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日本編30  やっぱテストってクソだお



「ひゃっはぁぁぁぁぁぁ!!!風がやばーい寒ーい!?」


「これは楽ちんねー。涼しいし」



 ただ今氷の道を爆走中です!ジェットコースター並の速度が出てる!!風圧で顔が!寒風で顔が!!??


 何故こうなったかと言うと、数分前に遡る。氷の道の仕掛けを解こうとした私達は、思考を重ねてある仮説に辿り着いた。この氷の道は、『魔力が一定量含まれてる物の摩擦をゼロにする』仕掛けがあるんじゃないか、と。


 白亜が作ったアイスピックやレゴブロックは、一見ただのアイスピックとレゴブロックだが、『写世うつしよ』と呼ばれる複製魔法で作った魔力の塊だ。


 に、対し私のスマホや靴はなんてことのないただのスマホと靴。魔力なんて、一ミクロンも含まれてない。



 この二つの差はこれだと思う。結論づけるには少々証拠や実験が足りない気がするが、私達には時間がない。そうして白亜が作ったのが今私達が乗っているこれ。ソリだ。


 白亜のお得意な氷魔法でサンタさんが乗ってそうな大きめのソリをつくり、『念動力サイコキネシス』で一気にドカンと飛ばす。あとは摩擦ゼロの等速直線運動に任せてすすむだけ。多少の空気抵抗くらいはその度に『念動力サイコキネシス』で調整すればいい。



 くははははははははは!!見たかマーリンさん、私達だってやればできるんじゃい!!




「けど寒い……風がヤバいってこれ」


「私は涼しいけどね」


「だから白亜の体感温度は当てにならないって。ううぅ……カイロとか持ってくればよかった」


「そういえば今どのくらいの位置にいるのかしら。スタートしたから結構経つけれど」



 太陽はもう既に南を過ぎ去っている。要するにお昼時は過ぎたわけだ。

 流石にこれだけ時間が経ってれば、本州の真ん中辺りにはいそうだけど………。それでもまだ半分いってないくらいだ。ショートカットとかないかなー………それとももっと工夫する必要があるのかな。



 すると、ぎゅるるるーと腹の虫が突然鳴き始めた。時間のことを意識するとどうにも腹が減る。今日の朝食とか食パン一枚やぞこちとら。



「お腹空いたー!白亜なにか食べるもの持ってない?」


「なにかあったかしら………あ、チョコならあったわよ。一緒に食べましょ」


「お、まじ。食べるー。ありがとう。……………!?!?」


「……………ぷぷ、ま、魔里………顔………!!」


「苦いぃぃ………!!??何これ!?」


「カカオ百パーセントのチョコよ。アハハハハ!おかしい!」


「随分渋い物食べてるね………いやまぁ、くれたもんだからちゃんと食べますよ。というか、白亜も随分イタズラ好きになったものだね。昔のいい子ちゃんはどこ行ったのやら」


「昔のいい子の白亜は死んだわ。魔里が殺してくれたもの」


「…………は、恥ずかしいからやめてよそういうこと言うの」


「ふふ、ごめんなさい」



 クスクスと、謝る気のない笑み。まぁ可愛いから許す!


 そんなこんなでソリで爆走すること一時間ほど。目の前に今までとは違う風景が見えた。不思議に思った私は念動力サイコキネシスでブレーキをかけ、爆走するソリを止める。



「………なんだこれ」


「魔法陣?」



 氷の道から飛び出したスペースに並べられた、『赤』 『青』 『黄』 『緑』 『紫』 『白』 『黒』 のインクで描かれた魔法陣。その横にはそのその色に合わせたインクと筆が置いてある。しかもこれらの魔法陣は全て『書きかけ』である。不完全な未完成品だ。



「見て魔里、これ」


「ん?」



 白亜が指差すのは道の先。なんと氷の壁で塞がれている。そこにはこんな事が書かれた紙が一枚貼られていた。


『未完成の魔法陣を完成させ、それらを組み合わせてこの氷を溶かせ。なお、全ての魔法陣を使うとは限らない』



 何これ急に数学の問題になった?ワターシスウガクキライデース!クタバレ!


 マーリンさんあの野郎、本当に学校のテストみたいなことしてきやがって!魔法陣とか、魔法使いなら誰でも知ってるレベルの魔法陣もろくに覚えてないんやぞこちとら!



「ふん!こんなもん、ぶっ壊して進めばいい!おりゃ!!」


「あ、魔里それは―――」


「あばばばばばばばばばばばばばばばばばば!?!?!?」


「『追記。無理に壊そうとすると電撃が走るから』って」


「早く言ってくれ………………」




 えー、こほん。気を取り直してレッツシンキング。マーリンさんのことだから時間以内に終わらせないと地面こおりが沈むとかいうシステムがありそうとは思ったが、そんなことはなかった。ゆっくり、冷静に考えていこう。


 とはいえ、素人魔法使いの私達にとってこの程度の魔法陣でも手こずる。しかも未完成なのだからもっと分からない。ここは逆から考えていこう。



 氷を溶かす。その為に必要なことをなんだろう。考えられるとしたら、やはり炎だろうか。氷を『破壊する』とか『消す』とかじゃなく、わざわざ『溶かす』と表現したあたり炎と考えるべきだ。ちょっと考えすぎかもしれんが。


 

 次に炎をつくる為の魔法陣を考える。そこでヒントとなるのは………



「やっぱ色かしらね」


「だね」



 色は『赤』、『青』、『黄』、『緑』、『紫』、『白』、『黒』。これは魔力の性質を表している。魔力と一概に言っても、細かく分けると7つの性質を持つものに分類される。それらの性質を組み合わせ、混ぜ方を工夫し、量を調節し、そして術式が完成する。



 炎を生み出す為に必要な魔力は、熱に関する『赤』が重要だろう。炎は体内で『赤』の魔力を練り上げ、外に放出する際に大気の酸素、つまり『空間』に作用する『白』の魔力で酸素繋げて、ただの熱を炎へと変える。


 これらの動作は、文面にすると手順が多いように見えるが実際のところは大したこと無い(魔法が使えない私には分からないけど!)。


 だがこれを魔法陣にして描けと言われると首を捻る。



「魔法陣は複雑な術式を視覚化したものだからなぁ………単純な熱だけを出すとなるとどうなってるんだか」


「熱だけなら、多分マール書いてチョンくらいだと思うのだけれど………この書きかけの状態からどうすればいいのかしら」


「「うーん………………」」





########



数時間後……………




「「や、やっとできた……………」」



 かれこれ数時間くらい悩み続けた。思いついたものを一つ一つ試して、あーでもないこーでもないを繰り返した。そして答えはというと…………



「そもそもこの書きかけの魔法陣自体がブラフとか……性格悪すぎるだろ!!」


「流石に性格悪いわ師匠………」



 書きかけの魔法陣を完成させる。のではない。そもそもこの魔法陣自体炎を生み出すのに全く関係がなかったのだ。中身のぐちゃぐちゃを一旦消して、そこにあるインクと筆でマール書いてチョンで熱を生み出し、白のインクで空間と繋げてやれば勝手に炎が出るのだ。


 ふざけやがってぇ!!めちゃくちゃ疲れたぞ……………!あのクソ夢魔、これ渡りきったらマジで本気でぶん殴る!

 ていうか今何時だ!?もう日沈んでんじゃねぇか!!


 ポケットからスマホを取り出し時刻を確認する。スクリーンに映るのは5時50分の文字。残りあと12時間とちょっと。あとどのくらい距離あるんだ………?あ、スマホあるから現在地調べればいいか。



「…………………………」


「魔里?どうしたの?」


「白亜………まだ京都も過ぎてないで………」


「急ぎましょう!!!」



 そうしてまた爆速ソリを走らせるのだった………。またこういうのがなければいいけど。




######




「あったよなんだよこれぇもぉう!!」



 太陽が沈み、ただでさえなかった温もりが消え去った夜の風に耐え、ソリを走らせること1時間ほど。まーた違った風景が見えてきた。今度は街の公園くらいある円状の広場だ。


 そしてとっても怪しいのが……………




「まーた魔法陣だよ」


「けど今度は1個しかないわね?」



 さっきの魔法陣達とは打って変わって、結構大きめの魔法陣。半径5メートルくらいある。円の中身はよー分からん。


 道の先はまた氷で塞がれていて進むことができない。かと言って辺りを見渡しても前回のような指示が書かれた紙もない。はてさてどうしましょう。



「しかしこの魔法陣の形、どっかで見たようなことがあるような………ないような………?」


「んー、あ!思い出したわ!これ召喚陣よ召喚陣!古本きょうかしょに書かれてあったのとそっくりだわ」


「マジかよ。よく覚えてるね」


「これでも記憶力は良い方なのよ」



 えっへん、とちょっと自慢げに胸を張る白亜。可愛い。

 しかし召喚陣がぽつんとあるだけで、一体どうしろというのだ。まさかこれで悪魔とか天使とかでも召喚しろと?詠唱っている?



「――――やっと来たかお前達。待ちくたびれたぞ」


「あ!?その声は!?」


「あら、師匠」


「お疲れー。ここまで来るのに随分かかったなー、ちゃんと勉強してたのか?それとも体力がまだ足りなかったか?―――おっと!?」


「お、の、れクソ夢魔!なんて性格の悪いことしやがって………!!殴らせろ、マジで一発殴らせろ!どうせどっか吹っ飛んでも元に戻るでしょ!」


「いきなり殴りかかってくるな!それでも師匠に対する態度かお前、まったく………白亜、そいつ押さえつけといて」


「うがぁぁぁぁぁ!!離して白亜、こいつはマジでぶん殴るのぉぉぉぉ!!」


「落ち着いて魔里。師匠はあとで『氷の剣(クロケル)』で腐らせとくから落ち着いて」


「…………しれっとぶん殴るよりエグいこと言わなかった?」


「ヒエッ、うちの弟子達怖い…………」



 ふぅ、なんか白亜の言葉で肝が冷えたせいか落ち着いた。ぶん殴るより超能力で内側から捻じ切るとかの方がいいな。



「ところで師匠。師匠がいるってことはもうここがゴールなのかしら?陸はまだ全然見えないけれど」


「あぁそれな。んいや、まだまだだぞ。私がここにいるのはお前達の様子見と、アレ(・・)のスイッチを入れに来たってとこかな」



 そう言ってマーリンさんは例の召喚陣を指差す。スイッチを入れに来た……つまり、アレから何か呼び出すってことか。


 マーリンさんは召喚陣に近づくと、中心に手を当てブツブツと詠唱を唱え始めた。すると召喚陣が赤黒く光り、ビリビリッ!と空間の圧が変わったのを肌で感じる。



「おーいポチ、出番だぞー」


「ま、マーリンさん……何を呼び出したんですか?ポチ?」 

 

「よし、今からお前達にはこいつと戦ってもらう。思考・知識テストの後は戦闘テストだ。まぁ殺さないように指示はしてあるけど、それ以外だったらなんでもしてくる狂犬だから気をつけてなー」


「ちょ、え!?」


「んじゃ頑張れよー」



 ニヤニヤと腹立つ笑みを浮かべながら飛び去ってしまった。あのクソ夢魔、今からでも遅くないここからでも内側からぶっ殺してやる!!


 

「魔里!何かヤバいのが来るわよ!」


「!?」



 召喚陣から禍々しい色をした煙が吹き出る。

 グルルルルルルと、獣の唸り声がした。それもつ。人一人簡単に踏み潰してしまいそうなほどの足、全てを切り裂く鋭い爪、岩をも噛み砕く牙、逆立つ闇の如き黒毛。


 トゲドゲがくっついた首輪を身に付け、その赤い瞳は私達人間を下等生物と見下す。



「……マジかよ」


「グルルルルルル」「グルルルルルル」「グルルルルルル」



「「「ガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」」」




 三つ首の巨大犬、地獄の番犬ことケルベロスがその姿を現した。






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