第二話・初恋
「桜羽ー!」
「ん?なにー?那音」
あの日から那音とよく話すようになった。
「宿題見せてっ!!!」
また、こんなことか…
「自分でやんなさいっ」私は那音に言葉のムチを入れる。
「ケチー!!他に頼むしっ!!もう頼んねー」
「ケチでけっこうです!!」
深く関わって気づいた事…それは……
「ねー愛美!宿題みしてっ!!お願い〜」
「はぁ〜?しっかりしなよー!!バカだね〜っ」
かなりの、女好き…ってこと。
正直女好きって苦手なタイプなんだけど、那音はそこまで嫌いな訳じゃない。むしろいい友達。
「桜羽〜!!移動教室だよ。一緒いこっ」
「あっ…うんっ!!」
この学校の初女友達はこの、神崎律
背が高くてお姉さんタイプの頼りになる、いい子。私はこの子を《りっちゃん》と呼んでいる。
「ねぇ桜羽ってさ、好きな人いる?」
「え〜…いないよ。残念ながらっ」
好きな人、かぁ…。
私は今まで好きな人ができたことがない。
……ていうか
男の子はあまり好きじゃない。
理由は特にないけど…。
「…那音は?」
「はぁ〜?!」
なに言ってんの!!
りっちゃんっ!!
「那音が一番仲良くしてる女子、桜羽じゃん?」
「いやっ…からかわれてるだけだよっ!」
「そうかなぁ〜?」
「そうっそう!!!」
私は思わず必死になる。変な誤解されたくないしっ…!!
「ムキになるなって〜!まぁいつでも相談のるよっ!!」
逆効果だったらしい…。
「違うってば〜…」
『好き』なんて感情
那音に生まれるわけがない。私のタイプは一途な人だし…。那音みたいな女好きとつきあったら絶対痛い目に遭うだろうし。
恋になんてならない。
………ハズだったのに…
「……桜羽…さ……ゎ」
那音が寝言で
私の名前を呼んでいた。
……微笑みながら。
そんな事だけで
どきどきしちゃって
顔がすごく熱くて。
那音が好きになった。
「さぁ―わっ!!」
「…っぶ!!!!」
りっちゃんが後ろから口を塞いできた。
「はひふんほっ…」
「聞き取れないしっ!!」なにすんの…
って言いたいの。
「桜羽、あのさ……」
「桜羽―!!」
りっちゃんの言葉と那音の言葉が重なった。
「アドレス教えて!!あと番号」
そういいながら那音は駆け寄ってきた。
「え―…」
こんな反応だけど実はやっぱりすごく嬉しい。
「いや?」
「…悪用されそう……」
「ひどっ!!しねぇよ!!」そういうと那音は私の髪をくしゃくしゃってした
――ドキン…
「っ…冗談だょ…!!」
「だろうな。ほらっ携帯貸して!」
「〜…」
私はポケットから携帯を出した。
那音はそれを受け取り、慣れた手付きで素早く赤外線で私のアドレスを那音の携帯に送った。
「さんきゅっ♪」
「いえいえ…」
私に携帯を返すと那音は自分の席に戻っていった
「那音って……」
「ん?」
「ううん!!なんでもないよ?」
「…………」
今、りっちゃんすごく寂しそうな顔…してた。
なんだろう………?
「…てか、なんか私に用事あったんじゃないの?」
「えっ…あ〜忘れちゃった☆」
りっちゃんは舌を出して笑った。
…可愛い。
モテるんだろうなぁ…。
「ねぇ…りっちゃんってさ、彼氏いないの?」
「え………」
―――……一瞬
りっちゃんの顔が真顔になったのを私は見逃さなかった。
―…なに?
「りっちゃん…私に何か隠してる?」
「なんもないよ!!…彼氏とかいないし…」
りっちゃんはいつもと同じ可愛らしい笑顔でそう言った。
「……そか…」
勘違い?
りっちゃんのこと疑いたくない…。
……信じよう。
りっちゃんのこと…。
りっちゃん…
ごめんね
大事な大事な
りっちゃんだったのに
私、何も気づいてあげられなかったね……。
**********************
「ねぇ桜羽ってさぁ、那音が好きでしょっ!!」
「…んぐッ!!!!なっ…なに…言ってんのっ!!」
突然の、りっちゃんからの質問だった。
私は思わず飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。
「…好きでしょ?」
「………」
りっちゃんになら言ってもいいかな?
「実は…好き……です」
顔がすごく熱い!!!絶対赤いよ!私!!///
りっちゃんはそんな私を見てクスッと笑った。
「可愛いなぁ。頑張れよっ!!応援するから!!」
「うっ…うん。ありがとう」
良かった…。
いい反応してくれて…。
好きな人できたのなんて初めてだ…
つまり人に言うのも初めてだった。
「那音に告白しないの?」
突然りっちゃんが言い出した。
こっ…告白?!?!
考えもしなかった!!///
「っ無理!!フラれんの怖いし……」
いきなり告白したって絶対…フラれるでしょ。
そんなことを考えていたら顔に出ていたのか、りっちゃんが優しく微笑んで私に呟いた。
「大丈夫。フラれること恐れてたら誰も前になんて進めないよ…ねっ!!気持ちが落ち着いたらまた相談して?いつでも聞くからさ!!」
「っ……りっちゃん〜……だいすきぃっ!!」
私はりっちゃんに飛びついた。
「のわっ!!あははっ!!あたしも大好きだょ…」
りっちゃん
──りっちゃん…
……ありがとう……
私、精一杯頑張るね。
こうして
私の
長い…長い
初恋が 始まりました。
私の、精一杯の恋でした