プロローグ
イソフラボン……
薄暗く、不気味な装飾を施された柱が並び立ち、奥には仰々しい魔王の玉座が鎮座している。その荘厳な雰囲気は、邪悪ながらも何処か神々しさを感じるほどだ。
ガキンッ!!と魔王の剣と勇者の盾がぶつかり、金属音が部屋に響き渡る。隙を突いて、戦士が横から攻撃を仕掛けた。魔王が上体をそらす。戦士の剣がズバッと魔王の皮膚を切り裂いた。
そのまま体を回して、力任せに剣を戦士にぶつけた。防ぐ間も無く脇腹に食う。そのまま戦士は横に吹き飛んだ。
勇者が魔王と距離を取った。
「炎の精霊、荒くれる怒りの精霊よ!聖なる業火で魔を焼き払いたまえ!」
魔法使いが呪文を唱えると杖の先から炎が噴き出し、辺りを熱気が覆う。魔王はすかさず左手をかざし呪文を唱えた。
「邪悪なる烈風よ、奴らを切り裂け!」
紅蓮の炎と黒い烈風が空中でぶつかる。次第に風が炎を押し返し出した。
「光の加護、慈悲深き神よ!我らを護りたまえ!」
危機を察知した賢者がバリアを張る。すぐに炎がかき消され黒い風が襲ってきた。魔王の魔法の威力は高く、防ぎきれなかった風の威力に魔法使いと賢者は吹き飛ばされる。
「はああああ!」
気合一閃、再び勇者の剣が魔王を襲う。避ける暇はない。魔王もすぐさま剣を繰り出す。2人の剣が交差した。魔王の剣が勇者の肩を切り裂くと同時に、勇者の剣が魔王の左胸を貫いた。
ここは剣と魔法のファンタジーの世界。このエルンバニア大陸は魔王ガルベルトにより支配されていた。勇者アルス、魔法使いエミリア、戦士バッカス、賢者ユリウスの4人が魔王城に到達し、今まさに勇者アルスが激戦の末に魔王ガルベルトを倒したところだ。
アルスが剣を引き抜くと、青い血が勢いよく噴き出しだす。魔王はゴフッと喀血し剣を床に突き刺すようにして、何とか体を支えた。
「ほう、私が貴様のような小僧1人に、我が魔王軍が1人の勇者に、壊滅させられるとはな」
「……いや、僕1人の力じゃない。仲間達が、多くの人の力があったからこそ、お前に勝てたんだ」
「勝てた、か。クックック、確かに私は貴様に屈した。だが甘いぞ小僧!」
不気味な笑い声と共に魔王がバシッと床に手を叩きつけると、床の模様が光りだした。
「これは、魔法陣!?」
魔法使いのエミリアが声を上げると、アルスはすぐに気がつき叫ぶ。
「マズイ、みんな早く外へ!」
3人とも負傷していたが、何とか転げるように何とか魔法陣の外へ離脱した。アルスも急いで離れようとしたその時、急に視界が揺らぎガクッと膝から崩れ落ちた。体が全く言うことを聞かない。
「アルス!!」
異口同音に仲間達が叫ぶ。
「クソッ……!」
「ダメです!バッカスさん!間に合わない!」
アルスを助けようと魔法陣に入ろうとするバッカスをユリウスが止めた。
「このガルベルト、ただでは死なん!忌まわしき勇者よ、貴様も地獄に道連れにしてくれるわ!ハーハッハッハッ!!」
禍々しい笑い声が響き渡り、魔法陣の光が一層強くなっていく。凄まじい音と共に、より一層強い光と衝撃がその場の全員を襲った。
体に強い衝撃が走る。白い光に包まれて、周りの音が遠ざかっていく。プツリと何かが途切れるような気がした。