお」

男の顔は溶けて歪に変形していた。ブクブクと腫れ上がった目に、膨張した額は耐えきれず血が吹き出していた。


ストレス。不安。怒り。憎しみ。嫉妬。

それらをまとめて負の感情と呼ぶ。

人間に過度な負の感情が一気になだれ込むと、自我を失い、周りを食い散らかす怪物へと変貌を遂げる。

人々はこの怪物を

”人喰い”と呼ぶ--


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