1 とあるポンコツの超能力
場所は突然移り変わり日本、北海道にて!
一人の少女が助けを求めていた。色素が抜けた見たいな白い髪に赤い目。フード付きパーカーを羽織りハーフパンツを着た特徴のない服装。
髪はショートでなんともボーイッシュな雰囲気の少女。彼女はガクリと肩を落としながら、
「はぁ、また失敗か。今月は成功率が悪い」
「…………ねぇ、君なにしてんの」
声が聞こえた。ダランと下がった首を持ち上げて正面を見る。そこには警官服を来た中年男性が。
「はぁ。何って、ただ壁に埋まってるだけだが?」
「その言い方超腹立つからやめてくんない。さっきさ、上司になんて言われたと思う?通報がかかってきたと思ったらさ、山本くーん白髪ちゃん案件行ってきてー、って。なんなの、何で僕が君の救助活動するのが当たり前になってるの」
「さぁ………何ででしょうね」
「他人事だと思ってんじゃねぇぞこら。はぁ………今助けるからじっとしてて」
「はーい」
私はされるがままに目の前の人に救出される。なんだかんだ言っていっつも誰よりも早く駆けつけてくれるから助かってる。
「んんー!助かりました。ありがとうございます、幹也さん」
警官服を来た30代半ばに見える男性の名は山元幹也さん。よく壁や地面に埋まった時に助けてくれる警官だ。
「もうすぐで帰れると思ったのに君のせいで台無しだよ。帰りにジュース奢ってくれ」
「民間人にジュースねだるとかそれでも警官ですか?うわーないわー」
「僕は毎回君の頭の悪い行動のせいで引っ掻き回されてるだよ!?せめて感謝の意を込めた贈り物とかさー」
「今の録音したんであとでSNSで拡散しときますね。タイトルは見返りを求める正義の警官(笑)の衝撃の一言、ですね」
「スミマセン勘弁して下さい怒られます」
この警官には大人のプライドという物はないのか?速攻で高校生相手に頭下げたぞ。まぁでもこれがいつもの幹也さんといかなんというか。
「にしても、君のそのポンコツ『超能力』はどうにかならんなか?いつまで経ってもちっとも上達しないじゃないか」
『超能力』。
その名の通り、物理法則を無視した様々な現象を引き起こすことのできる超心理学的能力。
私こと如月魔里は、人工的に超能力者を作る人工超能力開発を受けた超能力者だ。
超能力を科学技術で再現する。
何を言っているのかわからないと思うが、私にも分からない。科学者の祖父の実験に付き合ったら、翌日髪が白くなって瞳も赤くなっていたのだ。
それと同時に、超能力も扱えるようになった。多々欠点はあるが。というか欠点しかないが………
「ポンコツ言わないで下さい。実は最近、念動力は出来るようになったんですよ!ふふん」
「ふーん」
「その目は疑ってますね?いいでしょう、今から幹也さんの自転車を浮かしてしんぜよう!」
「ちょ、辞めてくんない?壊れたらどうすんのさ」
「大丈夫です!少し集中するので黙ってて下さい…………むむむむむ」
私は集中力を高め、幹也さんの自転車に向かって念じる。カタカタと自転車が独りでに動き出し、徐々に浮いていく。
驚いた顔で浮いた自転車を眺める幹也さん。それだよそれ、その顔が見たかったのさ!
「ふふふははは!どうです幹也さん!もうポンコツだとか頭の悪いだとかは言わせませ、あ」
「あ」
浮いた自転車は中心からバキン!と音を立てて真っ二つになった。
「「……………………………………………………………………」」
私の超能力は欠点しかない。まともに扱えないのだ。
さっき壁に埋まっていたのも瞬間移動の練習だったのだが、座標の設定が上手くいかず、壁に埋まってしまったのだ。
私の瞬間移動は自分の体とその体積分の物体の位置をを入れ替える力なので死にはしないが、扱えないのでよく壁に埋まったり地面に埋まったりする。
酷い時にはビルの窓に埋まったこともある。その度に幹也さんが助けてくれていたという訳だ。
「………という訳で私は帰りますね」
「おい待てごら」
「きゃー助けてー。お巡りさーん」
「お巡りさんは僕だよ!!どうしてくれんのさ!弁償しろ弁償!学生だとか知り合いだとか知らねぇからな!半分は払ってもらうからな!!」
「大人げないですよ幹也さん!こっちにはさっき録音した音声が……」
「こっちにはさっき壊された証拠品があるんだけど」
「…………………………………………」
互いに牽制しあう。
今思ったんだがなんだこの状況。ジリジリと幹也さんが迫り来る。ガチで叫んでやろうかなと思ったその時、
「キャーー!!誰か、あの人を捕まえて!」
「クソ、こんなタイミングでひったくりか。如月君、必ず払ってもらうからね。とりあえずそこで待ってなさい!」
そう言って幹也さんは泥棒の背中を追い始めた。
速ー。流石、若い頃に陸上大会で何回も優勝してるだけあるね。待ってろと言われたが、待てと言われて待つ人間などいないのさ幹也さん。私はここでお暇させてもらう。
けど、自転車を壊してしまったのは申し訳ないからおじいちゃんに直してもらえるか頼んでみよう。あの人なら直すどころか魔改造して時速100キロくらいでるロケット自転車になるんじゃないか?
早速おじいちゃんに回収しに来てもらおうと携帯をバックから取り出そうとしたその時、
パァン!!と。
少なくとも日本で絶対に聞かないであろう聞き慣れない銃声が聞こえた。直後、ベタッと何か液体のようなものが空から降ってくる。
「…………は?血?」
息を飲んだ。っはと夜空を見上げる。そこには、フヨフヨとおぼつかない動きで飛行する何かがあった。
あれは………人か?
血で染まった白いローブを羽織り、白いとんがり帽子。まるで魔女のような格好したそれは、マジで魔女のように空飛ぶ箒にまたがっていた。
「………え、え、えぇぇぇえ!?!?」