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8  ■■■■の■■



 まさに、妖艶を思わせる女が立っていた。


 美しい真っ黒に染まった髪は悪魔を彷彿とさせ、それに対比するような白い肌と白いローブは神聖なる魔法使いの証。


 最高で最低で最善で最悪の予言者、マーリン。


 今世紀最大の胡散臭い救世主がつい現れた。



「というわけで私復活ぅ!復活記念としてお姉さん頑張っちゃうぞーバリバリ!」


「マーリンさん!無事蘇ったんですね!」


「蘇ってはないよ」


「へ?」


「正確には私は死なない。というか死ねないの方が正しいかな。夢魔っていってね、普通の生物じゃあないんだ。頭をぶち抜かれようが全身がもげようが、時間さえあれば復活する。復活するはずなんだが………どうしてか、鉛玉一発分の傷穴にやけに手間を取られてしまってね。この前撃たれた時も眠たくなってきて落っこちゃったし」


「……………………はぁ」


「というか勘違いしてもらっちゃあ困るけど、いくらアスクレピオスの杖とはいえド素人の弟子二号が死者を蘇らせるとか、ないない」



 何だかなんとも言えない気持ちだ。せっかく助けてやったのに、何だその言い草は。もうちょっと褒めてくれたっていいじゃんこちとら命賭けてやったんやぞ!


 というか、何それ。マーリンさんって人間じゃないの?よくハリウッド映画とかで見る不死身モンスターなのデ○ドプールなの!?



 いやいやいや、今はこんなことしてる場合じゃない。今は…………




「き、貴様ぁ………何故、だ」


「お前私が夢魔だって知らなかったの?知らなかったのに攻撃仕掛けたのか。戦闘っつーのは戦う前から始まってる、いかに相手の情報を知り得てるかが重要なのだよワトソン君」


「夢魔……だと!?あり得ない、ならば貴様は………」


「ご明察ー。あのマーリンさんですよ。さぁ御託は済んだことだし、君を今から拘束する。大丈夫ちょっと拷問とか催眠とか受けて貰うだけでいいからーね?」




 悪魔みたいな笑顔を輝かせるマーリンさん。


 完全に鬼畜の所業だが、今は白マスクの身柄を確保することが第一優先だ。こいつからは色々聞き出したいことが山ほどある。



「待て待て待て待て!何勝手に話進めてんだよ!助けてくれたのはありがたいけど、こっからは警察の仕事なの。彼の身柄は、責任を持って我々警察が預からせて貰うからね」


「ちょっと待って下さいよ幹也さん!とりあえず、とりあえず一旦私達に譲ってください!少し、少しだけでいいから………」


「駄目」


「お願いします!」


「駄目」


「お願い………します?」


「君の上目遣いなんて誰得だよ駄目だ」


「テメェ今現役JKの上目遣いを誰得と言ったか!喧嘩売ってんなら買うぞこら。コーヒー飲んでたら突然破裂して手を火傷する現象を起こしてやろうか!」


「地味だし辞めろ!髪を引っ張るな!公務執行妨害で逮捕するぞ!」


「あ、卑怯ですよ国の力!マーリンさんからも何か言ってやってくだ………………あ」


「ん?」



 さっきまでそこにいたマーリンさんの姿が見当たらない。というか、あの白マスクの姿もない。


 

「「逃げられた……………」」





########






 中年と少女の騒がしい声が下から聞こえる。


 逃げた………と思っているようだが、実はすぐ傍のビルの屋上にいまーす。見上げればすぐに見つかるのにね。まぁ、遠くに行くのも面倒くさいし、このままでいっか。



「………さーてさてさてさて。大丈夫、殺しはしないよ。君の返答次第だけどね?」


「……………この、拘束を解け」


「解けと言われて解くやつがあるか。まず一つ、質問だ。お前、いや、お前達は何者だ?お前達が魔法使いを世界中から消したのは分かってる。…………何故、どうやって、何のために………話せ」


「話せと言われて話すやつがあるか、間抜けめ。ふっふっふ」


「…………ちっ。じゃあ、無理矢理にでも」




 私は男の顔を鷲摑みにし、ちょいちょいっと魔法をかける。ずばり、催眠魔法。一時的な物だが、相手の脳に干渉し理性を狂わせることが出来る。


 何でもかんでもやらせれるほど催眠魔法は便利じゃないが、単純な命令なら実行させることができる。




「クエスチョン!君は何者ですか?」


「私の名前は佐藤敬。年齢45歳、出身地は香川県…………

 

「あー違う違う違うストップストップ。あー…………君はなんで私を襲った?」


「―――■■■■の■■からの生き残りの魔法使いを駆除すべく、追っていた」



 こいつ、今なんて言った?

 理解が追い付かなかったのではなく、そのまんま、何と発音したのかが分からなかったのだ。

  

 恐らくこうやって睡眠をかけられて秘密を露呈されることに対しての対策だろう。特定の単語や秘密に関係する単語は喋れないようになっている。



「これは■■■■の意思である。我々は■■■■様と■■■様の命令を………うぐっ!?はぁ、はぁ、わ、私は……」



 ちっ。最後まで言い切る前に催眠を解きやがったか。大した精神力だモブのクセに。もう一回催眠魔法を………と思ったが、こいつは無理そうだ。今完全にこいつの意識はバッキバキに目覚めてやがる。


 もう一度かけてもすぐに解かれるのがオチだ。だが、まだまだ情報が足りない。何もかもが、だ。…………今の話で、少しだけ予想がついたが、まだ足りない。


 一旦気絶させて、次に目覚めて寝惚けてる時に催眠魔法をかけるか。



 杖で腹をつついて気を失わせようとした瞬間、横から謎の気配があった。咄嗟に警戒態勢をとり、身構える。



「誰だ。…………どこにいる。こいつらの仲間か?仲間だよなぁ。こいつの口封じか?それとも複数人で襲いかかって私を倒そうって魂胆か?やめとけやめとけ、そんなんじゃ私は殺せないよ」




 静寂が続く。


 返答は無し………と。つまり、私にまとめてやられるっことでいいんだよなー?………と思ったが、それは得策じゃないな。また同じことが起こる気がするし、周りに被害に及ぼすのはよろしくない。



 なら、とる選択肢はただ一つ。



「にーげるだよー!スモーキー!」


「―――――!!!」


「させるか!!」



 簡易結界発動、銃弾を全て防ぐ。そして手早く男を回収……………あれぇ。いない、いないぞ?馬鹿な、私の気配感知にも引っかからずに背後に回るとは。恐らく手練れの忍者か暗殺者か何かだろう。



 よく見ると、人影がもう一つの人影を背負って建物の屋根を飛び跳ねてる姿が見えた。あれか、そこまで距離は離れてないな。この距離なら転移で………


と、次の瞬間。

プシューーーー!と足元に転がった缶が回転しながら煙を吹き出した。一瞬で目の前の視界が塞がり、煙が鼻や口に吸い込まれると


「ゲホッ、ゲホッ!ゲホッ!な、何これ!?目が痛い喉痛え肌痒い!?私がこんな感覚を覚えるなんてあり得ない………!ゲホッ、ゲホッ!!」


 謎の煙に思わぬ攻撃を食らっている間、ついには人影は全て消え去り、奴らの追跡は不可能となった。



「……………クソ、クソ!なんなんだあいつら?私の再生を遅延させたり、こんなこすい攻撃してきたり………ケッ!」


苛立ちと共にすっからかんになった缶を蹴り飛ばす。そしたら、缶とは別の硬い感覚がつま先に伝わった。


「ん?」


蹴り飛ばした缶よりも速く走り、野球の守備の如くキャッチ。掌を開いて確認してみると、



「……………何じゃこりゃ」




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