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日本編28  魔法は大変だぁ……

如月視点



 ドッカァァァァァァン!!!!  


 開幕から爆発で始まりましたよえぇなんて日だ!!即オチ2コマもびっくりな爆発速度!もはや何も映ってない!


「ケホッ、ケホッ、ケホッ!………うぅ、また失敗したわ。ポーション作りってなんでこんな難しいのかしら。魔里はどう?」


「待って、今集中してるから………ふしゅー、ふしゅー、ふしゅー!いける!今度こそいけ………あ」



 ドッカァァァァァァン!!!!


 二回目の爆発です。顔面からもろ喰らいました。前が見えねぇ。



「うぇっふ、ゲホッ、ゲホッ!!…………これで通算何度目?」

 

「これで13回目よ。もう材料もあんまり残ってないわね」


「マジか。ポーション作りって、もっとこうシチューをつくるみたいな感覚で出来るのかと思ってた。あまりにも精密な動作を求めすぎだろ」



 私達がいるのは世界のどこかにある例の訓練島。私と白亜しろあはポーション作りの為に、永遠と壺の中身の液体をかき混ぜていた。  


 ポーションとは、いわば魔力がふんだんに込められた飲み薬の総称だ。ポーションには様々な種類があり、肉体の傷を癒す効果、一週間寝なくても大丈夫になる効果、ムッキムキになれる効果、状態異常を治す効果、透明になれる効果などなど。


 ポーションの基本的な作り方はとっても簡単。調合素材を鍋とか壺とかにぶち込み、完成するまで加熱し続けるだけ。隠し味は、魔法で生み出した水を使うことです☆



 ………だが、このとっても単純な作業が非常に難しい。先程のように、かき混ぜるのが下手くそだとすぐ爆発する。調合素材もmgミリグラム単位でミスると爆発するし、素材の質が悪いと爆発する。


 失敗するのはまだいいとして、毎度毎度爆発するのだけはやめてくれませんかね………



「うぉーい、弟子共ー順調かー」


「あ、マーリンさん。これマジ無理です、一生完成できる気がしません。というか完成する前に爆発で死にます」


「師匠。何かコツとかありませんか?お手本とかでもいいです」


「んぁ?お手本?しゃーねーな。ちょっと壺かせい。いいか、まず回復のポーションにおいて大切なのは…………」



 慣れた手つきで作業しつつ、丁寧な解説を残していく。なんかあまりの手際の良さにキ○ーピー3分クッキングでも見てるような感じだ。


 白亜はふむ、ふむ、なるほどとメモをとっている。あぁぁ学習意識の差が出てる開いちゃってる。私もノートにまとめとくか………



「んで、かき混ぜるコツだが。ここが一番重要だ。回復のポーションは、その需要の高さから数々の魔法使い達が改良を重ねてきた。そのおかげでかき混ぜ方はゆっくりと綺麗に回すだけにまで進化した。だがこれが…………」



 コツを説明しつつ、ゆっくりと綺麗なマルを描いてかき混ぜる。一見簡単そうに見えて、その手の動きは非常に繊細。あとは見て覚えろと言わんばかりに無言になった。


 …………ふーむ、しかしこの人やっぱ黙ってれば美人だよな。属性としてはお姉さん系に近いから、それっぽい表情で黙っていれば男女構わずイチコロだろう。


「………あっ、そう言えば弟子」


「え?あ、はい何ですか?」


「忘れてたけどお前にお客さんが来てたぞ」


「お客さん?」




######




 お客さんって誰だろうか。マーリンさんがお客さんって言うから鏡史郎ではないだろうし………かと言って私に知り合いなんて他にいないし。家族からも来るなんて連絡はない。誰だ?


 私はマーリンさんお手製のどこでもドアモドキの転移ドアを通って家に戻り、玄関のドアを開ける。



「はーいお待たせしましたー。どちら様?………って凩さんじゃないですか」


「こんにちは。えと、今日は例の件のお礼に来たの。私に出来ることはあまりないけど………、如月さん、ありがとうございました」


「あぁーいえいえ別にいいんですよそれくらい。困ったときは助け合いです」(まぁ半ば強制だったけどな)


「そ、そう?ありがとう。これ、つまらないものだけど」


 

 そう言って、見るからに高級そうな包装に包まれた箱をくれた。



「高級和菓子よ。よかったらさっきの人と一緒に食べてちょうだい」


「ここここ高級和菓子なんて、恐れおおい……!?!?お、重い!?これが高級のプレミアムな重さ!貧乏学生が手にするにはあまりにも重すぎるぅ………!!」


「……………………………」


「すみませんありがたく食べさせて頂きますなのでそんな顔しないで下さい」


「い、いや別に構わないわよ。それより、さっきの人、誰なの?すごく美人だったわね。外国人っぽいから姉妹きょうだいってことはないと思うけど」


「え?あー、そのマーリンさんは………」



 そう言えばマーリンさんの事なんて説明しよう。面と向かって質問されたことが実はなかったからな。鏡史郎はいつの間にか仲良くなってたし。夢魔っていう化け物で魔法使いで私の先生です!なんては言えないしな………。



 マーリンさんの情報も出来れば伏せときたい。マーリンさんに凩さんを合わせてみろ、「お前中々良い体(フィジカル的な意味で)してるな。見込みがある。よし、弟子になれ!」とか言いそう………。



 彼女は至って普通の元不良のJK。魔法と関わる必要はないのだ。



「如月さん?」


「え、あ、えーと………彼女は私の離れたいとこです。外国に住んでて、今日本にいる間は私の家にいるんです」


「ふーん、そうなの。それじゃあ、お邪魔したわね」

 

「いえいえ、ありがたく食べさせて頂きますね」



 彼女はもう一度ぺこりと頭を下げ、立ち去る。わざわざお礼に来てくれるなんて、なんていい人なんだ……と思っていたその時。



「魔里!魔里!見てちょうだい、師匠の教え通りにやったら上手くいったわ!遂に完成よ!」



 転移ドアから勢いよく興奮した白亜が飛び出してきた。嬉しそうに壺を持っている。その中には綺麗なエメラルドグリーンの液体があり、なんかよく分からないけどいい匂いが充満する。

 白亜は嬉しすぎて獣耳と尻尾が出現していた。ヤバ、うちの娘可愛い…………じゃなくてまだ凩さんがいるんですけど!!




「え!?城明さ、ん?」


「さぁさぁ凩さん帰りましょー!今日は一段と寒いですからね、早く帰らないと風邪ひきますよ!」


「え?あれ?……き、気のせいかしら」



######



「こ、凩さんが来てたのね。ごめんなさい、嬉しくてつい………」


「いや、まぁそんな気にしないで。それより、本当に出来たの?」


「そう!そうなの!ほらほら、見てこの綺麗な色。師匠も成功だって言ってくれたわ」


「ほぇー……」



 そんなことよりも妹弟子、飲み込みが早すぎませんかね。手本を一回見ただけでコツを掴み、見事完成させてしまうとは、いやはや。他の魔法もポンポン使えるようになってくし、なんなら私より魔法の知識あるし!


 天才ようちの娘は………あれ、目から涙が……これは感動なのか悲しんでるのか。


 

 ともあれ、完成したのならば飲んでみよう。たとえ傷がなかったてしても、回復のポーションは疲労回復やリラックス効果もあるらしいし。



 私は二人分のコップを持ってきて、そこにエメラルドグリーンの液体を注いだ。グイッ、と二人同時に飲み干す。



「「酸っっっっっっっっっぱい!!!!????」


「あっははははははははははははは!!」



 初めてのポーションはマズイレモンみたいな味がした。ゲラゲラ笑ってたマーリンさんによると、完璧な回復のポーションは甘いらしい。まだまだポーション作りは要練習だな。



########



 午後。


 休憩がてら、凩さんから貰った和菓子を温かいお茶でも飲みながらつまもう。と思ったが茶がなかった。茶がないと和菓子は始まらん!


 マーリンさんは「別になくていいだろ、コーヒーとかにしようぜ」とかほざいてたが断じて有り得ん!私はとにかく温かいお茶が飲みたいのだ!!寒いし!!


 というわけで白亜と一緒に近くのスーパーまで茶葉を買いに行き、その帰り道。



「ワン!ワンッ!!」


「よしよし、おぉーよしよし!元気だねぇ。きゃ、こら舐めないでくすぐったい!あはははは!」


「…………………………………」


「それじゃあまたね。おばさんも、さようなら」


「…………………………………」


「ん?どうしたの魔里。私の顔に何かついてる?」


「いや、白亜ってイヌ派かネコ派かどっちかなって。ちな私はネコ派」


「そうね、私は………うーん、どっちかしら?」


「どっちでもない、か。じゃあ好きな動物は?」


「鹿ね。鹿」

 

「意外、それは鹿!………なんで?」


「だって、すごく美味しそうじゃない?最近テレビとかで鹿見ると涎が………」


「イエティの血がどんどん濃くなってく…………!?」



 あの日から色々吹っ切れて以来、どんどん欲望に忠実になってるように見えるのよねーこの娘。いや、いいんだけどね。むしろ今までが我慢しすぎただけなんですけども。


 というかイエティの好物って鹿なの………!?

 


「そいや、ペットと言えば魔法使いの世界にも使い魔っているのかね」


「さぁ、いるんじゃないかしら?古い資料にも竜や化け猫を使役していた人物の例があるくらいだし」


「え、なにそれ知らない………英語が読めないからそこまで読み進めれてない!」


「私でよければいつでも教えるわよ。昔外国に住んでたから英語のみならず、ヨーロッパ圏の言語なら達者よ!」

 

「ぐぉぉぉあまりのスペック差に目眩が……好きぃ」




  


「何?使い魔について教えて欲しい、だと?」



 マーリンさんは和菓子を咥えながら首を捻った。咥えた和菓子をもぐもぐしながら、ふーむと唸り、喉を通してから答える。



契ノ者(サーヴァント)の話は正直お前達クラスだとまだまだ先の話だぜ?」

 

「へー、使い魔って契ノ者(サーヴァント)って言うんですか。いいじゃないですか、なんか魔法ファンタジーみたいで興味あります!」


「ファンタジーじゃなくてノンフィクションだぞここは。まぁいいか、軽く授業してやる」



 そして相変わらずのどこからともなく現れるホワイトボードに、キュッキュッとペンを走らせるマーリンさん。



「よし、じゃあ説明すっぞ。――――まず、契ノ者(サーヴァント)とは。契約主と、その契約主が提示する契約内容に応じ、その力を貸す存在のことだ。契約内容は絶対で、両者同意の上で解消しない限り片方が破ればそれ相応の罰を受ける。持ちつ持たれつの相棒バディってわけだ」



 ほうほう、ここまでは私が思い描く使い魔像としては一致しているな。契約に従って成立する主従関係。私の心臓をお前にやる、これは契約だデン………ってやつだな。



契ノ者(サーヴァント)と契約を結ぶ過程として、主に二種類ある。一つはもっともポピュラーな方法、召喚陣を描き召喚された奴と契約を結ぶ方法。これで召喚されるやつは基本的に天界や地獄に住む天使と悪魔、ものすげぇ低い確率だけど強大な力を持った過去の人間や妖精などなど。この方法の利点としては、十分な魔力と召喚陣さえ正確に書けてれば誰でも簡単に召喚できる点だな」


「じ、じゃあもしかして超能力者の私でも―――!」  


「いや、意図的な魔力の放出がないと無理だからお前には無理だぞ」


「そんなぁ!!」


「ところで師匠、この方法って………もしかして私のお父さんがしたのと同じやつかしら?」


「お、勘が鋭いな。恐らくお前の親父さんが『クロケル』を召喚したのはこの方法だ。まぁでもクロケルなんて大悪魔、そうそう召喚出来るもんじゃねぇけどな」


「そう……私のお父さんって結構すごかったのかしら?」



 


「さて、次はこの召喚式の最大の欠点だが………天使だ」


「天使が、ですか?というか天使って具体的になんです?」


「天使は地獄に住む悪魔と対を為す存在。人間を遙かに超えた思考の領域にいて、常に正義の味方。神の使いでもあり、天界の住人兼作業員だな」


「それの何が問題なのかしら?天使っていったら、すごく徳の高そうな感じがするけど」


「天使の思考は何を考えてるか分からん。個々に個々の正義を持ち、そのアウトゾーンも意味不明だ。契約内容は比較的優しめだが、契約後が危ない。ちょっと地雷を踏んじまったら背後からズバーッ!てのも有り得るしな」


「何それ天使なのそれ」



 あ、いやでも聖書とかに出てくる天使って確か悪魔の何十倍も人殺してるとか何とかって言うし………。



「その点悪魔はいいぞー。契約内容は悪魔階級によって上がってくから分かりやすい、かつ契約した後は絶対に裏切らない!従順なやつらだ。――――契約さえ守っていれば、ね」



 なるほど、悪魔は誠実だけど契約が破れれば容赦はしないって訳か。………うーん、なんだか悪魔のほうが良い奴に思えてきた。



「それで師匠、二つ目の方法は?」


「二つ目の方法は、召喚を介さず直接契約を結ぶ方法だ。ドラゴンとか化け猫とかはこっちだな。これは召喚式より主従関係が強く出るのが特徴だ。イメージとしてはポ○モンとポ○モントレーナーみたいな感じ」

 

「あっすっごい分かりやすーい」


「契約つっても、『餌はマグロがいい』とか『髪の毛を毎日一本喰わせろ』とか『君と一緒にいたいにゃー』って感じで、悪魔や天使と比べると俗なものばかりだ。ただし、並の契ノ者は雑魚だから、敵を倒したり身を守ったりしたいなら適当には選べないってところかな」

 

「へぇー」


「欠点としては、まずそういう生物の数が現代では少ないのと、いたとしても主従関係になるまで交友を深めるのが難しいってとこか」


「そういえば師匠は何か契約してるのっているのかしら?」


幽閉塔アヴァロンを出るまではそれっぽいのはいたが………今はどこいったのか知らね。あの野郎、誰が長年面倒みてやったと思ってんだ全く」



 逃げられたのか。マーリンさん何かやらかしたんじゃないの?とツッコみたいがマーリンさんがふて腐れそうなのでグッと堪える。



「――――と、契ノ者(サーヴァント)についてはこんなもんだな。もっと専門的に勉強するのはまだ後だから、へぇーくらいに覚えとけ」


「「はーい」」


「よし、じゃあ和菓子も食い終わった頃だし午後からは戦闘くんれ―――――あ?」


  

 戦闘訓練、と言いかけたところでマーリンさんが眉をひそめた。直後、表情が強張り腕を組んで黙り込む。

  


「………………………………………」


「あの、マーリンさん?」

 

「………………………………………」

 

「師匠………?」


「―――――ちっ。急用ができた。今日はもう好きにしてていいぞ」  


「はい?」


 

 マーリンさんはそう言っていつものローブととんがり帽子を被り、ベランダへ飛び出していった。



「夜ご飯までには戻ってくるからなー」


「……………はぁ」


「何かあったのかしら。師匠が珍しく真面目そうな顔してたけど」


「んー、まぁ考えても仕方ないし私達は私達でやることやってようか。英語教えて、英語。ついでに他の教科も教えてくれない?私前の定期テストヤバかったんだよね」


「構わないわよ。………一応聞くのだけど、合計点数は?」  


「全部合わせて400いくかいかないかくらい!」


「私が尽きっきりで教えてあげるから、頑張りましょう!!」


「あれ、なんか哀れられてる…………??」












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