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日本編23  お化け退治の時間だ!!



「悪霊がいるぅぅ???だってぇぇぇ???」



 突拍子の無い単語に眉をひそめ、首を傾げる。けど彼女―――凩さんの表情は深刻なものだった。単なるからかいや思い込みの類いではないのかもしれない。


 凩さんは眼鏡を両手で丁寧に整え、



「嘘かもしれないけど、本当なのよ。夏休みの頃辺りから、毎夜毎夜………ザァザァ、ゴアゴア、ガァガァ何言ってるのか分からないけど聞こえるの。物もガタガタ動いて、突然ドミノ倒しみたいに倒れたこともあったわ」


「へぇー……それはそれは」


「おかげでここ最近は寝れなくて寝れなくて睡眠不足が続く毎日………けどこんなこと親にも荒木にも相談できなくて………クソが(ボソッ)」 


「え?」


「あ、いや何でもないわ!こほん、とにかくあの悪霊共を超能力者の如月さんに退治してもらいたいのよ!」


 

 なるほど、事情はある程度把握した。いわゆるポルターガイストってやつか。ある特定の人物の周りで発生する、物が浮いたり電気が消えたり近くに幽霊が現れたりする怪奇現象だ。


 

 まさか身近……いや身近ではまったくないが、そんなオカルト被害に遭っている人が本当にいたとは。



 とは言え、彼女にも少々同情してしまう。そんな目に合っているのなら普通じゃない超能力者である私が相談に乗ってあげるべきだろう。だが――――、



 私はポテトをつまみながら、



「多分無理ですね」


「アァン!?!?」


「ヒィィ!?スイマセン!スイマセン!!けど違うんです!あの……今私おじちゃんから超能力禁止令を出されてて。あと1ヶ月くらいは安静にしてないと最悪脳が破裂して死ぬって」  

 

「ずいぶんグロテスクだな……じゃなくてわね」


「…………」

 

「で?」


「え、あぁそれで超能力で退治はできないかもというか。仮に超能力が使えたとしても私霊感とか全然なくて超能力者になってから幽霊なんて見たことないんですぅ!だからあまりお役に立てないかと………」


「……………そう。分かったわ、ありがとうね」


「……………あれ?」



 なんか思ってた反応と違う。てっきり、私が無能と分かれば舌打ちが飛び強烈な睨み顔が現れるものかと思ったが………。


 なんというか、呆気なく凩さんは退いた。そればかりかぺこりと頭を下げ感謝さえ述べたのだ。ちょっと勘違いが過ぎたのかもしれない。そう考えると、少し申し訳なくなってきた。


 ポテト代だけ置いて、その場から立ち去ろうとする凩を引き止め、



「あの!凩さん!」


「………………何」


「一人!一人だけなら………あなたの悩みを解決できる人がいます」




########





「ここがあの女のアジトっスね!!」


「あの、この人大丈夫なの?」


「いえ、大丈夫ではないですね。主に頭が」



 私達が今いるのは、悪霊がいるという凩さんの家の目の前。時間は夜9時を回り、空はすっかり真っ暗である。どうやら両親は出張でいないらしく、家に灯りはついていなかった。


 そして唯一幽霊退治ができそうな人材を連れてきたはいいのだが………



「お前今回は真面目にやれよ?」

 

「分かってるっスよぉ。先輩の頼みっスからねぇ。そ、れ、にぃあの学校でも有名な凩先輩の家に上がれるとかテンション上がるっス!」


「そ、そう………。ねぇ如月さん、この人なに?誰なの?」


「そいつの名前は水面鏡史郎。占いが趣味とストーキングと盗撮とセクハラと不法侵入が得意で、実は幽霊とか見えたりできる私の後輩です」


「え、何それ怖………」


「人をそんな危ない変態みたいな目でみるの辞めてくれませんっスかね。安心して下さいっス、あんなに強くアプローチするのは先輩だけで凩先輩に関してはスリーサイズを把握してる程度っスよ。ちなみに上から9、ぐぇ!?」


「テメェ、何で私のスリーサイズ知ってんだよぉ………!?」  

「ちょ、怖い!?落ち着いてくださいっス凩先輩!大丈夫スリーサイズだけっスからー!先輩もこの人止めてくださいっス!」


「上から9………だと!?」


「先輩!!?」



 凩さんを落ち着かせ彼女の代わりに鏡史郎を締め上げた後、遂に件の家に入り込んだ。


 家の中はいたってシンプル、普通のごく一般的な家庭って感じだ。リビングを抜け、二階へと続く階段を登る。その途中で、壁に掛けられた複数の写真が目に留まる。



「…………」



 それは特に特別な写真という訳ではなくただの家族写真なのだが、その写真の中にいる凩さんが気になった。…………なんかめちゃくちゃ無愛想な表情だな!!すげぇぇ面倒くさそう!!


 

 薄々感じてたが、凩さんって素の性格ってだいぶ横暴なって言うか……不良っぽい?本人は頑張って隠そうとしてるみたいだけど……。普段彼女と接する機会なんてないから、彼女の何も知らなかった。いつも一緒にいる荒木さんや、友達の白亜は知っているのだろうか。



「うーむ…………」


「先輩どしたんスか?」


「いや、何でも」


「着いたわよ。ここが私の部屋」


「おーう…………」



 うわぁなんだこれスゴイ女の子の部屋って感じ!!


 別にぬいぐるみとかキャワキャワした物が置いている訳じゃないけど、すごく整理整頓されてて落ち着いた雰囲気というか。焦げ茶色の本棚にそれっぽい本がずらーっと並んでるとか無駄な物がないというか。



 とにかく私の家と比べるとスゴイ。ちなみに実家の部屋と比べるともっとスゴイ。



「悪霊が現れるのは基本10時を過ぎてからだから、適当にくつろいでいてちょうだいな」


「分かりました。うわ、ベッドすげぇフカフカ。気持ちいぃ………」

 

「へー………なんか医学書とか解剖図の本とかあるっスね。凩先輩は将来医者にでもなるんスか?」


「ん?えぇ、まぁ、恥ずかしいのだけれど医者をね。まだまだ勉強が足りないけど」



 医者かー……流石は凩さん、学年トップの成績なだけあるな。



「将来……か」



 私はどうしようか。最近まではのらりくらりと何も考えずに生きてきたけど、なりたいものとかやりたいことっていう目標は一つも無かった。

 今は魔法使いになることが目標だけども、魔法使いって別に職業として稼げるわけじゃないしなー。いや、魔法塾講師的なのはあるのかな?



「……………………」



 他人の部屋の中だけど、ちょっと深刻に考えてしまう。私は一体、何になればいいんだろうか。何をして生きていけばいいのだろうか。



「見てくださいっス先輩!これ、『ボッキディウム・チンチンナブリフェルム』っていう虫らしいですよ!ぶははははははは酷ぇ名前!!ぶははははははは!!」


「……………お前、さっきまでの私の深刻な心理状態を返せ」


「へ?え、なんスか………?」


(頼む人、間違えたかしら…………)「紅茶でも入れてくるわね」



 何か不安そうな表情を浮かべブツブツと言いながら下の階へ降りていった。頼む人間違えたとか思われてたら事実だけどちょっと悲しいなぁ………。


 


 チクタクチクタクと時計の針が進んでいく。とは言ってもまだ数分しか経ってないのだが、他人の家で何かするということもないし。鏡史郎は珍しく大人しく本読んでるし。暇だぁぁぁぁぁぁ速く凩さん戻ってきてくれぇぇぇぇ。



「先輩」


「ん?何?」 


「そのベッドから離れた方がいいっスよ。それ、なんかとんでもない霊力を感じるっス」


「え、まじ」


「マジマジっス。あ、今変なおっさんにも似たオーラが先輩の頬をスリスリと」



 それを聞いた瞬間ガバッ!とベッドから飛び出し、すぐに警戒態勢に移行する。

 変なおっさんにも似たオーラって何!?てか頬をスリスリとって、人が見えないことをいいことに気持ち悪いことしてんじゃあないぜ!私だって女の尊厳くらい持ち合わせてらぁ!



「出て来い変態悪霊!文字通りチョップで叩き切ってやる!」


「あっはは冗談っスよ冗談。そんなのある訳ないじゃないス、いででででで」


「人をからかうのもいい加減にしろドアホ。次やったら頭グリグリじゃすまさないからな」


「いや、先輩最後まで聞いてくださいっス!変なおっさんは冗談っスけどそのベッドから妙な霊力を感じるのは本当っス信じてくださいっス!」


「え、そうなの?」



 再びベッドの方に意識を向ける。んー私が見ても何も見えないし感じないんだけどなー。いたって普通のベッドだ。けど鏡史郎の霊的な物を感知する能力は信用できる。何かあるのだろう。



「なんかそれ私にも見えない?」


「じゃあちょっと自分に触れてみてくださいっス。そしたら分かると思うっスよ」


 

 どういう原理だ………と疑問に思いつつも、ひとまず指示された通り鏡史郎の体に触れる。


 ――――すると、突然世界が暗転した。



「………………?ブレーカー落ちた?」



 視界を左右に泳がせる。だが、横にはしっかり鏡史郎の姿を視認でき、後方は凩さんの部屋の光景がある。つまりだ…………


 

「え、この黒いの全部?」


「恐らく」


「くっっっっっっっっろ!?!?」

 

 

 ちょっと暗いとかモヤモヤしてるとかの次元じゃない。ベッドを中心とした、半径2メートルほどの空間がべっとり黒で塗りつぶされている。


 一筋の黒が、白いキャンバスに流れるインクのようにこちら側に流れてくる。なんかフシュュュって言ってね、うぅぅぅあああってうめき声聞こえね!?

  


「おい鏡史郎、なんでこんな魔界の門みたいなのがあるってさっさと言わなかったんだ!?」


「いやいや、普通じゃない先輩ならまだしも比較的一般人の凩先輩にこんなの見せたらパニクるに決まってるじゃないスか。最悪変な悪影響が出る可能性もありますし」


「な、なるほど…………。けどじゃあどうするんだ?凩さんがいない間に除霊?するのか?」


「んーできればそれがベストなんスけどねぇ。こんな概念化したラスボスみたいな怨念自分じゃ到底払える気がしないっス」



 マジかよ。鏡史郎でも無理と言われると手札がないぞ。強いて言うならマーリンさんを呼ぶ………いや、魔法使い絶対ぶっ殺すマンが蔓延ってる現状で魔法に関わってしまうような出来事は凩さんに作らせたくない。



 私の超能力が回復するのを待つ?でも超能力があったとしても超能力と霊能力は別物で効果がない可能性も………。待ってる間に凩さんがこの黒いのに飲み込まれるとかいう場合も………。



「ひとまず、一回試しでやってみるっス。そのベッド………正確には、ベッドの下に隠されてるブツを取り出さないと」


「え、何それ。エロ本か?」


「多分エロ本っスね。ベッドの下に隠してあるものなんてエロ本以外の何物でもないっス。フフフ、凩先輩実はむっつりスケベさんだったんスね。クール系美人が実はむっつりスケベさん………何それ色々と興奮すりゅう!」


「仮にエロ本だったとして何故エロ本にこんな怨念が籠もってるんだ………」



 ベッド下のタンスを抜き取り、奥の方へと手を伸ばす。こういう時小柄だと便利だなぁ。誰の胸が貧相だって?あ?


 よっこいしょと取り出すと、それはエロ本と呼ぶは到底程遠い代物だった。



「………なんじゃこりゃ。呪いの箱?」


「確実に呪いの箱っスね………」



 開き口は黒テープでギッチギチに閉められて、その上に封印と書かれた御札が黒テープを隠してしまうほどぺったぺた貼られてある。


 特級呪物か何かですか?しかも無駄に重いしデカいし………何が入ってるんだろう。軽く揺らしてみると、何か細長い物がカタカタと箱の側面を打つ音がする。



「まぁ何が入ってるかは置いておいて、鏡史郎、頼む」


「了解っス!」



 鏡史郎は自前の水晶を取り出し、むむむむむーと念を込め始める。これで本当に除霊ができてるのか分からないが今は任せるしかない。


 そして、しばらくすると………




「っぷはー!!つっかれたー!!」


「お疲れさま。で、どうだった?」


「いやーキツいっスね。こっちはク○リンなのに悟○もピ○コロも無しでフ○ーザとタイマンしてるみたいっスよ」


「んー微妙に分かるような分からないような…………。ともかく、今の鏡史郎で何とかするのは無理って事だな」


「はいっス」




 くぅー、最後の希望潰えたり………!!やっぱりマーリンさんに頼むしか選択肢はないのか………?

 

 と、ブツブツと呟きながら唸っていると下から凩さんが上がってくる足音が聞こえた。



「先輩先輩、速くこれ元の場所に戻さないと勝手に人の部屋漁ったって怒られるっスよ。仮に事情を説明しようとしても、先に怒りが来て胸ぐら掴まれるっス。あの人キレたら絶対怖いじゃないスか」


「急げ急げ!」




「お待たせ。ちょっと時間がかかりすぎちゃったわ」


「い、いえ!別にそんなことないですよ」


「はいっス!」


「…………なんか汗がすごいけど、どうかした?暑いならクーラーつけるけど」


「いやいや別に大丈夫っス!なんなら寒いですめっちゃ寒いっス!」


「いやー寒すぎて一っ走りしたい気ぶ………待って、なんか寒くね?」



 気付いたときには、悪寒(物理)が部屋中を満たしていた。いくら冬が近いとは言え、人がいる室内がここまで寒くなることはないだろう。ましてや窓が開いてるわけでもクーラーがついてるわけでもない。


 鳥肌と震えが止まらない。怖い話を聞いたときや、心霊スポットに行った時のような寒気が―――



「―――まさか」


「き、如月さん………アレ……!?」


「ッ!?凩さん、下がって!鏡史郎!」


「分かってるっス!」



 凩さんを庇うように体勢を立て直す。凩さんが指差した先、そこには先程までベッドの下にあった例のブラックボックスがフワフワと宙を舞っていた。


 こんな現象は初めてなのか、凩さんも口を開けて固まっている。そんな彼女に問いかける。



「凩さん、あの特級呪物………箱に見覚えはありますか?」


「あ、あぁ、あれれは」


「凩先輩、落ち着いてくださいっス。とりあえず自分の後ろに」


「わ、分かった………」

 


 フワフワと浮いている箱が突然、ピタッと止まると、次の瞬間クルクルクルクル!!と高速回転しだしこちらに突撃してくる。


 箱とは言え中にはそこそこ重い物が入った箱が回転を加えながら、正面から向かってくると考えるとそこそこの脅威なのではないだろうか。



「ふんっ!」



 私は一回転し勢いのついた状態の蹴りを御見舞いする。グシャッ、と音を立てて壁まで吹っ飛んだ。


 あ、物理攻撃効いた良かったぁ…………。これですり抜けたりしてたら超かっこ悪かったしピンチだった。



「先輩!まだっス!」


「まだ動くの………。一発で終わるとは思ってなかったけど」


「……………待って、聞こえる」


「ん?何が?」


「聞こえるわ………ザワザワ、ガヤガヤ……いつもの『声』が!!」



 凩さんは酷く怯えていた。

 ポルターガイストが目の前で起こり、それが自分に向かって襲い掛かってくるという未曾有の事態。そこに訳の分からない、言葉になってない声が聞こえるとなるとその恐怖は計り知れないだろう。



「凩さん落ち着いて!鏡史郎、なんて言ってるか分かる!?」


「はい………聞こえます。聞こえるんスけど…………」


「ど、どうした?何て言ってるの!?」



 何故だか鏡史郎の表情は複雑だ。いや、困惑といったほうが正確かもしれない。鏡史郎はトントンと自身の肩を叩き、触ってみろとジェスチャーする。



 ん?マジで何が聞こえてるんだ。説明が難しいのか?



「一体何が見え…………は?」



 ――――次の瞬間、不気味な黒に覆われた部屋がキラキラと輝いてるように見えた。



『みんなー、今日も盛り上がってるー??』


『『『Foooooooooooooooooooooooooooo!!!!!』』』



 鳴らす手拍子、高揚する意識。

 チュクチュクと回るターンレコードに合わせて、辺りが『陽』の雰囲気に包まれる。乱反射するミラーボールが闇を払い、楽しい騒音でストレスを忘れ、若者たちが狂い乱れ淫れる。日常を非日常へと変えてくれる夜の世界。



『じゃあ今夜も元気に悪霊退治行ってみよう!まずはいつものあの曲から!!』



 そう、クラブである。



「………………訳が分からん」




########





 え、ちょ、ま、は?


 理解が追い付かない。私の理解力が足りないのか、はたまたこの状況がカオス過ぎて脳が理解を拒んでいるのか?いやホント何なんだよこれ。鏡史郎も困惑するわけだよ。



「なぁこれなんなの?????」


「自分が知りたいっスよそんなこと」


「…………ひとまず話し掛けてみる?」


「…………そうっスね」



 鏡史郎は珍しく嫌そうな顔で、かと言って何もアクションをしないわけにはいかず、渋々とカオスの中へ飛び込んでいく。彼がまず最初に話し掛けたのは、このクラブのDJっぽい人物だ。



 雨ガッパのようなフード付きの着物を着て、その上からヘッドホンを耳に当てている少年(?)のような霊だった。



「あのーすみませんっス。オタクはどちら様で?てか何してるんスか?」


『んー?もしかして新しい助っ人!?ありがとー、人は多ければ多いほど良いからね!!』


「いや違うっス。自分はこの部屋に住み着いてるっていう悪霊を退治しに来た者なんスけど………」


『………………ならやっぱり助っ人なんじゃないかぁ!!みんなー、仲間が増えたぞー!!』



『おう、待ってたぜ!よろしくな!』『みんなで楽しく騒ぎ倒しましょう!』『今夜は寝かせないよ………?』『あのヘンテコなコマーシャルでも来るもんだな』『ヘンテコでもわたくしが映ってれば人なんていくらでも集められますわ』『わーいわーい仲間ー』



「いや、あの……………」



 あ、あの鏡史郎が他人に振り回されてる………!?

 何という陽キャ力だこいつら、幽霊なのに生きてる時より楽しそうだぞ。


 鏡史郎は普段は陽気に振る舞ってるけど素は割と私に劣らず陰キャだからなぁ………。キョロ充じゃない本物の陽キャに出会うとあまりの光に消滅しちゃいそうな………。



 両手を握られ、ブンブンと上下に振られる鏡史郎は涙目でこちらを振り向く。助けてくれってか?いやいや無理無理無理お前より話つけられないぞ。



「ね、ねぇ如月さん、箱……」


「っは!しまった、このカオスに気をとられてる内に!凩さん、大丈夫ですか?」


「え、えぇ。特に何もないわ。けど、あの箱……」


「あれ?止まった?」



 さっきまで禍々しいオーラを放っていたブラックボックスは、フワフワと浮遊するのをやめて床に転がっていた。


 何故だ………?と困惑しつつ本当に停止したのか確認の為にちょっとつついてみる。


 ツンツン。


 反応がない。ただの呪いの箱のようだ。ただの呪いの箱って何だよ。しかし、あのパリピな幽霊達が現れると大人しくなったってことは、彼らが何かしたのだろうか。



『ふむふむ、なるほどなるほど。じゃあ君達は幽霊じゃなくて生きてる人間なのかぁ。僕達が見えてるからてっきり幽霊かと』


「はい、そうっス。そういう訳っス」



 どうやら鏡史郎がDJ幽霊といつの間にか話をつけていたようだ。私はDJ幽霊の方へと歩み寄り、



「こ、こんばんわ。私は如月魔里って言います。でこいつが鏡史郎で、そこのまだあなた達が見えてないですけ凩さん」


『うん、それはコガラシちゃんは知ってるよ。この部屋に住み着いてるんだし』


「あの、単刀直入に聞きます。あなた達は何者ですか?何が目的なんですか?」


『あ、自己紹介がまだだったね。えーこほん、―――僕の名前はユウ・レイ!訳あってコガラシちゃんを護衛することになった守護霊だよ!』




 ―――守護霊、と。ユウはキラキラした笑顔でそう名乗った。



 


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