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第十七話・強がり




―――…私、健太と付き合う事になったんだ。





そう打ち明けたのはりっちゃんが最初だった。





「…え?!嘘っ?!好きだったの?」



当然、びっくりするりっちゃん。



――…好き…?



まだ好き、ではないよ。




だけど本当の気持ちを打ち明けるわけにはいかない。



「うん…好きだよ」




そう言って笑顔を作った。




この頃、作り笑いに慣れてきちゃったよ。






「そかぁ…良かったね!!幸せにね?」



そう言って満面の笑みを私に向けたりっちゃん。


「あたりまえーっ♪」


私もそれに答えるようにしてりっちゃんに笑顔を向けた。







笑うってこんなにツラい事だったっけ…?






「桜羽ー」


「!!」


思わず心臓が脈打った。


「健太ー」




「な…なんだよっ!!びびりすぎっ」





いつもと変わらない態度の健太にほっとする。




健太の事…好きになれたら…。



どれだけ、幸せだろうか。





「神崎ー、先生呼んでた」



健太がりっちゃんにそう言うと、りっちゃんは

「ありがとう」と言って、教室を出て行った。







「桜羽?」


「んー?」



軽く返事をするとぎゅっとほっぺを掴まれた。



いっ…たい!!手加減しようよっ!!(泣)



「へんはぁー…いひゃい…」



約〈健太、痛い〉





「桜羽っ!!」


大きな声で名前を呼ばれて思わずびっくりして目をパチクリする。



「は…はひ…」


約〈は、はい〉







「笑いたくない時は笑わなくていい」








真剣な、でもどこか寂しそうな瞳で私に言った。



「…なん…で」





健太の手が私の頬から離れた。



「無理すんな…」



「無理なんてしてないよ?本当に笑ってるし!!」



なんて言いながらも、顔が引きつる。




「なんで…強がる?」



健太の声のトーンが下がった。



だけど私は気にせず続ける。




「強がってなんかないよ?つか、私強いしさ♪」


頑張って、頑張って…明るく振る舞う。







「弱いくせにどうして無理して強がる?」









その言葉に私の中で何かが切れたようなきがした。




強がってるよ。



だって弱かったらみんなに迷惑かける。





迷惑かけたくないんだよ。


健太に。みんなに。




…笑ってなきゃ、涙でてくる。



だから笑うんだよ。




今の私にとっては、笑うって事は


楽しい


嬉しい


幸せ


そんな事を表すためのものじゃなくて




ただ涙を隠すためだけのものなんだよ。




それに―――……



“笑ってて”



那音がそう言ってくれた。




だから笑うんだよ。








「…じゃぁなんで泣いてんの…」






「…え………」



気づけば私の頬には冷たい涙が伝っていた。



大粒の涙が無意識のうちに瞳からこぼれていく。





「…泣きたいときは泣いていいから。そばにいてやるから…。…な?」







「ッ…けん…た…ぁ……ごめ…ごめんねっ……」


そう言って私は静かに机に突っ伏した。



そして今までの作った笑顔の分だけ泣いた。




健太はずっと私の頭を撫でてくれていた。



途中、少し泣き止んだ時に

“本当は抱きしめたいんだけどね”

って言って笑った。




流石にみんながいる教室じゃ、そんな事できないからね。




「ばーかっ」




ありがとう。


健太…。




ありがとう。






―――――…

―――――――――…



「ところでー」


「ん?」


放課後、帰ろうとしていた私に

健太が話しかけてきた。





「明日暇?」


「明日?んー…たぶん」





なにも用事なかった気がする。



「付き合ってほしいところがあるんだけどー…」


そう顔を赤らめて呟く健太につられて私も熱くなる。



「いいよっ♪」




そう言うと健太はパァっと明るくなって、ガッツポーズした。






「じゃぁ今日メール…す…る…って、あぁっ!!」


「うわぁっ?!」






いきなりの大声にびっくりする私。





なっ、なにっ……?!?!



「…俺、桜羽のアド知らない…」



「え?そうだっけ?」



てっきり教えてたかと…。





「あ…じゃぁ今教える…」



教室にだいぶ人がいなくなったし、大丈夫だ。





携帯をこっそりカバンから取り出してピコピコと赤外線の用意をする。



「あー…桜羽…今日は?用意ない?」



携帯をいじりながら健太がいった。


「うん?」



今日……?

でも健太このあと部活だよね?





「よーしっ!!部活さぼろっと♪」



「えぇえ?!」


な、なにを……!!!



「だから、今日はこのまま…教室いない?いろいろ話とかしたいし♪」





いきなりの教室残ります宣言にあたふたする私。




「だ、大丈夫なの?」



確か部活って出席率とかあるんじゃなかったっけ?





「俺普段超真面目だから♪大丈夫」



「そ…それならいいんだけど…」



け、健太と2人きりかぁ。


ちょっとドキドキ…。




「とりあえず、アドね」


「あっ…うんっ」




健太の携帯と私の携帯をくっつけて赤外線開始。


「お…きたきた!!ありがとう」


「うん」



私のアドレス帳に健太が登録された。



あっ

そういえば


「あのさぁ、明日どこ行くの?」


気になってたんだよね!!


「んー…水族館?」



――――ドクン…


那音と、初めて行ったデート場所。



それだけなのに動揺を隠せない。



「あ…えと…あたし、魚…は、あんまり…」






さ…魚とか…。


最悪じゃん、私。




「そ?…じゃぁー…」


何も、突っかかってはないっぽい。


…良かった。




「リクエストある?」



うっ

そうきたか…。




「んー…映画?とか」



あ、ありきたりだったかな?






「いいよ♪わかったー。そのあとは?」




「えっと…えとぉ…」



どうしよう…。



デート場所だよね。


やっぱり…


ありきたりだけど




「遊園地っ」

「遊園地とかは?」



声がかぶった。



「あははっ…了解。遊園地ね!」


「―…はぁい」



なんか…恥ずかしい///



「じゃぁー今日メールするからな」



そう言って健太は私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。



思わず那音の行動と似ていて心臓が波打った。





ごめん、健太…



まだ私、未練たらたらみたい。





少しは心が健太に向いているかもしれない。


だけど

それはほんの数%





忘れられるかな…?








「部活行かないし、送ろうか?」


「へっ?」



さらっと言われた一言。




いきなりぃーー?!?!



「だっ…だ、大丈夫!!」


「わー…あからさまに拒否りすぎ。傷つくなぁ」


なんて言いながらも苦笑いする健太。



「やっ…ちが…家の方向反対だろうから…」




私の家の方向の人、滅多にいないだろうし…。





「んーまぁね。嫌ならいいやっ!!…じゃぁなっ」

そう言って歩き出した健太。




あ……。


傷つけた…?




―――グイッ!!



「えっ?」


「へっ?」



気がつけば私は健太のカバンを掴んでいた。



「さ…桜羽?」


「ご…ごめんっ…傷つけた…かなって…」





すんなりとでた言葉。


「………」


健太は黙ってこっちを向いた。




お、怒ってる…?



私がビクビクしていると

「んぶっ!!」


鼻をつままれた。


「ばぁか」




ば、ばかって…



「お、怒ってないの…?」



「なんで怒るの?」



え…?そうきますか…。


「ゃ…だって…拒否…」


したわけじゃぁないんだけどね?





「怒んないよ…桜羽が嫌がる事したくないし?」



「…け…んた…」




寂しそうな瞳でだけど真剣な瞳で


そう真っ直ぐに言った健太に、顔が熱くなった。



“那音”


と、被ったわけじゃなくて……なくて、



“健太”



ちゃんと

健太にドキッてした。





「桜羽さーん?」


「えっ…あっ…はい!!」


思わず跳ねるような声がでた。







「好きだよ…」




そう笑顔で呟いて手を振って廊下を走っていってしまった。





「―――っ……」




やばい。

今、ハンパなくドキドキしてる。



―――…健太…。






私…




健太の事、好きになれるかもしれない。









私の淡い、小さな恋心が


今少しずつ、少しずつ




動き始めた。





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