表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/32

第二一話・夢

なんか急展開多くて、ごちゃごちゃしててすみません…。






ピピピピ…


頭の上で鳴り響いている目覚まし時計に手を伸ばした。


「う゛…朝…?」


…もう、朝か。

てことは…学校行かなきゃ。




「うー…さむ…」


小さな独り言をもらしながら、パジャマを脱いで、制服に腕を通す。


着替え終わると、リビングに向かった。



「おはよー…。あれ?お母さんは?」



リビングに入って、すぐに目についたのは美羽だった。



「あ。お姉ちゃん、おはよ。お母さんなんか今日仕事早いらしいよ?」



あー…。

そういえばなんか昨日、そんなこと言ってたような…。




「ねぇ、お姉ちゃん。1つ質問いい?」


美羽はパンを食べながら私に話しかけてきた。


「ん?」



「なんで制服着てんの?」


突然の美羽の意味の分からない質問に目を丸くする私。



「はぁっ?」


としか、返す言葉ないよ。(汗)



「今日、日曜日」


サラッと、軽く口角を上げて言われた一言。



「……………あ゛!!」



そういえば…。

そうでした…。


なんと情けない。



何をやってんだか…。

ばかにもほどがあるよ、私。


「そんなに学校行きたかったの?」


「ち、ちがっ…!!」


行きたいわけがない。


昨日あった事を、頭から消すことができないんだから…。




「まぁ、いいや」


「〜〜…っ」


冷静な美羽がなんだか腹立たしい。


私は自分のイスに乱暴に座り、パンにジャムをつけ始めた。



「ねぇ、お姉ちゃん」


今度は、なにっ…。

まだ変なところある!?


「…ん?」


ちょっと不機嫌な感じの返事をした。


だけどそれにまったく動じず、笑顔で話を続ける美羽。



「今日、ちょっと一緒にプレゼント選びしてくんない?」



想定外だった美羽からの誘い。


「うん…別にいいよ。誰にプレゼント?」



まぁ、ひまだし…。

美羽と出掛けるって少ないし、たまにはいいかな。



「いろいろ♪」



いろいろ、って…。

彼氏かな?



…って。

なんで私に頼むんだ?



いろんな疑問をとりあえずは頭にしまっておいた。


「さぁ〜行こう♪」



「は?!ちょ、まだ制服だしッ…!!」


「制服でも別によくない?」


「……はぁ」


もうどうでもいいや(泣)

美羽の自己中ぶりには勝てません。


ギブアップ〜…。



「早く歯磨きして、顔洗ってきて〜」


「はいはい…」


生返事の私に、美羽はふぅっと溜め息。


溜め息つきたいのはこっちじゃぁー!!!(怒)



心の中で苛立ちを抑えて、しぶしぶ洗面所に行って、支度をすました。




まったく…。

朝ご飯もろくに食べられてないよ。



ぶつぶつと文句を言いながら、私は玄関に鍵をかけ、家をでた。





**********************


「ねぇー男の子ってどんなもの欲しがる?」


近くのデパートの雑貨屋で美羽は男子へのプレゼントを選んでいる様子。


「私は女ですよ?」


男の子呼べば良かったじゃん。


なんて心底思った。



ていうか何気制服って目立つかも…。

若干恥ずかしい。


「えー…」


ショボンとした美羽に対して、『男子連れてくれば良かったじゃん』なんて言えるはずもなく。


私は美羽の頭をポンと叩いた。


「アクセサリーは?」


「んー…アクセかぁ」


ちょっと悩んだような顔を見せた、美羽。



「や、美羽てきにはね?アクセでもいーんだけど…」


「だけど?」


「…彼氏ね、そういうのつけない人なんだよ」



やっと白状したか。

やっぱり彼氏じゃん。


“彼氏”


私にとっての彼氏は


“健太”


……昨日。

なに言おうとしてたんだろう。



今更になって、聞いておけば良かったと

後悔の波が押し寄せる。



「…、お姉ちゃん?」


「…あっ、え?」




「ねぇ、なんかあったんでしょ。健太先輩と」



美羽が真顔で私に言った。


「…はっ?!」



ちょ、ちょっと待って?!

私美羽に言ってないよね?!?!



「なんで知ってるかって?そりゃ知ってるよ。

健太先輩、人気あるんだよ?」


私の心を読み取ったかのようにペラペラしゃべった美羽。



へぇ…。

健太って人気あるんだ。

なんか、複雑な気持ち。


「健太先輩、転校すんでしょ?」


「…」


美羽って結構物知りだな。

ちょっと心の中で尊敬した。



「…そだね」


「理由カッコイイよね♪」


―――理由?



そうだ…。

理由。理由は何?


昨日は気が動転してて考えてる余裕がなかった。



「り、理由って何?!」


聞かせて。


早く、早く。


「え!?知らないの?!」

―――ていうか


「…なんで美羽は知ってるの?」



「彼氏が、野球部だからだよ」



―――野球部?



「健太先輩さ、野球大好きでしょ?

だからね、目標が甲子園なんだって。その、甲子園の夢叶えたいから

野球が少しでも強い中学、高校に行きたいんだって。やっと中学と高校の手続き完了したらしいよ?」



美羽から聞いた話に私は心をうたれた。



なんで昨日、私はちゃんと理由を聞かなかったの?


最後に言いかけた言葉に繋がっていたのは、


このことだったの…?




「…お姉ちゃんには、転校するまで言わないつもりだったんだって」


美羽は更に話しを続ける。


「…え?」


「時間を気にして接してほしくなかったらしいよ?…まぁここまでしか彼氏には聞いてないけど」



「…、」


言葉がでない。


健太は健太なりにいろいろ考えてくれてたのに。

それを


[もういい]


なんて言葉で私は片づけちゃったんだ…。



何やってんだ…私。




「お姉ちゃん、帰っていいよ〜♪」



「な、なんで…?」


突然の言葉を理解できない私。


なんなの?美羽。



「健太先輩、いるよ?」


―――健太が?



「な、なん――」


なんで?


「昨日、家に電話あったよ。お姉ちゃんがケータイでないって。心配してた。

んで、美羽がぁ『そんなら明日来てくださいよっ』って冗談言ったら、『あ、じゃぁ明日行きます』ってさ」



―――…そうだった。


私、ケータイの電源切ったんだった。


あれから健太から着信があったから…。


なんだか、でるのが怖くて…。




「はい、ばぁいばい♪」

美羽はそう言って私の背中をポンと押した。


「っ、美羽っ…」


この、おせっかい!!


っていつもなら怒ってたと思う。


だけど、今回はそのおせっかいに感謝するよ。



「…ありがとっ…」





そう呟いて、私は家へと走って向かった。


幸い、デパートが家から近いため、走れば10分もあれば着く。





健太、健太、健太。



ごめんね。


ごめん。


なにも気づかなかった。


気づけなかった。



…気づこうとしなかった。






家が見えてきた。


その家の玄関の横には、


はっきりと見覚えのある、

大好きな人。





「…け、健太…」



走って乱れた呼吸を整えながら、その人の名前を呼ぶ。



「…遅い。ばか」




そう言った健太は優しく笑っていた。


きっと美羽が私に全部話したことを知ってるんだろう。



健太の前に立って、私は、健太を見上げた。



「ごめ、…ごめんなさい…」




今にも涙がでてきそうだ。


「また泣く気?…泣き虫…」


そう言って健太は私の頬に触れた。



「…っ…つめた、」


健太の手はとても冷たかった。


おそらくずっと外で待っていたのだろう。



「あ、わりぃ」


私の反応を見ると、そう言って手を離した。


「とりあえず…中入ろうか。なんかあったかいもの持ってくるね」



健太の冷たい手を引っ張って、家へと導いた。



「え…」


クッと止まった健太。


親の事気にしてるとか?

「今日仕事だから、家誰もいないよ?」



「や、そうじゃ…なくて…」


もじもじ(?)している健太。



「あー、はい、じゃぁ…おじゃまします」



そしてなぜか発言と行動が矛盾している。



「…うん、?どうぞ」



だけど気にせずに私は健太を家に上げた。


「階段上がって、すぐ左が私の部屋だから、先行ってて?」


「あぁ…うん」


なんだか落ち着かない様子の健太。



そんな健太を気にしつつも私は、台所へ行って

お湯を沸かし始めた。


「…、」


ちゃんと、謝んなきゃな…。



何から話そう…。


いろいろ考え事をしていると、やかんから

ピーッという音がした。



「…あっ、わあっ」




慌てて、火を止めた。



――ていうか。



何の飲み物がいいかな…?


やっぱ紅茶?


私は紅茶飲めないけど。

…まぁとりあえず、私はココアで健太は紅茶でいいか。




――ガチャ、



部屋に入ると、健太は私のベッドで寝ていた。



「……ん、桜羽?」




「あ、ごめ…起こした?」



ついつい、寝顔がキレイで見入ってしまった。




健太は目をゴシゴシと擦ると、目一杯のびた。


「…ふぁ…ねみぃ…」



その、猫みたいな仕草にクスッと笑ってしまった。


「なに笑ってるんだよー…」



「ふふっ、ついつい可愛くて…」



ぷくっとほっぺを膨らました健太。


お兄ちゃんみたいな健太が初めてスネた。



やだよ。


やっぱり、離れるなんて、できないよ…。


寂しすぎるよ。





健太は寂しくないのかな?


「ねぇ、健太…」


「……ん?」




“私と野球どっちが大事なの?”


なんて、バカなことは聞けない。


夢と恋は関係ないんだから。


ごちゃごちゃにしちゃいけない。




「…離れるの、寂しい」


そう言って、私は健太の横に座った。




「…桜羽…」




困るよね。

わかってるよ。


だけど…、私そこまで感情抑えられるほど大人じゃないよ…。



「…うん、俺だって寂しいよ?」



「…、」



まだ中学生だ。

これからだっていろいろ出会いがあるはず。


周りの人はそう考えるだろう。



だけど今の私には…。

“今”

を大切にする事くらいしかできないんだ…。



「妹さんから…全部聞いた?」


健太の質問にコクン、と頷いた。




「…ごめんな…なんか、言い出しにくくて…」


「…ううん」



「この中学入学したときから決まっててさ。本当は二年の二学期から行ける予定だったんだけど…」




私の方を向いてニコッと笑った健太に胸が痛んだ。


「二学期から行けたのに、私のせいで行けなかったの…?」



「桜羽のせいじゃないよ。ただ…二年生はちゃんと終わってから行きたいなあって…」


「…うん」


「桜羽と一緒にいたいっていうのもあるんだけどね?」



「…へ」



そう言うと、健太は私の前髪をそっとあげて、おでこに唇を軽く当てた。


「なんちってー」


「ッな…ななな?!?!」



自分の顔が熱くなっていくのがよくわかる。


「真っ赤になってるー。かわいー♪タコー」



う、

完璧にバカにされてる。



「ど、どうせ…タコだもん」


開き直った、私。(笑)


「うそだよ、ごめんごめん…」



急に弱々しくなる健太。

なんか前にもこんな事があったような…?



「ば、ばか…」



私はその弱々しい声に弱いんだ。



「絶対毎日メールする。寂しいなら電話する…ごめんな」



謝らなくていいよ。



……私決めたよ。



「健太の夢、応援するからね!!絶対毎日メールだよ?」



そう言って笑ってみせた。


応援する。


ちゃんと決めたよ。



私にできる事はそれくらいしかないから…。



「…サンキュ」



そう言って健太も笑った。



健太、健太。


頑張って、絶対甲子園行ってね。



何年後かに


絶対に応援行くからね。





だから

転校しちゃうときがくるまで



いっぱい思い出作ろうね。






甲子園って……。



どっぷり野球少年ですねー(_´Д`)ノ~~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ